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第27話 マオと発情期3*
恐る恐る腰が落とされて、マオの潤みきった窄まりに高ぶりきった熱が触れる。途端、弾かれるように離れていくマオの腰を俺は片手で捕らえると、そっと言葉を投げかけた。
「どうしたの。欲しく、ない?」
「……っ」
「大丈夫だよ。怖くないからゆっくり腰をおろして」
マオの耳を甘く噛みながらその背中に優しく手のひらを滑らせると、強ばっていたマオの体から徐々にムダな力が抜けていく。
くちゅりと、張りつめたものの先端が入口に触れた。
「っン」
「うん……そう。上手」
じわじわとやわらかな内壁に包みこまれていく感覚に息を詰めながら、怯えと快楽が入り混じった表情で俺を飲みこもうとするマオに笑いかける。
一度拓いたこともありすんなりと根本まで収まり終えると、俺は労るようにマオの鼻先にキスをした。
それから腰を引き、きゅうきゅうと切なく俺のものを締めつける場所を擦りあげる。
「ひあ……っ」
「にゃんにゃん……」
ぱちゅっぱちゅっと下から突きあげながら薄く色づいたふたつの尖りを親指で捏ねれば、マオのなかがきゅうっと締まった。そこを押しひらくように突きいれて、揺さぶる。
俺のものが奥を叩くたびに、マオが細い首を仰けぞらせて震えた。
「あ……っ、ン……ひぅっ」
「……は」
穿つときの衝撃で、体重の軽いマオの体が持ち上げられては落ち、持ち上げられては落ちを繰り返す。
「んっ、ンんっ」
顔を蕩けさせながら喘ぐマオがとてもかわいい。
もっともっといろんなマオを堪能したくなって、俺はぴたりと突きあげを止めた。急に動かなくなったことを不思議に思ったのか、マオが戸惑いと物足りなさを滲ませながらこちらを見つめてくる。
「チ……アキ……なんで?」
どうして動いてくれないのかと眉を下げるマオに俺はやんわりと微笑むと、耳の奥に息を吹きこむように囁いた。
「にゃんにゃんの好きなように動いていいよ」
「……っ」
こちらからは動く気がないことを伝えると、マオの表情が曇り大きな瞳が切なそうに揺れる。
途方に暮れた様子のマオに少しだけ胸が痛んだが、俺を欲しがるマオが見たくてそのまま黙って成り行きを見守った。
「うう……」
自分から動くことを躊躇いをみせたマオだったけれど、しばらく待っても再開されないことにもどかしさを感じはじめたのか、そろそろと腰を持ち上げる。そして今度はゆっくりと身を沈めた。
初めは恐る恐るだったその行為は、繰り返すうちに段々と大胆になっていく。
「ん……んっ、んぁっ、んう」
ほんのり頬を染めたマオが気持ち良さそうに瞼を閉ざして、一生懸命腰を振っている。そんな本能に忠実な姿もいやらしくてかわいいと思った。
そんな中しきりに俺のものを擦りつけている部分があることに気づくと、俺は唐突に腰を持つ手に力をいれるとそこを狙って穿つ。
「っひゃう!」
「にゃんにゃん……っここ好きだよね」
「あっ、あ……ッ」
「ここ。突いたらなかがきゅうって締めつけてきて、ひくひくする。ホラ」
マオが自分で何度も擦りつけて震えていた場所を下から何度も強めに刺激してやると、マオの体がびくんびくんと大袈裟に跳ねる。
「やっ、だめ……!」
「なにがだめ? 気持ちよくない?」
集中的にそこばかりを責めているとふたりの間に挟まれていたものから熱いものが迸り、腹を汚した。
「んんん……あ! ひぁあッ」
そそり立ったものからトロトロと透明に近いものを吐きだしているマオの気持ちいいところを狙って突きながら、俺もふたたびゴムのなかに吐きだす。
くったりとしてしまったマオの涙で濡れた頬を拭ってやると、そっと抱きしめる。
マオの方からもそろそろと背中に手が回された。だいぶ抑制剤が効いているのか、部屋に来たときに比べ落ち着いているようだ。
俺は中のものを抜くと、放ったものでドロドロになったマオの体を拭いてきれいにした。ひととおり事後処理を済ませると一緒にベッドに横になる。
「にゃんにゃん大丈夫? からだ辛くない?」
顔を覗きこみながら尋ねるとマオは頬を真っ赤にして、どこか拗ねたような様子で視線を落とす。
「にゃんにゃん。……マーオ?」
やんわりと頬を摘むとようやく目を合わせてくれる。
「チアキの……変態すけべばか」
それから口を開いたかと思えば、俺への悪口が飛びだした。耳まで真っ赤にして口をもごもごさせているところを見ると、ただの照れ隠しなのだということはすぐにわかる。
初心なマオの反応がかわいくて、つい顔がにやけてしまう。
「うん。変態すけべばかにもなるよ。にゃんにゃんがかわいいから」
「っ……し、しつこいし」
「もしかして嫌だった?」
その言葉に少し不安になって尋ねると、腕のなかのマオが息を詰めた。この反応にさらに不安を煽られた俺はマオの肩に手をつき、僅かな距離をつくる。
「え? 本当?」
我ながらねちっこい自覚はあったのでまさか引かれたのかと思い血の気が引いた。マオに嫌われたかもしれないと考えて、ひどく狼狽する。
「やっ、ちがう。嫌じゃない!」
そんな俺に、マオが慌てたように否定の言葉を吐いた。それに心底ホッとする。
「本当? ちゃんと気持ちよかった?」
心配になって尋ねると、マオはこれ以上ないというくらい顔を赤く染めて唇を噛んだ。それから僅かに頷く。涙目になって恥ずかしがっている様子が堪らなくかわいくて、ちょっと本気でどうしようかと思ってしまった。
マオへのムラムラした気持ちを抑えこみ、なんとか平常心を保つことに成功する。
「よかった」
ふんわりとしたマオの頬を撫でながらつぶやくと、空いた距離をマオが詰めてきた。そのままぴったりとくっついてこられて俺は胸のときめきがおさまらない。
いちいちかわいいんだよもう。
「今日にゃんにゃんが俺のこと頼ってくれたの、すごく嬉しかった」
「え?」
ヒートがきてΩが群れの|α《リーダー》を頼るの当たり前なのかもしれないけど、やっぱり嬉しいものは嬉しい。
「電話。これからもなにかあったらかけて。むしろなんにもなくてもしていいよ」
マオからならなんでも大歓迎だ。そう伝えると、マオは嬉しさを抑えこむような表情で頷いた。
これからたくさんマオとの時間を過して、もっともっとマオのことを知っていきたい。そうしたらきっと俺はもっとマオのことを好きになるんだろうなと考えて、なんだか幸せな気分になる。
マオも、同じ気持ちだったら嬉しいなと思った。
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