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天然は治りません! ①

「美味しいです。俺の嫁になりませんか?」  愛娘の為のご馳走を食べているのは、私が間違えて呼んだ『テルベル』サンタの哀川 暎(あいかわ てる)。  愛娘がくれた『テルベルカード』を『デリ〇ル』と間違えてわくわくした私が悪い。  私が……。 「うっうっうっう」 「泣くほど、俺のプロポーズが嬉しいですか?」 「君の冗談には今は付き合ってあげられないよ。私は自分が恥ずかしくて泣いてるの! 一人になりたい。穴があったら入りたい」 「分かります。――俺も入りたいです。蘭丸さん限定ですが」  うう。瑛くんは相変わらず意味が分からない。笑ってあげるべきなのかもしれないけど、そんな元気は無い。  こんなイケメンが子供服なんてデザインしているなんて世の中は平等に出来ていない!  しかも依頼が一年待ちだ。  私の発案した、『女の子は皆プリンセス』のドレス以外はうちの会社でも順番待ちで、プリンセス企画だって一年に一回だけ。  忙しいはずなのに、頻繁にうちの会社に遊びに来るから仕事熱心なのかもしれないけど。  私は、自分にはないモノを全部持ってて、よくわからない気障ったらしい雰囲気で、やたら触って来るし意味深な視線を送って来る瑛くんはちょっと怖いし苦手なのに。  なんで娘に電話番号の書いた紙を渡すんだ?  なんでサンタ帽を被ったまま、私の作ったご飯を食べているんだ?  なんでチキンを食べただけで、唇の周りに付いた油が色っぽいんだ!?   なんでそんなフェロモンを垂れ流してるんだ!? 「はっつ、瑛くん、キミもしや……」  舌で唇を舐めている瑛くんが、私を見て妖しく笑う。 「――やっと気付きました?」 「娘はやらんぞっ!」 「は?」  イケメンでも、鳩が豆を食らうような、目を見開いた間抜けな顔が出来るようだ。  まぁ、そんな顔でさえ、イケメンだけど。  だけど、いくら胡蝶ちゃんが私に似て可愛くて、気立ても良くて、愛らしくても、やらん! 「君、やたら私に近づいてくると思ったら、私の娘ねらいだな! だが残念だね、 娘は牽制のつもりで君の電話番号を私に渡したようだ。君のことなんて」 「へーえ。近づいていることは気づいてたんだ。天然さんだから気づいていないと思っていたのに」  そう言うと、氷水で冷やしていたワインを取り出し、布巾で拭くと、徐に栓を引き抜いてシャンパングラスに注いだ。 「天然さん?」 「俺は、蘭丸さんが好きなんですよ。キスして抱きたい程度に」 「ほほう、私を好きか。す……き?」 好き!?  グラスを優雅に回しながら、香りを楽しむ姿さえ絵になる美しさ。  だが、瑛君はれっきとした男であり、私もこんな容姿だが男であって。 「気づいてくれなかったんだ。胡蝶ちゃんはすぐに気付いて『お父さんは右側? 瑛さんは左よね』とか言う程度には応援してくれてるのに」  右側?  応援? 「ああ、良いです。分からないなら――分からないままで。そんなところも貴方の魅力なんですから」

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