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学園に属しているうちは庇護下にあるのと同じ。下手に手を出してはマズイ輩がうじゃうじゃいるのだ。学園運営者を敵に回すつもりはない。
いたって穏便に、平和な学園生活を送りたいと思っているのだ。
だが、卒業後はそうもいかない。大人の仲間入り。自分の行動には自分の責任が伴ってくる。
今は好き勝手にしてうる宇宙人――春川も、威張り散らしている生徒会も今のままではいられないのだ。
「……僕を抱いているというのに、何を考えているの」
薄く、開かれた瞳に朔太郎が映る。透き通った蒼の奥に、紫の輝きが見えた。
「――雪美、若を誘惑するんじゃない」
「……なんだ、百々瀬もいたの」
「クラスメイトの存在を忘れるな。お前、どうやって若に取り入ったんだ。というか、どこで知り合ったんだ」
「煩い小鳥だね。わざわざ僕が取り入るわけないだろう。そもそも先にちょっかいをかけてきたのはこの人だ」
クラスメイトだったのか、と目を瞬かせた。
敬愛する委員長から向けられた視線に苦虫を噛み潰す。眞白は眞白で変わらず自分勝手だし、委員長は委員長でそんな眞白を可愛いと言う。なんて地獄だろう。いち早くこの空間から逃げ出さなくては。
何を考えているか分からない蒼い瞳を伏せ、普段では信じられないくらい大人しく抱かれている眞白。
普段のあの苛烈さはどこへやら。ツン、と澄ました横顔は高貴な猫を思わせ、気に入らないことがあればすぐに導火線が燃え上がってしまう。
しかし、言葉は苛烈だが言っていることは正しいので誰も反論ができないのが現状だ。自分より格上だろうが、教師が相手だろうがそんなの関係ない。
雪美眞白というクラスメイトが、百々瀬が理解できない。
特別親しい友人も居らず、決まった友人とつるむこともない。成績は上々だが、大学に進学しようとする気も、就職活動をしている様子も見られない。
「小鳥って呼ぶなと何度も言ってるだろう」
「だって、僕には君がピーピー囀る小鳥にしか見えないんだもの。あまり煩いと焼き鳥にしてしまうよ」
からかうように人のことを「小鳥」と呼び、まともに会話をしようとしない。
ここで怒ったほうが負けだ。
怒鳴れば逆切れ、果ては泣きながら怒鳴り返されるのだ。零れる涙なんて知らないとばかりに、感情のままに怒鳴る眞白はやりにくいったらありゃしない。
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