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 一に口を開けば「どこに行くんだ!?」二に口を開けば「オレたち友達だろ!?」三に口を開けば「友達の言うことは聞かなきゃならないんだぞ!?」――まったくもって理解不能だ。  脳みそが理解することを拒否している。むしろ理解できる人間がいるなら会ってみたい。  書記親衛隊を解散させる原因となった宇宙人を憎んでいる生徒は少なからずいる。  いくら穏健派といわれようと、書記親衛隊内にもいるのだ。  初めのうちは関わりたくもない、と接触を避けていたのが宇宙人のどこかに引っかかったのだろう。  誰かから聞いた(書記しかいない)のか、教室にまで特攻してきた宇宙人にはドン引いた。 「友達になろう!」から始まり、挙句の果てにタメ口に呼び捨てだ。 「オレたち友達だろ! なんでも相談してくれよ!! 家族と仲悪いんだってな!! 仲間はずれにされるのは確かに悲しいけど……でも! きっと眞白のことを思っての、」 「――うっるさいなァ!! ぎゃーぎゃーわぁわぁ喚くことしかできない下等生物が僕に指図するなよ!!」  堪忍袋の緒が切れた、というよりも火山が噴火したという表現のほうが正しいだろう。  我慢の限界だった。  なぜ、赤の他人も同然の宇宙人に家庭環境のことにまで口を出されなければならないんだ。  ここ最近の風紀委員会の忙しさを見ていたから、穏便に、事件を起こさないようにとガラにもなく考えていたのに、全部パーになってしまった。 「そもそも僕は学年次席としてある程度の授業免除を許されてる。僕が授業に出てようが出てなかろうが、君には関係ないじゃないか! 僕の成績が下がって、君になんの関係がある? ないだろう!? 友達友達っていうけれど、僕は君を友達と思ったこともないし、名前呼びされる筋合いもない! お友達ごっこに巻き込まないでくれ!!」  はぁ、はぁ、と肩で息をする。そういえば、ここ最近は声を荒げていなかった。  きりきりと喉が痛み、シンと静まり返った廊下に響き渡った声は授業を行っている教室内にも聞こえているだろう。  まさか、怒鳴り返されると思っていなかった宇宙人は、モサモサ頭の下で目を瞬かせ、言葉を失っている様子だ。 「顔の良い人間を侍らせて、随分気持ちが良いだろうね! その人たちを慕う親衛隊や生徒からの羨望、熱、恋慕――君はそれら全てを台無しにしてるんだ!! 人の恋路を邪魔して楽しい? 憎しみのこもった羨望の眼差しを受けて気持ちが良い? ……ははっ、僕には理解不能だね。マゾなんじゃないの、君」 「――姫に、随分と言ってくれるじゃないか」 「貴方には話していませんよ、生徒会長」  言葉を失う宇宙人に代わって、声を発したのは今まで黙っていた生徒会長だ。男前な顔を歪め、嫌悪を滲ませた表情て眞白を蔑み見る。 「僕をそんな目でいないでくれませんか?」 「ハッ……感情に振り回されてる馬鹿を蔑まないでどうする?」 「ふふ、なぁにそれ、ブーメランじゃん。恋心に踊らされてるのは貴方たちでしょ。バッカみたい!! ていうか、見る目ないんじゃないですか? もっと素敵で可愛くて綺麗な子なんてたぁくさんいるのに、感情を振り回す馬鹿に恋心を弄ばれてるなんて、滑稽だよ! 貴方たちに、親衛隊の子たちを馬鹿にする資格なんてないんだよ!!」  ガツッ、と頬骨に衝撃が走る。  衝撃に、簡単に吹き飛んだ眞白は後ろに尻もちを付いて、口元に嘲笑を浮かべた。 「恋に狂う姿なんて、醜いだけだ」  汚泥のように、深く闇を抱えた瞳は、春川姫司を捉えて放さなかった。  ずぶずぶと沈んで行ってしまう深い海の瞳が、脳裏に焼きついた。  

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