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サンタは返品できますか? 第2話

 スマホから入力して、私は誘惑に負けた。 一コール。二コール。 …出ない? 『はい』  出た!  女の子じゃなくて、低い男の声がする。 「あの、その、紙を見ました!」 『ありがとうございます。貴方の心のサンタ、テルベルサンタです』  紳士的な、畏まった言い方に胸がときめく。  これは、その、えっちな女の子じゃなくて艶っぽい大人の女性を用意してくえるのでは。 「あの、では、何時くらいに来て頂けますか」 『今すぐに』 「おおお。今すぐ!」  慌ててシャンパングラスをもう一つ用意しようとキッチンに走った。 『今、貴方の家の前に来ています。プレゼントと共に』 「え? もう?? でも、私、住所なんて」 『開けて頂けますか? 蘭丸さん』  何でデリヘルサンタが私の家の前に?  まるでメリーさんみたいで、ちょっと首を傾げてしまうものの、言われた通り、玄関までペタペタと走っていく。  クリスマスリースがきらきらと輝く玄関を、スロープから確認もせずに開ける。 「蘭丸さん、メリークリスマス」  開けた先には、サンタの帽子を被った、可愛いくてむちむちした女の子、ではなく。   気障ったらしく、目元や口元を甘く微笑ませた、サンタ帽子のイケメン。  ――イケメン?  きょろきょろと玄関から外を眺めるが、可愛くライトアップされた庭には、このイケメンしかいない。  しかも、この人って。 「え、あの、キミ、うちの会社の依頼を受けてくれている、瑛(てる)くんだよね?」 「はい。でも会社ではなく、貴方だから依頼を受けていますよ、蘭丸さん」 ――蘭丸さん、と甘い含みを持たせて声が、妙に艶めかしくて、背中がゾクゾクした。 この人、イケメンだけど、いつも話すとき顔が近いし、やたらスキンシップしてくるし、笑顔や声がセクシーだし、ちょっと苦手なんだよね。  初めて会った日、穴が開きそうなほどじいっと見てきて、恥ずかしかったんだ。  こんなイケメンは、きっとチートってやつだ。モテモテさんに違いない。  下の名前で呼ばなければ俺の膝の上から退きません、とか言ってオフィスで私が座っていた椅子をガッと引いて上に座ってきたんだ。1秒も立たずに瑛くんと呼んで退いて貰ったけど。  きょろきょろ、背伸びをしたり瑛くんの後ろを回り込んだりして、可愛い女の子を探す。 「何をしているんですか?」 「電話で呼んだ可愛い女の子を探している。溢れんばかりに実った胸を、頑張ってミニスカサンタ服に押し込んだでいる恥ずかしがり屋の女の子を」 「うーーん」 瑛くんは少し考えてから、スマホを取り出した。 「可愛い女の子じゃなくて、蘭丸さんにメロメロなテル(瑛)ベルサンタを召喚しませんでしたか?」 「してないよ。私は娘に貰ったピンクのカードを」 「ふーん。も一回鳴らしてみてください。その電話番号に」  唇を尖らせてちょっと拗ねた様子の瑛くんがそう言うので、もう一度発信履歴から電話してみた。  すると、瑛くんの胸ポケットから、『戦場のメリークリスマス』が流れだした。  何でそんなチョイスなんだ? 「あの、瑛くん」 「はい?」 「チェンジでお願いします」 「出来ません」  私の乾いた声は、色っぽい瑛くんの声に速攻でかき消されてしまった。  そんな……。

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