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第34話 ホムラと返事4*
俺はベッドサイドにあるチェストから目的のものを手に取ると、ホムラに口づける。何度か啄むと手を引いて膝立ちになってもらい、また唇を合わせた。
ここまでホムラは、黙ってこちらのしたいようにさせてくれている。
ただその表情はむず痒い何かを耐えるようなもので、おそらく、慣れないこの状況を必死に受けとめているのだろう。
俺の群れに入ることを決めてくれた。そして受け入れようとしてくれている彼に、くすぐったい気持ちになる。
「ホムラ」
名前を口にするとぎゅっと閉じられていた瞼から力が抜けて、丸い瞳がこちらを映した。
「? なんだ」
それに口元を緩めると、潤滑剤をたっぷりと纏わせた中指を双丘のあいだに滑らせ、奥にある固く閉ざされたすぼまりに触れる。
「……っ」
「今から指、入れるね」
耳のすぐそばでホムラが息を詰める気配がした。身を固くさせる彼の強ばりをほどくように、俺は空いたもう片方の手で背中を撫でる。
ゆるゆると宥めるように手のひらを滑らせながら、そっと唇を塞いだ。今度は触れるだけじゃなく、舌を潜らせてホムラの弱いところを舌先で擽る。
「んん……ぅ」
ぬるぬると滑りのいい指先できつく閉じた入口を撫で解し、潤ったそこへゆっくりと指を埋めこんだ。
「ふ……っく」
くぐもった声を洩らしながら眉間に皺を刻むホムラに、俺は背中を上下させる手の動きは止めないまま唇を離す。
「痛くない? 大丈夫?」
「はぁ……問題、ない」
ホムラは詰めていた息を吐きながら何度か首を縦に振ると、俺の二の腕を掴む手に力をこめた。
違和感はありそうだけど痛みを感じているわけではない様子に、少しだけ安堵する。今のところは大丈夫だと判断して、中に埋めた指をさらに奥へと沈ませた。
「う……」
「ちゃんと馴染ませないとつらいから、少しだけ我慢してね」
さすがに締めつけがきつい。だけど潤滑剤のおかげで出し入れは思ったよりもスムーズにできる。きゅう、と指を食むホムラの内壁は狭いけど、たくさん慣らせば問題ないだろう。
そんなことを考えながら指をフック状に曲げて、伸ばしてということを繰り返し、丁寧に解していく。
時々潤滑剤を足しながら時間をかけて溶かすと、やわらかくほどけた中はかき混ぜるたびにプチュプチュと厭らしい音をたてるまでになった。
ここまできてようやく指の数を三本に増やす。
「く……っ、ぁ」
「ホムラの中だいぶ柔らかくなってきてるよ。ホラ……わかる?」
「ぅう……っは」
沈めた指たちをバラバラに動かすと唇を噛んだホムラが頭を左右に振り、腰を揺らめかせる。
「けど、もう少しかな?」
「っチアキ。も、いい……いいから、入れろ……っ」
まだ解し足りないと口にした途端、絞りだすような声で訴えられる。それに面食らいながらも興奮ぎみのホムラを宥めた。
「え、まだダメだよ。αはこういう面ではΩよりもデリケートにできているんだから、慎重にいかないと」
「……っ」
「ホムラ?」
唇を引き結び視線を逸らすホムラに、どうしたのかと心配になる。
――あ、もしかして恥ずかしいのか。だとしても、準備を中途半端にするわけにはいかない。
そこはなんとか頑張ってもらわないと。もしどうしても堪えられないんだったら今日はここで終わりにして、これから少しずつ慣れていってもらうしかない。
どうするのがベストなのかとホムラをじっと観察していると、肩口に控えめに額が擦りつけられる。
「もう……っじれったい」
そう言って堪えるように唇を噛んだホムラが、吐息のような掠れた声でつぶやく。
「早く、お前と繋がりたい」
「!」
その言葉に、目を限界まで見開いてホムラを凝視する。衝撃的な内容に数秒のあいだ呼吸をするのを忘れた。息が苦しくなって我に返ると、頬が痛いくらいに熱を帯びている。
ホムラからそんな言葉が聞けるなんてまったくの予想外で、狼狽えた。
う、嬉しい。嬉しすぎるけど準備はちゃんとしないとだめだ。ホムラの体を傷つけたくないし、最初に嫌な思い出なんて絶対残したくない。
「俺も、早くホムラの中を俺でいっぱいにしたいよ」
「!」
「だけどふたりで気持ちよくなりたいから、もう少しだけ我慢しよう?」
「ふたり、で……」
「うん。俺、あんまり上手くないかもしれないけど、ホムラが気持ちよくなれるように頑張るから。ホムラも協力してくれたら嬉しい」
「わ、かった」
「ありがとう」
ぎこちなく頷くホムラに、なんとか納得してもらえたようでホッとする。それからホムラが俺を受け入れるための準備を再開した。
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