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 ――ついにやってきてしまった新入生歓迎会。  ふらふら宇宙人に着いて回る神宮寺と宮代を捕まえ、「見えるところではせめて仕事をしてくれ!」と怒鳴りつけたい気持ちを必死に抑えて新入生歓迎会の説明をした。  随分とくたびれ疲れた様子の紅葉とは対照的に、隣を歩く一澄は絶えずニコニコ満面の笑みだ。 「今からでもいいから中止にしましょーよぉ……こんな状況でやっても悪いことしか起こりませんってぇ」 「縁起悪いこと言わないでください。疲れてるのはわかりますけど、白乃瀬君は目の保養、いえいえ、白乃瀬君のことを楽しみに待っている生徒もいるんですから、笑顔笑顔」  そんな安売りみたいに言われても。  ポンポンと、頭を撫でられ慰めてくれる一澄に絆されそうになる。  しかしながら、男の目の保養にはなりたくない。なるのなら女性に見つめられたい。目の保養にするなら女性がいい。  向けられる視線にへらっと力ない笑顔を見せれば歓声が上がり、それを遠い目で見ながら先日行われた新歓の会議を思い出す。  人員問題や敷地内の問題などを踏まえて委員長たちと企画しなおしたらなんだか凄いことになってしまったのだ。  更には今の三年生が一年生のときに行われたバトルロワイヤルがなかなかに楽しかったという放送委員長の発言が積極的に取り入れられてしまい、ただの鬼ごっこではなくバトルロワイヤル風鬼ごっこにまで発展した。最悪である。  ほんとどうしよう。  一人として捕まえられる自信がない。  体力の無さには誰にも負けない自信がある会計様の運動音痴は全校生徒が知っている。もはや周知の事実。恥ずかしい。穴があったら入りたい。そして一生引きこもっていたい。 「めんどくさ」 「まぁまぁ、そんなこと言わないで。実は俺、かなり楽しみだったりするんですから」  いつも以上に満面の笑顔でいる一澄に、どうにもテンションの上がらない紅葉は苦笑を漏らした。  各委員会委員長の代表として説明を行う図書委員長と会計の珍しいツーショットに整列した生徒たちはどんどんテンションを上げていく。  もちろん、彼らが盛り上がっていくのはそれだけではない。  バトルロワイヤル風鬼ごっこを勝ち残った勝者に与えられる優勝賞品も、熱を上げさせる要因ひとつだ。

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