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第5話

「黙って帰るなよ。お前がいなかったら、あのパーティーに参加する意味なくなるし。帰るのなら俺も一緒に帰るよ」 「……っ、」 マフラーを巻く前にコートだったなと、何も言わずに先に一人で帰ったあげくにぼんやりと立っていた俺を責めることなくコートを着せてくれた。袖に手を通し終えると、首元をきれいに正し、寒くないようにとまた俺のマフラーを巻き直す。それから自分のコートのポケットに入っていたカイロで、俺の頬を温めてくれた。 「あったかい?」 「うん、ありがと」 「それなら良かった……って、飛び出してったわりには別に急ぎの用じゃないみたいだな。俺がいない間に何か嫌なことでもあった? だからコートもマフラーも持たずに飛び出したの?」 「ちがっ、」 慎也が心配して俺の顔を覗き込む。その優しさに感謝するも顔を見られては困るし、パーティーを抜け出した理由の説明もできないから。慌てて顔を逸らし、離れて欲しいと慎也の胸を押した。 だけどそんなことで慎也から逃げられるはずもなく。ゆっくりと顔を近づけてきた慎也は、こつんと俺のおでこに自分のおでこをぶつけてきた。 「嘘だね。お前が嘘つく時って顔を見たらすぐ分かるもん。何があったのかは言いたくないなら聞かないけど、とりあえず一緒に帰ろう? 俺を置いていくなよ」 「嘘じゃな……い、」 「顔だけじゃない。状況を見ても、どう考えたって嘘だ。無駄な嘘をつくのはやめろ。俺、本当に心配して追いかけてきたんだからな」 「う、」

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