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ゲイバーアンビシャスへの再来前日譚5
「ふっ、それってどんなヤツ?」
「そんなふうに悲しげに微笑む男じゃなく、『騙されて勝手に傷つくほうが悪い』って口にするなり、人を見下すように嘲笑う男でしょ、アンタは……」
「謝ってやったのに、悪態をつかれるとは思わなかった」
「本当に、何しに来たのよ?」
小さい目を覆うような長いつけまつげを上下に忙しなく動かしながら、凄みのある迫力を漂わせる姿に、内心ドン引きしながら答える。
「上司の命令で、支店に顔を出したついでに寄っただけ。ハイボールはまだか?」
「今から作るってば。ちょっとだけ待ってちょうだい」
「遅っ……」
「そういうふてぶてしい態度のほうが、私としては気が楽だわ」
肩を竦めるなり、顔をふいっと逸らして高橋の視線を外すと、手際よく酒を作りはじめた。
「そんなところに惚れてたくせに」
可愛げのない忍の態度にうんざりし、聞き取れないような小さな声で呟いたというのにしっかり聞こえたらしく、ピタリと動きを止めて高橋を白い目で見やる。
「アンタとやり合っても無駄に疲労しちゃうから、そういうコトにしておいてあげるわよ」
「相変わらず可愛くないな」
からかい混じりの高橋を無視して、手にしたシェイカーをリズミカルにシェークした。
「おいおい。いつからこの店は、ハイボールをシェークして出すようになったんだ?」
ほどなくして音もなく目の前に置かれたものは、明らかにハイボールではなかった。
「はい、どうぞ。カクテルグラスが似合わない健吾に合わせて、タンブラーに注いでやったわよ。酒豪のアンタなら、これくらいの量でちょうどいいでしょ!」
オレンジとピンクの中間色の色味を帯びた、得体の知れない酒。タンブラーにはそれと一緒に、カットされたレモンが添えられていた。
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