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第3話
「さむ……」
智彦の家を出てから十分。俺は全速力で走り続け、人通りの多い通りに出た。さっきまで皆で楽しくクリスマスパーティーをしていたのに、今は一人、行き交う人々の中に寂しく溶け込んでいる。それに、ここまで来てから気づいてしまった。着てきたコートもマフラーも全て忘れているって。
「はぁ、」
キラキラと輝くツリーの前に一人で立ち、そうしたところで温まるはずもないのにポケットへと手を入れた。自分の持ち物は全て忘れていたくせに、プレゼント交換用に用意していたマフラーだけは忘れずに持って来ていたから、俺の慎也への想いがそれほどまでに大きかったのかと、ははっと笑うと、鼻の奥がツンとした。
交換だから誰のプレゼントが誰に回るのか予測できないのに、俺は慎也が俺のプレゼントを受け取ることだけを願って、アイツのために選んだんだ。
でも結局は、どうしたって芽依のプレゼントが慎也に回るんだろうけれど。
「ばかみたい」
みたいじゃあなくて、ばかなんだろう。このツリーを眺めるために立ち止まっているカップルの目にだって、俺はそんなふうに映っているに違いない。
はらはらと雪が降っている。今までは降る度に喜んでいた雪だけれど、今はただただ鬱陶しいものでしかなかった。一人で見る雪は、こんなにもつまらないのか。
「 慎也……、やだなぁ、」
明日からもう、慎也の隣にいられなくなってしまうかもしれないと、そう考えたら涙がこぼれた。
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