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第16話 ムギとちぎれた理性*
「……っふ」
酸素を求めてはあっと息継ぎをすると、すぐにまた赤くふっくらとした唇に齧りつく。
「ンん」
角度を変えながら何度も唇を吸い、ムギの熱い口内へ潜りこむとその隅々までを舌先で辿り、撫でた。
――あれからαの棟にある談話用に設けられた個室のひとつにムギを連れこんだ俺は、性急にその口を塞いだ。
そうして今、ソファの上でムギに覆い被さっている。
俺の下できつく瞼を閉ざすムギの目尻から、生理的な涙が溢れ落ちる。
目もとを赤く彩り、喉を仰けぞらせながら震えるムギの髪を片手で梳きながら、もう片方の手をしっかり絡めた。
粘膜同士が触れあう度に口のなかのあちこちがピリピリと痺れる。舐めとる唾液は甘く、中毒作用でもあるのかと疑うほど俺を引きつけて心を乱させた。
「っは、……んう……ン……ッ!」
ひときわ強く舌を吸ったとき、ムギが息を詰めてビクリと身体を震わせた。小刻みに震えながら感じいったように眉を寄せるムギに、俺は一旦唇を離す。
はふはふと息を弾ませながら瞳を潤ませ、いやいやと首を振るムギの顔を覗きこむと恥ずかしそうに顔を背けられる。
「もしかしてキスでイっちゃった?」
「……っ」
そっと高ぶった下半身を押しつけると、細い腰が大げさに跳ねた。
どうやら当たりらしい。
「かわいい」
腰を揺すると制服の下から濡れた音が聴こえて、羞恥にまみれたムギが唇に歯をたてる。
感じている顔がかわいらしくて自分のもので何度かムギのそれを刺激していると、堪らないといった様子で首を左右に振って指を噛む。
「や……っだめ、チアキっ」
俺はムギの口から指を外すと、歯型の残るそこへ労るように口づけた。
そのままちゅっと吸いつきながら、放ったばかりで敏感になっているであろうムギのものを再度追いあげるべく、腰を擦りつける。
「ひ、あ、んっ、んぅ」
「ムギ。ん、……ムギ……」
はっはっと呼吸を荒くしながら段々速度をあげていくと、ムギの踵が焦れったそうにソファの表面を掻き、背中が弓形に反らされた。
「あっ……ア!」
甲高い声がムギの口からあがるとその身体がふるりと震える。
イっているムギにふたたび口づけながら、ぎゅっと手のひらを握ってやると、とろりと蕩けた表情でキスに応えてくれた。
「……ん、ん……」
ちゅくちゅくと舌を絡ませ合いながらムギのスラックスのボタンに手をかけ、ファスナーをおろし、下着と一緒に膝の下へ落とす。
あらわになった薄いピンク色をしたそこは白濁に塗 れていて、先端から露を溢していた。卑猥すぎる光景に喉を鳴らすと手を伸ばし、やんわりと握りこんで上下に動かす。
「! ンんぅ……ッ」
しとどに濡れたそこは滑りがよく、手の動きを助けてくれる。
口を塞がれているムギは一瞬体を強ばらせたものの、俺の動きに合せてくぐもった声をあげながら、もどかしそうに腰をくねらせた。
ムギから唇を離すと、俺はピンと立ちあがったものの先端を手のひらで優しく包み、捏ねるように動かす。
「ひぅ……っ、うん、やあ」
ムギの弱いところを探りながらその蕩けた表情をしっかりと目に焼きつけ、時折首筋や顎に口づけを落とす。
「……っめ、そこいじるの、だめぇ」
手の上にムギの手が重ねられて、剥がそうと力をこめられる。俺はその手を取ると首を傾げた。
「どうして?」
「……っ、う……」
「俺に触られるの、嫌?」
少しだけ理性が戻ってきて、俺はムギのものを弄る手を止めた。
さすがに性急すぎたかもしれないと心配になってきて、上からムギの顔を覗きこめばその瞳がゆらゆらと揺れる。
ムギは唇を一度噛むと、ちがうと首を横に振って否定した。
「チアキ……」
「ん?」
「は……恥ずかしい、から。だめ……」
目を赤くして、頬を濡らしたムギが俺の視線から逃れるように顔を背け、片手で顔を隠す。それとほぼ同時に一段と濃くなったムギのフェロモンに、くらりと目眩がした。
これは拒否されているのか、煽っているのか。どっちなんだ?
俺は顔を隠すムギの手の甲に唇を落とすと、そっと手を剥がす。それから淡く色づいた頬にも唇を寄せて指で涙を拭ってやる。
「ここ、触られたことない?」
放たれたものでトロトロになっているそこを優しく揉むようにすると、ムギは息を詰めて肩を震わせた。
「っ……」
「ムギのここ、こうやって触れるの。俺がはじめて?」
問いかけの途中で手に温かいものがかかり、それにムギがまた達したことを知る。
「……ぅう、チアキの、ばか……っ」
直後、涙声で罵られた。
俺は慌てて、ほろほろと涙を溢すムギの首の下に片手を入れて抱き寄せる。慰めるように頭を撫でているとムギの手が俺の首に回されて、ぎゅっとしがみついてきた。
ちゅ、ちゅと触れるだけのキスをすると落ちついてきたのか、ムギの身体から徐々に強ばりが解けていく。
「ごめん。ムギの感じてるところとか恥ずかしがっているところがすごくかわいくて、たくさん見たかった」
「……」
「驚かせたかな。もっとゆっくりするね」
ムギのかわいさに煽られて少し暴走しすぎたかもしれない。こういうことに慣れてないようだから、もっと慎重にいかないと。
反省しながら、自身の欲望に無理くり蓋をした。
俺はもう一度軽くムギと唇を合わせると、身体をおこす。
ムギの身体をキレイにしなければと、拭くものを求めてソファを離れようとしたところで、くんとなにかに引き止められる。
何事かと振り返ると、唇を引き結んだムギが俺の制服をしっかりと掴んでいた。
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