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 美味しい美味しいと、口だけじゃなく本当に美味しそうに食べるものだから、オムライスがお気に入りの眞白も嬉しくなって笑みが零れ始めた。 「そんなに美味しい?」 「はい! ぼくも、トモナリも料理できないし」 「母も兄も料理へったくそで、こんな美味しいオムライス初めて食べましたよ!」 「オムライスって周りであんま食べてる人いなくて、子供っぽいなって思ってたところがあったんですけど」 「こんなに美味しいならもっと早くに食べてればよかったって後悔してます」  目をキラキラ輝かせたかと思えば、しょぼんと眉をハの字に下げた双子が本当の小動物に見えてきた。垂れ下がったケモノ耳と尻尾の幻覚が見える。  一体、どんな気の迷いで僕の親衛隊を作ろうなんて思ったんだろうか。  親衛隊に属していた身としては、親衛隊によって制限をされることも多いし、対象生徒と親衛隊の関わり方にもよるのだろうが、まったく意思疎通を取れない場合だってある。  親衛隊を設立してしまうことで、自分自身たちの行動範囲を狭めてしまうのだ。 「それで、どうですか? 親衛隊については」 「むしろ、どうして僕の親衛隊なの?」 「ぼくたちが入学したときから、雪美センパイはすでに久栗坂匡孝の親衛隊に所属してました。それに、親衛隊の設立は中等部三年になってから許可されます」  親衛隊に所属している生徒の親衛隊を設立することは原則としてできない。だから、書記親衛隊が解散して、眞白の周囲も落ち着いてきた今、声をかけたのだそうだ。  親衛隊が解散してから、すでに眞白の親衛隊に入りたいという生徒の署名は十分に集まっており、風紀委員長の許可も取ったと兄の方が言った。  まさか彼が許可をしていたとは思わずに兄の方を見る。  にっこりと、裏を感じさせない綺麗な笑顔だ。弟は、眉をほんの少しだけ下げてそれを見ている。  何もかもが瓜二つかと思ったが、兄のほうがポーカーフェイスが得意らしい。前髪に隠れて分かりにくいが、弟はよく見ると下がり眉だ。 「ぼくたちは、ずっと雪美センパイの親衛隊を作りたかったんです」 「酔狂だね。作ったとしても、僕は関与しないよ」 「まさか! お茶会をしようとか、交流会をしようとは言いません。ただ、雪美センパイのことを敬愛して慕っている生徒たちが集まって、活動する場所を設けてほしいだけなんです」 「それに、親衛隊員の名簿は非公開にします。ぼくと、ヨルフミの名前だけを公開して、受け入れ口にするんです」  なるほど、そうすれば眞白は誰が親衛隊員かわからず、気にかける必要もなくなるというわけか。  関与はしないと言いつつも、やはり自分の親衛隊となれば誰が所属しているのか気になってしまうものである。  隊長と副隊長がこの双子で、あとの隊員は誰かわからないというのはなかなか面白い。 「勝手にすればいいんじゃない」 「……というと?」 「いいよ、作っても。朔太郎も許可しているんだろう。親衛隊設立するのに同意書って必要だったよね。放課後にでも持ってきてくれれば書いてあげる」  目に見えて喜ぶ双子に、微苦笑が溢れる。子犬みたいにコロコロ表情が変わる。良い意味で表情豊かだ。 「嗚呼、そうだ。親衛隊は別にいいけど、あの毒キノコには気をつけること」  毒キノコ? と首を傾げる双子に高等部の一年生に編入してきた子、とだけ言えばすぐに誰か分かり呆れ顔になった。  中等部は校舎が違い、毒キノコ兼宇宙人の噂はさほど広まっていないかと思っていたが、要注意人物として中等部生徒会から注意喚起がされたらしい。  宇宙人に首ったけな高等部生徒会とは違って中等部の生徒会は優秀だなぁ、と呟けば、なぜか双子が照れたように「えへへ」と笑い声を漏らした。

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