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第35話 ホムラと返事5*
内側から何度も広げて出し入れして、指三本も難なく受け入れられるくらいにまでなってからようやくホムラの中から指を引き抜く。
「っ……ぁ」
小さく声を洩らし肩で息をしている腕の中のひとに口づけてから、片手で肩を支えながらベッドに体を倒す。
熱っぽい視線が絡んで、薄く開いた唇をそっと塞いだ。
舌を絡め合いながら前を寛げると、痛いくらいに張りつめたものを取り出し、時間をかけて柔らかく蕩けさせた場所に押し当てる。先走りを滲ませた先端がとろとろになったソコに触れて粘着質な音をたてた。
「ん」
「……んぁっ……」
丁寧に丁寧に受け入れる準備を整えた柔らかな壁が、俺のものをゆっくりと飲みこんでいく。強ばりをほどくように口のなかを優しく吸いながら、じわじわと腰を押し進めた。
「く、んッ」
根元まで納め終えると唇を離し、呼吸を整えながらホムラの頬をさらりと撫でる。
「ん、ホムラ……上手だよ」
上手に飲みこめたことを褒めると、きゅうっと中が締めつけられた。時折締めつけがあるものの、ホムラが体に入る力を逃がそうと頑張ってくれているためか痛みはない。
「チア、キ……」
「動いても大丈夫そう?」
「っ、ああ……」
コクリと頷いたホムラに、俺はそっと腰を引くと次にはゆっくりと中へ押し入る。それを繰り返していると何度めかでホムラが反応するポイントを見つけた。そこを集中的に狙って擦りつけていると、段々彼の声に甘さが滲んでいく。
「あ……っ、あ……」
「声かわい……ここ気持ちいい?」
「ッば! ……ンっ」
「あ、なんで口塞ぐの」
せっかく可愛い声だったのに、手首を噛んで声を堪えるホムラにガッカリする。ホムラの可愛い声なんてこんなときでもない限りまず聞けないのに。もったいない。
「そんなに強く噛んだら傷になるよ」
ホムラの手首に上から唇を落として、やんわりと窘める。すると、不満げな視線を向けられながらも腕を外すことに抵抗はされなかった。
「……」
「ホムラの声聞きたい。ここにいるの、俺とホムラだけだよ。聞いてるの俺だけだから。それでもダメ?」
「っ、ふぅ……ン」
言いながらゆっくりと中を突きあげると、ホムラが息を乱しながら弱々しく首を横に振る。
それに残念な気持ちになりながらも、仕方がないと一旦諦めることにした。俺の群れに入ったとはいえ、ホムラはαだ。可愛いと言われることに少なからず抵抗があるのかもしれない。これから長く付き合っていく予定だし、焦らず慣れるのを待つことにしよう。
そう決めるとホムラの中が自分のものに馴染んできたことを確認して、段々と打ちこむペースをあげる。
「んッ、ん、んぅ……っ」
「……っホムラ……」
こちらの突きあげにあわせてホムラの内壁が蠢いて、俺のものを絞るような動きをした。
ホムラの眉がぎゅうっと寄せられて、目元は赤みを帯びて、口からは熱い吐息が溢される。晒された男らしい喉のラインも色っぽくてかわいい。
その姿にも、ちょっとした仕草にも、ひどく煽られた。
堪らなくなって腰を打ちつける動きが少し乱暴なものになってしまう。それにホムラが堪えきれないとばかりに、それまで抑えていたものを開放した。
「あ、ァ……っ! 待て、……チアキっ」
俺のものが奥を叩くと、ホムラが体を震わせながら身を捩る。薄く筋肉が浮かぶ腹に白い飛沫が散った。
それを見下ろしながら腰を使い、びくびくと痙攣している内壁をさらに擦りあげる。
「ホムラ……っ俺も、もうイきそ……」
「……ッ……」
「中に……いい?」
中を穿ちながら限界を訴え、ホムラの下腹部をそっと撫でる。
「ン……っ!」
すると、ホムラの体が大きくビクリと揺れた。目を合わせると、いつもは鋭く強い意志を滲ませた瞳が薄く膜を張り、赤く潤んでいる。ホムラは俺の問いに何度か頷くと目尻からポロリと涙を零した。
ぐっと腰を掴む手に力をこめ、ホムラの中に熱を吐きだす。
「……っく」
「っふぅ……」
部屋にはしばらくのあいだ、二人分の荒い呼吸音だけが響いていた。俺は力を抜いてホムラの上に覆い被さると、ゆっくりと呼吸を調える。
「はー……」
深呼吸をしたあとに顔をあげると、くったりとしてベッドに体を預けているホムラにキスをした。
「かわいかった」
「……」
正直な気持ちを口にするとなぜか頬を軽く叩かれて、外方を向かれる。
「ホムラ?」
「疲れた。……お前ねちっこいし」
不貞腐れたように言うホムラがなんだか幼く見えて、思わず口もとが緩む。
「ねちっこいの、嫌だった? もう俺としたくない?」
「……ッ」
「俺はホムラとしたのすごく気持ちよかったよ。またしたい」
上からじわじわと赤く染まるホムラの顔を見下ろしながら、まだ埋めこんだままのソレをゆるく注挿させる。
「っン、……バカ、待て」
「うん」
制止されてそれを聞き入れると、ひどく驚いた表情で見返される。こちらが素直に従ったことが意外だったのだろうか。
確かにもっとしたい気持ちはあるけど、酷く疲れた様子のホムラに無理強いするつもりはなかった。
「……」
「なに?」
「別に、したいならすればいいだろ」
「ホムラはもっとしたい?」
「!」
ホムラがしたいならもう一回しよう、と耳もとでつぶやくと、目に見えて体が硬直した。戸惑いを全面に押し出しているその様子に少し意地が悪かったかなあと思いながらも、助け船はださない。
黙って返答を待っていると、こくりと喉が鳴る音がしてからホムラの唇が薄く開いた。その口から吐息に近いような声がポツリと溢される。
「し……たい」
「……」
羞恥に堪えながら伝えられたのだろう答えに、俺は息を詰まらせた。
――――その後の記憶は少し曖昧だ。ただホムラが可愛かったことだけはよく覚えている。
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