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第25話 マオと発情期*
放課後。ホムラ先輩の部屋でゲーム三昧をしたあと、俺はようやく帰路についていた。
例のレースゲームで、今回ホムラ先輩は事あるごとに逆走してぶっちぎりのビリを連発した。
練習しているはずなのに、前回よりも成績が悪いとはどういうことだろうか。ここまで酷いとある意味才能のような気さえしてくる。
そんなことを考えながら寮の玄関に来たところで、ケツポケットに入れていたスマホが振動した。確認すると、発信元はマオ。
珍しい着信に首を傾げながら電話に出た俺は、電話越しに聞こえてきた嗚咽に息を飲んだ。
『っ……うぅ……えぐ……チ、アキ』
「! にゃんにゃん?」
泣いているのかつっかえつっかえに俺の名を呼ぶマオに、なにかあったのかと心臓が跳ねる。しっかりと声を聴きとろうと慌ててスマホを耳にあてなおす。
『……たすけて……っぐす……』
「どうしたんだ? 今どこ?」
『へや……だけ、ど……』
「寮の部屋にいるの? すぐに向かうから少しだけ待ってて」
居場所を確認すると、電話は繋げたままマオの部屋へ全力疾走した。マオに一体なにがあったのかとひどく不安になりながら部屋の前に辿り着くと、ドアに手をかけ指紋認証で鍵を開錠するとすぐに中へ飛びこんだ。
「っ!」
部屋に入った途端、辺りに立ちこめる甘い香りに眉を寄せる。マオの様子がおかしかった原因は、これか。
充満しているのは完熟したフルーツのような濃厚な香り――マオのフェロモンの匂いだ。おそらくヒートがきたのだろう。
あらかじめ抑制剤を飲んでいてよかった。なにもなくここに飛びこんでいたら理性を吹っとばしていたはずだ。シズクが俺のフロアにきた日から、抑制剤を飲むように習慣づけたことが功を奏した。
部屋の奥へ向かいながらマオを探すと、ベッドの上で布団を被って蹲っている姿を見つける。
「にゃんにゃん?」
「ぁ……チアキ……?」
声をかけると、布団のなかからマオがのそりと顔を覗かせた。その顔は真っ赤に染まり可哀想なくらい涙でぐちゃぐちゃに濡れている。
俺の姿を認めたマオは勢いよく布団を剥ぐとベッドからおりて、足を縺れさせながらこちらへとやってくる。
そのまま倒れるようにして縋りついてきた小さな体を、俺は慌てて受けとめた。
「……っう、……チ、アキ……チアキっ」
「抑制剤は?」
「いつもより……くるの、っはやくて。飲んだの……さっき」
どうやらいつもよりも早い周期で訪れたヒートだったらしく、事前の抑制剤が間に合わなかったようだ。
抑制剤はヒートの前にあらかじめ飲んでおくタイプと、ヒートになったあとで飲むタイプのものがある。
ヒートになったあとで飲むタイプはさらに即効性のあるものとそうでないものにわかれるけれど、即効性のものは強い効力がある代わりに体に負担がかかるため、後者を服用するケースが多い。
マオもこのタイプのものを飲んだようだ。
抱きしめながら宥めるようにそっと背中を撫でると、そんなささやかな接触にもマオはびくびくと体を震わせた。
「うぇ……」
辛いのか、マオはポロポロと大粒の涙を溢す。
「から、だ……熱いよぉ……」
マオは苦しそうに眉を寄せて、熱い吐息を溢すと唇に歯をたてる。俺はそんなマオの口に親指を差し入れると噛むのをやめさせた。
「噛んだら、だめだよ。傷になる」
そう伝えるとマオの膝裏に腕を入れて抱えあげる。そのままベッドに向かうと、そっと体を横たわらせた。
「うう……」
マオはシーツの上で悩ましげに身を捩ると、俺の手を取りしっかりと握りしめてくる。
抑制剤を飲んだのであればいずれ落ち着くだろうが、しかし……。
「どこが熱いの」
「ん……ここの、おく。奥が……あつい」
尋ねるとマオは俺の手を引いて下腹部まで持っていく。そこをゆったりと円を描くように撫でると、マオがぴくぴくと体を震わせながら目を閉じる。
俺はそこから下へ手を滑らせると、ささやかだけれどしっかりと主張しているものへと手を這わせた。
「あっ……ひぁ……!」
服越しに撫でてから部屋着の隙間から手のひらを差し入れ、湿り気を帯びたそれに指を絡みつける。直に触れた途端、マオのものが震えてぴゅくりと白濁を吐きだした。
「ひぅ、ん、……んっ」
濡れた下着をルームパンツごと脱がすと、先ほど放ったばかりのものは露を溢しながらまた頭をもたげていた。
「チア、キ……もっと。もっと、さわって……」
腰をくねらせ、はあはあと熱のこもった吐息を溢しながら、マオが切なげ眉を歪める。そしてその大きな瞳からぽろりと透明の雫を落とした。
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