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来週に差し迫った体育祭だが、運営の主たる生徒会がほとんど機能していないせいで各委員会がてんやわんやしている、と百々瀬が愚痴を零していた。
珍しくひとりだったのは、風紀室から朔太郎も百々瀬も出れる状態ではなかったからだ。
あとで昼食を持っていってやろうと、片手で食べられるものをテイクアウト注文している。
ひとりで風紀室まで持っていけるとは思っておらず、どうせならこの双子にも手伝ってもらおう。使えるものは使わなければ。
最後の一口を飲み込んで、「ご馳走様でした」と手を合わせる。
――にわかに、食堂の入り口付近が騒がしくなった。ざわめきと、かすかな罵声が耳に届く。
悪意が凝り固まった音に、眉根を寄せる。せっかく美味しかったオムライスが台無しだ。
「……噂をすれば、ですね」
「雪美センパイの言う、毒キノコの登場ですよ。被害がこっちに来る前に、さっさと避難したほうがよさそうですね」
「取り巻きもたぁくさん引き連れてるから、あんな煩いんですよ」
取り巻き、と言えば生徒会役員に違いない。
毒キノコに見つかる前に食堂を出たいが、まだ朔太郎たちにと注文した食事が出来上がっていない。そもそも、どうして僕が逃げないといけないんだ。
口をへの字にして、大きく溜め息を吐き出す。
どうしたわけか、一対宇宙人ご一行とひと悶着があってから、眞白の姿を見つけると犬のように宇宙人が駆け寄ってくるようになった。
それは決まって、朔太郎がそばにいないときで、自身のタイミングの悪さを心底呪った。
胃の奥が渦巻いて、気持悪い。頭も痛くなってきた。
明らかに表情の暗くなった眞白を心配する双子は、どうしようかと目配せをする。
生まれたときからずっと一緒で、テレパシーが使える勢いで意思疎通ができる双子は、脳内で会話を交わす。
敬愛する人が憂いている。その原因を取り払ってやりたいが、どうしようか。コンクリートに詰めて海に沈めてしまおうか?
春川姫司が何を考えているのかさっぱりわからないのだ。
生徒会役員に殴られて、後ろに倒れた眞白に向かって「痛かっただろ!? リューヤがごめんな」と宣ったのだ。
一瞬前の出来事を忘れたのか、聞いていなかったのか、わけがわからない。あの場面でよくそんなことが言えたものだ。
黒い前髪の隙間から覗く瞳が、爛爛と輝いて眞白を映していた。
冷たい床に着いた手を救って、ぎゅっと握り締める。熱いほど暖かい手のひらが気持悪くてしかたなかった。
「マシロ!! 一緒に食べよう!!」
嗚呼ほら、気持悪い。生理的嫌悪。精神的苦痛だ。
食べよう、と言われても、眞白はとっくに食事が終わっている。空になった皿を下げようと、無言でトレーを持ち席から立った。
「無視するのはダメだって教えただろ!!」
肩をつかまれ、強引に引き寄せられる。
「あっ」
トレーから皿が滑り、大きな音を立てて床に落ちた。ガシャン、と割れる音に目を見開く。
「ほら!! マシロが慌てるからいけないんだ! 一緒に謝りに行ってやるから!」
傍若無人にもほどがある。脳みそが理解することを拒否した。
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