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15 ※龍介視点

「はは、蒼のイキ顔、ホント最高。恥ずかしかった?」 「……ハァ、ハァ、ハァ……、うっ…うぅっ…ふっ!」 「ははっ」 俺は衝動を抑えきれず、蒼にキスをする。可愛い。食べちゃいたい。そう思い、いつもガブリと蒼を食べる様なキスをしてしまう。 「答えろよ。」 「…!」 別に怒っても苛々もしてない。けれど蒼を困らせたくて、強めに質問をなげる。案の定、蒼の顔が歪む。 あー、好き。愛してる。それ以上。 時間が経つほどに、知れば知るほど、自覚すればする程、それは深くなる。 もっと、もっと、もっと…。俺の脳を侵食して、今では片時も離したくない。どうにかβの蒼と番契約が結べないか。と、どうしようもない事も考えてしまう。 俺は本来もっと淡白な奴なはずだ。やって欲しいと言われたらセックスをするくらい。それは処理。他の奴には普通にも出来て、肝心の蒼には酷くしてしまう。あーあ、本当に救いようがない。これで好かれるはずはないだろう。 (いや、そもそも、婚約中か…) そう考えて自虐めいた笑いを漏らしてしまう。まぁ、別にいい。まずは無理矢理側に繋いでおけば、その先の方法は幾らでもある。先ずは捕まえて、しまい込まないと。誰かに取られる前に。 ね。放し飼いはそれまでの我慢。 --- 「お疲れ様でーす!ありがとうございました。」 テレビ収録の終わりを伝えるスタッフの声がスタジオに響き、皆がゾロゾロとセットから出て行く。俺は奥にいた蒼をちらりとみる。蒼は忙しなく色々な人に挨拶をしていた。いつも通り、一生懸命に忙しなく動き回る姿に口の端が緩む。しかし、蒼と遊ぼうと嬉々として進めた歩がピタリと止まる。 「宮城さん、お疲れ!今日も頑張ってるね。俺のマネージメントもしてくださいよ〜」 なんだアイツ。人気俳優とか言われてた…伊勢とか言う奴か。伊勢は馴れ馴れしく蒼の肩に腕を回していた。 「ぁ、わっ…伊勢さん!お疲れ様です!俺なんか…伊勢さんのマネージャーさんの方が仕事出来ますよ。」 「えー、じゃあさ、プライベ「蒼。」 あ、声低くなったな。案の定、蒼がビクリとするのが気配で分かった。こういう輩がいるから、柄にもなく焦ってしまうんだ。蒼は人当たりが良く好かれるタイプ。だからよく人に絡まれている。でも伊勢はその中でも特に触りすぎ。…ま、いっか。これをネタにまた蒼と遊べると思えば。そう自分を納得させ、ゆっくりと蒼に近づく。 --- しかしやはり人を1人捕まえておくのは難しく、普通に考えると不可能だ。だから仕方ない。蒼を自分のものにする為ならどんな嘘でもつくし、不本意な事でもやってやる。 「最近、バンドは好調らしいね。」 「お陰様で楽しくやらせてもらってます。」 俺は事務所の役員である氷川という男と会っていた。氷川は、やり手で金儲けが生きがいって感じの男。反吐が出るが、今は都合が良い。 「それで、話はなにかな?」 氷川は直ぐに本題を始めろと急かしてくる。 「宮城を俺の専任にして欲しいです。」 「専任?ははは、今もほぼそんな感じだろう?猛獣使いだっけ?」 勘に触る言い方にはイラつくが、俺は内心笑ってしまう。猛獣使いの餌は自分自身だもんな。 「もっとです。」 「もっと?」 氷川は言っている事が分からないと、眉を潜める。 「はい。24時間365日、です。」 「……あぁ。…へー。なるほど、なるほど。」 氷川がニタリと意地の悪い笑顔を浮かべる。話の本質を理解した様だ。そして、金儲けのネタを掴んだといういけすかない笑いを漏らす。 「事務所の人間だし、確かに彼1人どうにでも出来るよ。ただ、それにはもう少し頑張って売り上げを上げて貰わないとだな。こちらもリスクが大きい事するんだから…ね?」 やっぱり金の話。この男は本当に嫌いだ。その欲深さを利用させてもらうので、あまり文句も言えんだが。 「具体的に金額は?」 「はは、抜け目ないね。」 当たり前だろだろ。と心の中で苛つきながら呟く。人参の様に目の前にぶら下げてのらりくらりとこき使われる、そんなことはやってられない。 氷川はサラサラと金額を紙に書いた。 「…なるほど。」 「人1人分だからね。宮城くんの働きは私も評価していて、貴重な人材だと思っている。」 氷川が書き出した金額は中々の額だった。やっぱり、ぼられてんなー。それが率直な感想だった。でも想定の範囲内。後数年頑張れば、とどかないこともない。 (けど、その前に蒼が動くだろうな。) 俺は思わず口の端を歪めて笑う。 「はは、流石に厳しいかな?」 氷川は俺の笑いに勘違いして、含み笑いしながら聞いてくる。 「いえ、分かりました。必ず、ですからね。」 「!あ、あぁ…。期待してるよ。」 俺の強気な発言に、氷川は一瞬驚きに目を見開く。 つまり俺は氷川に、自分の価値を示すだけで良い。これからもっと金を生み出せると。利用されるのはしゃくだが、こちらもそれを利用するだけだ。 もうすぐ。もうすぐ手に入る。 ---- 両親とは俺が家を出た後も紆余曲折、話は続く。 俺には姉がいた。姉は俺のよき理解者で、嫌いじゃなかった。ある日その姉が事故で死んだ。それから両親は再び俺に構う様になった。親が人に羨まがられる『普通』の家族を欲しているのは知っていたが、その態度はまるで姉のスケープゴートを欲している様だった。 干渉しない事だけが取り柄の両親だったのに。俺は姉が嫌いではなかったのに、死を悼む暇なく自分勝手な思いで動くんだな。両親への嫌悪感は更に募る。 両親は避けても避けても、しつこく干渉してくる。死ぬ程嫌だったが、ここでやっと役に立つ。 プルル… 「龍介?龍介なの?!」 喜びを隠せないという様子で、母親が電話に出た。勝手に過去を水に流す事が許せない。 「久しぶり。」 「電話嬉しいわ!いつぶりかしら…。どうしたの?最近よくメディアに出てるわね。お母さんとお父さん、よく2人で龍介を観て嬉しい気持ちになってるの。」 「うん。ありがとう。そっちも、ベルリンだっけ?ニュースでみたよ。順調なんだな。」 「龍介も私達を見てくれてたの…!やっぱり親子ね。」 感慨深く呟くように言う母親にイライラしてしまうが、グッと堪える。表面上はいい親子でいなければ。 「ところで、提案があるんだけどさ…」 俺は本題を切り出した。 両親は『普通』の誰からも羨まれる家族を望んでいる。なら、それを演じてやるよ。WIN-WINの取引だろ。

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