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第7話 『白い蛇神さま』③
「わ!……ぁあ!?」
絡んだ蛇に引きずられて、僕は湯船の中に転がり落ちた。ソルトバスだから、目に入ると沁みて沁みて開けていられない。
必死で顔を擦っていると、頭の中に声が響いた。
『永き穢れが濯がれた。心地良いことよ』
満足げな声は、男のものだ。年齢はさっぱり読めない。厳かで、少し居丈高な声。
見えない存在の声を聞いたことは今までにもあったけど、こんなに明瞭に言葉を聞いたのは初めてだった。
いつもは隣の部屋から漏れてくる音楽みたいに籠っているのに、この声はヘッドホンで聞いたみたいにはっきりしてる。頭の後ろから脳内に響くような声だ。
「えぇ、と……」
僕は痛む目を擦りながら、戸惑いの声を上げた。
穢れがなくなって良かったねと言ってあげたいけど、その割には体に二重三重と蛇が巻き付いていて、絞殺される寸前みたいになっているのはどういうこと?
ねぇ、ちょっと。穢れを取ってくれてありがとうとか、お礼に金銀財宝をあげましょうとか、そう言う流れにはならないんですか、蛇神さま?
そんな僕の心の声に応えるように、頭の中に響く声が言った。
『相応の礼はする。おぬしを我が依り代として迎えようぞ』
「いえ、それは結構です」
僕は即答でお断りした。
依り代の何たるかを知ってるわけじゃないけど、いい予感がまったくしない。何しろ、チン〇の形をした蛇神さまだ。できればあまり関わり合いたくない。
「お礼は金目のものでお願いします。なければ何も要りませんから、どうぞお立ち去りください」
神様とのやり取りははっきりさせておくに限る。
昔話にもあるように、迂闊に何でも貰おうとしたら碌なことにならない。金銀財宝なら喜んで頂くけど、それ以外はNG。
でも、残念ながら昔話にもあるように、神様ってのはイイ奴ばっかりじゃないんだ。
中には横暴なのも道理が通じないのもいれば、好色なのもいる。残念ながら、この蛇神さまはその全部だった。
『我の甘露をその身に受けても、まだそう言うか……?』
不穏な言葉に危機感を煽られて何とか目を開けると、巨大な白蛇が僕の目の前で鎌首を持ち上げ、大きく口を開いているところだった。
白い尖った牙の先からは、キラキラと光る雫が重たげに揺れている。――――毒だ!
「……ッ!」
とっさに体を捩じって避けたけど、よく考えれば僕は湯船の中にいたんだった。虹色に光る毒液が水面に落ち、揺らめきながら滲んでいく。
「あ…………ッ」
水面を揺らして、僕は悶えた。
温いお湯を通して、蛇の毒液が全身の皮膚にしみわたっていく。特に皮膚の薄い乳首と、あそこと、アソコが滲みて、ものすごく熱い――――!
「あ、あ、……なにこれ……」
水面が揺れるだけでそのままイッちゃいそうだ。湯船からでなくちゃと思うのに、全然体が自由にならない。追い打ちをかけるように、鱗の付いた体が足の間をズルズルと移動した。
「ひあぁッ……!」
鱗に玉と亀頭を擦られて、僕はブルブルと体を震わせた。
『このように霊力溢れる精は久方ぶり。逃すものか』
「ひぁ!……や、めて……!」
股間に走る鋭い快感に、僕は悲鳴を上げた。
鎌首をもたげた白い蛇が、滲み出てきた僕の先走りを舐めていた。二股になった舌が、溢れてくるものを美味そうに舐めている。そうかと思えば、これでは足りないと、蛇の舌が鈴口の中にまで潜り込んできた。
「あ!あ!あ!」
おしっこの通り道を遡って、弾力のある異物がずるずる入り込んでくる。痛みと、疼くような気持ちよさ。これってもしかして、さっきの毒液が直接中に塗り込められているんじゃ……。
「嫌!……嫌、だ!」
拒絶の声を上げたけど、もう遅かった。おちんちんが燃えるように熱くなって、ジンジン疼きだした。おしっこを漏らしそうな感じと、射精しそうな感じが半々くらいで襲ってくる。
『我が依り代となることを受け入れよ。さすれば天上の愉悦をくれてやろう』
舌を抜き取った白蛇が、尊大な口調で命令してきた。
僕は両手で疼くものを握りしめながら、必死で首を横に振った。はい分かりました、なんて言ったら最後、何をされるか知れたもんじゃない。
拒絶する僕に見せつけるように、白蛇は長い舌をチロチロと出し入れした。素直に言う事を聞けば、その穴をこうやって可愛がってやるぞと言いたげに。
思わず誘惑に負けそうになったけど、ここで負けたら人生終わりだ。
「依り代にはならない!」
言霊の力を信じて、力いっぱい宣言する。白蛇が怯んだように少し頭を退いた。やった、少しは効き目ありだ。
僕は大きく息を吸い込んで、続けて「立ち去れ!」と言おうとした。言おうとしたけど、言えずに喉を詰まらせた。叫びかけた口の中に、勢いをつけた蛇の頭が滑り込んできたからだ。
『――――ならば、仮住まいで我慢しよう』
「うぅううッ、……んんぅううう――――ッ!」
言い終えるより早く、蛇の頭が喉の奥へと潜ってきた。
長い体をうねらせながら、白い蛇がずるずると口の中へ入ってくる。両手で胴を掴んだけど、お湯で滑って制止できない。その上、毒液混じりのお湯が中に入ってきたせいで、全身がカァッと熱くなった。
吐きそうで苦しいのに、鱗が喉の奥を擦れていく感触がゾクゾクするほど気持ちいい。
王子様にお尻を犯された時みたいに、ペニスから精液が溢れてきた。お尻を掘られてイッちゃうだけでも十分変態なのに、蛇を呑み込んで射精しちゃう僕って一体……。
「お、……お、おぉ……ッ」
手の中を滑りながら長い蛇の胴体が吸い込まれていき、ついに尻尾の先が口の中に消えていくのが見えた。下腹がズシリと重くなり、熱が溜まる。蛇が、僕の体に丸ごと入ってしまった。
結局のところ、蛇はかなり霊的な存在だったらしい。
あれだけの大蛇を飲み込んだのに、僕のお腹は裂けたりしなかった。臍の下に居場所を定めた蛇が動いてとぐろを巻きなおすたびに、ペニスの付け根がビンビン響く。半分霊体で半分実体みたいな感じなのか。
「……あ、あ……嫌だ、なにこれ……ッ!」
ゾロゾロと動かれるうちに、下腹から鳩尾まで、断続的に走り抜けてくる感覚に襲われた。これには覚えがある。お尻を弄られてイクときの、あの感覚だ……!
「……ぃいい、イッちゃう……、イッちゃうよ!」
狭い浴槽の中で冷めた水面を叩きながら、僕は何度も何度も昇りつめ、溺れかかっては毒液交じりの湯を飲み込んだ。
射精も何回もしたし、ドライオーガズムもあった。いくらイッても気持ちいいのが止まらない。お尻を振れば、それに応えるように蛇が動いてどんどん気持ちよくなっちゃう。
「もう、動かないで……、イッてる……イッてるからぁ……!」
甘えるような悲鳴を上げた時、毒液の混ざったお湯が淡く光った。あんまり気持ちよくて、全身が痙攣しそう……!
『……この力は……』
体の中の蛇が感嘆したような声を上げた。
けれど、それを問いただす余裕はもうなかった。
一際大きな波に身を委ねて高く叫んだあと、頭の芯を真っ白に焼かれた気がして、僕はイキっぱなしのまま意識を手放した。
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