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俺はベッド脇の床で丸まったまま、声がする方をみて目を見開いた。
「…っ、りゅ、龍介、さんっ…」
俺の声を聞いて、龍介さんの口元がニヤリと歪む。
「何してたんだ?」
「……っあ、いえ…」
顔に熱が集まる。俺は丸まったまま、もぞもぞとずり下がったズボンをあげた。
「ま、隠してもバレバレだけど。」
「…っ」
そう言って龍介さんは俺の体をひっくり返し、足で抑えこんでくる。
「ぅうっ、やめっっ…!」
俺はその足を震える手で押し返した。
「あーお、俺には隠すなって教え込んだろがよ。」
少し低くなる龍介さんの声に、俺はビクリとして、抵抗をやめ、ガクガクと体の力を抜いた。
「へー、ははっ…、ぐっちゃぐちゃ」
「……ふっ」
確かに…。ぐちゃぐちゃで見るも無残な有様だろう。さらに龍介さんが足でぐりぐりと俺の下半身してくる。それに合わせて、にゅちにゅちと卑猥な音が聞こえてくる。俺は打ち上げられた魚の様に、ビクリビクリと跳ねた。
きっ…、気持ちいい…っっ!
情けない事に、俺は手荒く扱われても快感を拾えてしまう。ただ、ここまでなのは異常だ。俺は強烈な快感と、現状に戸惑う冷静さの間で板挟みになった。
「ふっ、すっご……ねぇ、」
「はっ、はぁっはぁっ……っ」
声をかけられて、俺は戦々恐々として目線を上げた。俺と目が合うと、龍介さんが口の端を歪めて笑った。
「どうして欲しい?」
「…………あっ…」
どうして、欲しいか……。それは…。ずっと、疼くのは、前じゃない。しかしここで言うなんて、逃げ出した手前、都合が良すぎないか?
俺はぐっと目を瞑る。
「………ふーん…」
俺のその様子に、龍介さんが不満気に声を上げた。
「あっ、ちょっ、なにをっ……!」
龍介さんはかがみ込み、乱暴に俺の下着をずり下げると後ろに手を伸ばしてきた。
「ふっっ、あっ、あっ、あっっっ…っっ!!」
そのまま遠慮なくぐりぐりと、龍介さんの指が入ってくる。俺は龍介さんの手を止めに入るが、大した抵抗もできずに馬鹿みたいに喘いでしまう。
「蒼はやっと、完璧なΩになったんだ。」
あ、いっ……いっっ!もう、いくっ!
はくっと息をついたその時、龍介さんがポツリと呟きその手を引いた。
「…ふっっ!」
「どう?Ωのヒート。」
「あっ、あぁっ……」
あぁ……、やっぱり…。
「はははっ、残念そうな声」
しかし落ち込む俺とは反対に、体の中にはじわじわとむず痒い熱が昂まる。
「はい。仕切り直し。」
そう言うと、龍介さんは立ち上がり、再び人の悪い笑みを浮かべた。
「どうして欲しい?」
「…………」
言えるわけが…ない。言ったら、どうなるか。
「言え。」
しかし龍介さんは低く唸るように、その先を促す。
「…………れて…………さ…い……。」
「はぁ?聞こえねーんだけど。」
俺は一度口をきゅっと結び、観念して再び言い直した。
「っ……!い、入れて下さい。」
俺は震える声で懇願した。
「…あー、ダメダメ。」
しかし俺の言葉を聞いても、龍介さんは、はぁとため息をつくだけだ。
「蒼はΩで、」
…それは…
俺はごくりと、唾を飲み込んだ。龍介さんの言わんとする事は分かっている。分かっているけど…
「ヒート中なんだから、」
分かる。分かるけど……。
ぐらぐらと理性と本能が。
だって、そらを言ってしまったら……………。
「分かるだろ。」
言わんとしているのは、いつも、言われてきた言葉。
だからダメ。そもそもこんなふうに、性衝動のままに言う言葉じゃない。そこまで馬鹿にはなれない。……でも俺は、もうΩなんだ…。ここで断って、抑制剤…もらえないとどうなるんだろう…。貰えるはずがない。そもそも、きっといつかはそうなるんじゃないか?今か、後かの違い。結局、最後は変わらないんじゃないか?だったら。
俺は頭の中で、もはや言い訳の様な言葉を並べた。
「…う、うぅっ…。俺を……はぁっ、り、龍介さんの、……っ」
馬鹿か。本能に負けて、取り返しのつかない事を。
でも、俺はもうΩだ。Ωとαならそうして当然だ。
ダメダメダメダメ…
大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫…
言うな言うな言うな言うな言うな言うな……
言え言え言え言え言え言え言え……
「蒼」
「……あ」
顔を上げると、龍介さんが目を細めて俺を見ていた。
「耐えても意味ないから。」
いっきに、ガラガラと、崩れる。
そう。結局、意味ないんだ…。
「番に…してくださいっ。」
「………ふっ。」
「!」
龍介さんが笑ったかと思うと、早かった。いっきにベットへ引き上げられ、上にのしかかられる。
「はぁっ、蒼が、渋るからっ、我慢すんの大変だった。」
「…うっ」
龍介さんは、性急な動きで俺の服を荒々しく脱がす。龍介さんも興奮していた。近づいた龍介さんの匂いが、今までに感じた事がない程に懐かしくて心地よかった。
「はっ、解かす必要ないくらい、ぐちゃぐちゃだな。」
「……ふっ」
龍介さんに足を持ち上げられて震える。恐怖はなく、寧ろ期待が大きかった。期待で震えていた。
ズっ
「〜〜〜〜っっっ!!ふ、っっ!」
入れられた瞬間に達する。
「はっ、もうイったの?可愛い。」
「あっ、あっ、やめっ!!すみません、一度、あっ、やっっ!!…〜っ!」
龍介さんは構わず動きを早める。そのせいで、俺は連続して止まる事なく達する。
「まっ、〜〜っっ!はぁっ…!まって、まってっっ!、…っっっ〜っ!!」
「はっ。待てるわけっ、ねーだろ。あんだけ勿体ぶって…。安心して、馬鹿になる位、いっぱいイッとけ。」
「うっ、ふぅっっ!…っ、〜〜っっ!はっ、〜〜〜〜っっっ!!」
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「ふっ、あぁっっ…っ〜〜〜っっ!あぅっ、ふっ、はぁっ…っ!」
「はぁー、ヤバっ。蒼、可愛すぎて止まんねぇ。」
四肢に力なく、うわごとのように喘ぐ俺をみて、龍介さんがため息混じりにそうもらした。
「そろそろやっとくか…」
「う゛っ、」
そこで、ずるりと、龍介さんのものが抜かれた。
「はっ、大丈夫、すぐ入れてやるって。」
そして俺をひっくり返し、今度はバックから挿入してくる。
「ふっ、」
するりと、龍介さんの手が俺の項にかかる髪をかき上げた。
「じゃあっ」
「うっ、」
どくんっ
龍介さんの口が、俺の項のすぐ上にあった。
「噛む。」
「ん゛んん゛……っ!」
がぶり。
噛まれた瞬間は不思議な感覚だった。脳裏に走馬灯の様に、龍介さんの色々な顔が浮かび、幸福感や恐怖、相反する感覚がいっきに押し寄せてくる。ぐるぐると目が回り、俺はその場にへたり込んだ。そして意識が遠のいでいった。
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