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「じゃ、蒼、また夜帰ってくる。玲次によろしく伝えといて。」 「はい…。気をつけて。」 龍介さんはいつもと変わらず、俺に軽いキスをして出て行った。妙な罪悪感を感じてしまうが、挙動不審にならないように努めた。 本当にこの選択は合っているのか。なんであれ、俺はこれから龍介さんを裏切る。そもそも、騙されてないよな…。 今日は時間の流れが遅く感じる。 ---- 「蒼耶、荷物なんもないの?」 「…はい。」 「ふーん。じゃ、行くか。」 「はい。」 玲次さんはいつもの如く言葉少なく、表情も少なく、淡々としていた。俺の足の鎖を普通に外し、玄関のドアを普通に開けて、俺を乗せて車は普通に龍介さんのマンションを出た。呆気なくて、俺はお礼を言うのも忘れてぽかんとしていた。 「……」 「……」 玲次さんは、こちらが話を振るとそれなりに反応を返してくれる。しかし今日は、俺も罪悪感を感じているせいか話す余裕がない。車内は静まり返ったままだ。気まずい…。 「あの、玲次さんの弟さん。龍介さんに似てるって、どんな感じなんですか?」 「あぁ……、家で浮いてるところ?似てる。」 「…え!……あっ…そ、そう、なんですか。」 玲次さんは前を向いたまま、さらりと重い事を言う。龍介さん、浮いてるのか?前回ご両親と会った時は、仲良さげに見えたが…。 ていうか、盛り上がらない…。この話を玲次さん伝いに聞くのも憚れるしなぁ…。なんか…、あんなに頑張ってるのに、浮いてるとか…龍介さん、俺が居なくて大丈夫かな……とか、変な事をぼんやり考えてしまった。 -- 「蒼耶、ついたぞ。」 「ホテルですか?」 「…龍介もしつこいからな、少しの間、此処で篭城してて欲しい。1週間程度と考えて置いてくれればよい。」 「分かりました。色々とありがとうございました。」 その後はなるべくホテルの部屋から出ないようにと杭を刺ささされ、玲次さんは去って行った。 「…もっと、開放感を感じると思った。」 ぽどんっとベットに寝そべり、1人呟く。ごろりと転がる。ため息が漏れた。あんなに外に出たかったのに…。なんなんだ…、この気持ち。 「……」 その後は部屋を歩き回ったり、バルコニーへ出てコーヒーを飲んだり、ふらふらと過ごした。 --- 4日目の朝、大分この生活にも慣れてきた。朝はベーカリーでパンを買って、昼はお弁当。夜は日本酒。 「……、」 夜何となくテレビを見ていると、龍介さんが音楽番組に出ていた。相変わらず人気な様で、司会者と笑顔で話している。 (良かった…。) 龍介さんの顔をみたらホッとした。一時は見るのも怖かった顔に安心した。不思議だ。 「……」 なんか、何故か…ムラッとする…。失礼な話だが、龍介さんを見て、龍介さんの体温や匂いを思い出すと下半身が熱を持ちだす。 なんて失礼なんだ……俺…。 もうそれ以上テレビを見る気にもなれず、俺はテレビを消した。そして部屋の電気を消すと、無理矢理そのまま寝た。 ---- そして、それは突然起きた。 「……熱い…」 次の日、起きると寝汗が酷かった。体もポカポカと、熱があるのは確実だった。あせが不快で、そのままよたよたとシャワーを浴びた。しかしパンを買いに行くのもキツく、俺は再びベッドに倒れ込んだ。 ハァッハァッハァッハァッ (…………っ…) ペラ 「……っ、なんでだよ…」 自分に呆れてしまった。体の奥にむず痒さを感じて布団をめくると、勃起していた。全く治りそうにない。 「ふっ、はぁっはぁっはぁっ……うっ、」 一度意識すると、急激に性的な要求が迫り上がってくる。 「うっ、だめっ、だめだめっ…っ、」 そろりと下半身に手を伸ばしてしまえば、あとは歯止めが効かなくなる。 「はっはっはっ…」 ぐちゅぐちゅと、音がする。自分の息遣いが獣みたいだ。触れば触るほど、要求は治るどころか酷くなるばかり。なんだこれ…。なんだこれ!?頭の芯が熟れて、それしか考えられない。自分が凄く下等なものに思える。だめだ、これは、だめだめだめ……。 「ふっ、〜っっ!はぁっ、はぁっ、はぁっ………もっ、なにこれ…っ!」 出してもまだ治らない。たまらず自身よりも更に下に手を伸ばした。するとそこはねちゃりと濡れていた。 (治らない……) 「うぅ……」 またそろりと、震える手を下半身に伸ばした。 ガチャッ 「!!」 ゴンッ 「たっ…!」 その瞬間に扉が開き、俺はあまりにもびっくりし過ぎて、ベッドからゴロリと転がり落ちた。 「……っ!!」 「ははっ、蒼はベッドの下好きだよな。」 「え。」

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