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第33話 ホムラと返事3*

   うっすらと割れた腹に吸いつき舌を這わせれば、ホムラの腰が浮く。俺はそれを両手で掴むと彼の臍の周囲をゆっくりとなぞった。 「っ、チアキ……」 「ん?」 「変なところを舐めるな」  頭を掴まれ、グイと押しやられて顔をあげれば、顔を赤くしたホムラから睨まれる。  ふむ。特に変なことをしたつもりはなかったけど、なぜか怒られてしまい困惑する。どうやら臍の周りはホムラにとって変なところになるらしい。 「嫌?」 「い、嫌というか……」  首を傾げながら尋ねると、ホムラは動揺した様子で言葉を詰まらせる。 「俺はホムラの体ならどこだって舐めたいけど、嫌ならしないね」 「ッ! も……もういい。勝手にしろ」  ホムラは蚊の鳴くような声でつぶやくと、勢いよく外方を向く。じわじわと耳まで赤みを帯びていく様子に、彼が照れていることを知る。  恥ずかしいだけで嫌がられているわけではないようだ。  初な反応に口許を緩めると、ふたたびホムラの肌へ唇を落とす。臍の下にちゅっと吸いつきながらベルトを外し、スラックスの前を開くと、やんわりと膨らんだ場所へ布越しに口づけた。 「……っ」  ピクリと体を揺らすホムラのスラックスに指をかけ、下へずらしながら熱をもったそこを唇で柔らかく食む。  しばらくのあいだ唇と舌で刺激を与えていると、そこはしっかりと芯を持ち、苦しそうに下着を押し上げ存在を主張するまでになった。  俺の唾液とホムラの先走りで染みをつくったそれを、脚に引っかかっていたスラックスと一緒に脱がせてベッドの下へ落とす。  反りあがって先端からとろりと透明の蜜を溢すそれに直に触れると、ホムラの口から小さな声が洩れた。 「気持ちいい?」  手を上下に滑らせながら問いかけるとホムラがぎこちなく首肯く。それに気を良くして、手のなかのものをさらに高めるために集中した。 「……っは、……くぅ……」  熱い吐息を溢しながら頭を振り、もどかしげに背中をしならせるホムラが色っぽい。自身の下腹部にじりじりと熱が集まるのを感じながら眉を寄せる。  俺はおもむろに身を屈めると、ぷくりと露を溢れさせるそこに舌を這わせた。それから熱をもったそれを口内へ沈める。 「うあ……っ」 「ん……」  一般的なサイズよりも大きめのホムラのものを含むのに少しばかり手こずりながらも、なんとか口に収める。それから口をすぼめてゆっくりと唇を滑らせた。  α相手にこんなことをする日がくるなんて、少し前までは思いもよらなかった。正直驚いている。  まあそう言っても、ホムラ以外のαとすることは今も考えられないんだけど。この人が例外なんだ。αなのに、可愛いから。  中性的なΩとはちがって見た目は完璧に雄。なのになんというか、反応とか態度なんかがいちいち可愛い。  口での愛撫だって群れを持っていたなら当たり前のようにしてもらっていたはずだろうに、それにしては反応が初々しいし。どういうことなんだろう。  そんなことを考えながら口と手も使いながら射精を促すようにちゅうっと吸いあげると、低く唸るような声が聞こえたあとにホムラの体がビクビクと震えた。 「っく……ッ!」  俺は口のなかに放たれたものを飲みこむと、はあはあと呼吸を乱しながらくったりとベッドに体を預けるホムラの顔を覗きこむ。 「……チアキ……」  上気した頬。潤んで赤くなった目。とろりと蕩けた表情のホムラの唇が俺の名前をかたどって頭の奥が熱くなる。  一瞬理性がふっとびそうになったのをぐっと堪えて、整った鼻先に軽く唇を落とした。  そんな俺を見上げながらホムラがぽつりと口を開く。 「お前……飲んだ、のか」 「ん? うん。まあ」 「……」  決して美味いものではなかったけどホムラのだし、飲めないことはなかった。なので頷いてみせればホムラの表情がおかしなものになった。 「? どうかした」 「なんでもない」  様子を伺おうと顔を覗きこめば早口で否定され、顔面を手のひらで押しやられる。  そんな彼の様子に疑問符を浮かべながら、顔を押さえるホムラの手をそっと外す。 「なんかダメだった? 俺口でするの初めてだったから気づかない内に変なことしたかな」 「!」 「え? ホントに?」  変なことをしたかと聞いた途端、ホムラが驚いたような表情になってこちらを見たので、まさか本当になにかやらかしてしまったのかと不安になる。 「初めて……?」  しかし、ホムラが引っかかったのは別のことだったらしい。疑るような眼差しを向けられて拍子抜けする。 「あ、そっち? うん。ホムラが初めてだけど」  ぽつりと洩らされたつぶやきを拾い肯定すると、ホムラの表情がぱっと明るくなりそわそわと落ち着かなくなった。どうしたんだろうと様子を観察していると、ホムラが気を取り直したように口を開く。 「べ、別におかしなことは何もなかった」 「本当?」 「……多分」 「多分?」 「う……いや。本当はよく、覚えてない。お、お前が俺のものを咥えてると思ったら……もう、訳がわからなくなっていたし」 「……」  つまりホムラは、上手い下手は関係なくて俺がしてると思っただけで気持ちよくなっちゃったということか。  まじか……。  たどたどしく俺の問いに答えたホムラは、恥ずかしいのかうろうろと視線をさまよわせている。さっき達したばかりのためかどこか気怠るげな雰囲気も、えろい。  あ、やばい。これはやばい。  ――――すごく可愛い。  さっき我慢したはずの衝動が振り返してきて、俺は握り拳をつくった。  

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