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第2話
「がん……、」
頑張れよ、とその言葉を途中で飲み込んだ。応援はしてやれない。俺のものにはならないだろうけれど、芽依のものにもなって欲しくはない。
「あー……、こんな時にごめん。親から今すぐ帰れって連絡来てるわ」
テーブルに置いていた携帯を見ながら、いつもの口調でいつもはつかない嘘をついた。連絡が来てるはずない。今日は遅くなるとそう伝えていたから。
「え? 何かあった?」
「分かんない。ただ、早く帰って来いってだけで、」
「まじかよー!」
「ごめんな」
智彦の家でのこのクリスマスパーティーが予定された時から俺は、今日を楽しみにしながら毎日を過ごしていた。いくら慎也と親友だといってもクリスマスらしいことをして過ごそうと誘えるはずもないし、どうしようかと思っていた時に、たとえ二人きりでなくてもクリスマスを慎也と過ごすことのできる口実ができたのだから。
パーティーに乗り気じゃない慎也を一生懸命誘って、やっと取れた約束だった。それなのに、どうして今日こんなことになってしまったんだろう。ううん、なってしまったんだろうじゃあない、気づくのが遅くなった俺が悪いんだ。
「じゃあ帰るわ」
皆に見られたら絶対に泣いているとバレてしまうだろう顔をしているから、俯き気味で。
一言だけそう言うと、飛び出すようにして玄関を出た。
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