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番外編 うなじ

*ホムラといちゃいちゃ  最近ホムラの様子がおかしい……気がする。  ふとしたときに物言いたげな視線を感じて、なにか用があるのかと思えばなんでもないと返される。それが一度ではなく何度か続くと、正直なにかあるとしか思えない。  もしかして言い出しにくいことなのだろうか?  一度ちゃんと、二人で話してみようと思った。  そういう理由から今日はムギに断り、ホムラと昼食をとることにした。  雨が降っているため、屋上ではなく屋上に繋がる階段に二人並んで座る。他愛のない話をしながら弁当をたいらげて、ひと息ついたところで話をきりだした。 「ホムラ」 「なんだ?」  上機嫌で返事をするホムラに口元が緩む。いつも昼はムギととっているから、こうやってホムラと昼を過ごすのは初めてだ。  こんなふうにわかりやすく喜んでもらえると少し申し訳ない気すらする。 「なにか悩みごとがあるの?」  遠回しに聞いても答えてくれない気がしたので回りくどい聞き方はせず、単刀直入に聞く。 「……っ、は? なんで」  それにあきらかに動揺したそぶりをみせるホムラに、やはりなにかあるのだと確信した。 「最近よく物言いたげな目で俺のこと見てるよね」 「……う……っ」  図星なのか、ホムラの眉間にぐうっと皺が寄って唇が引き結ばれる。もうひと押し必要だと感じて、さらに深く踏みこんだ。 「俺のことでなにか悩みごと?」 「それは……」  ホムラはなにかを言おうか言うまいか葛藤をしている様子だった。やけに言いにくそうに口ごもるホムラに、そんなに重たい話なのかと段々不安になってくる。  まさか群れを抜けたい――――なんて話じゃないよな?  ホムラはαだし、やはり群れを持つ側に戻りたいなんて言われたら泣くかもしれない。いや、もしそう言われたとしても止めるし、説得するけど。  どんなことを言われるのかと覚悟をして返事を待っていると、観念したらしいホムラが深刻な面持ちで口を開く。 「…………噛みたいん、だ」 「え?」 「チアキの項を噛みたい」  噛みたい? ――――俺の項を?  想像していたものとはまったくちがう方向の話に拍子抜けする。 「そうなの? いいよ」  俺はαだから、αを誘うΩのフェロモンなんてものはもちろん出ていないわけで、なぜ俺の項を噛みたいのかは少々疑問には思うけども。ホムラが噛みたいのなら噛めばいいと思うほどにはホムラのことが好きなので、了承した。  あっさりと受け入れたことが意外だったのか、ホムラがびっくり眼でこちらを凝視する。 「は?」 「だから。いいよ」  なにをそんなに驚いているのか。 「お前は……嫌じゃないのか」 「? なんで」 「Ωがされるような扱いを受けるんだぞ。普通は抵抗があるだろう」  お前はαなんだからと続けられて、そういう考え方もあるなと納得する。  つまりホムラは俺の項を噛みたくて仕方がなかったけど、俺が嫌がると思って言い出せずにいたってことか。そういうことならもっと早く聞きだせばよかった。  悩ませてしまったことを可哀想に思う。 「俺は特に気にしないけど。ホムラが嫌じゃなかったら噛み合いっこする?」  そういうのもいいかもしれないと提案すると、ホムラは嬉しいのを我慢するような表情で頷いた。  ……かわいい。 「あ、でも血が出るくらい噛むのは禁止な」 「分かった」  そこまでは求めていないと返されて安堵する。 「今噛む?」  襟足を掻きあげてホムラに背中を向けると後ろで息を飲む気配がして、ホムラの動揺した声が耳に届く。 「っ今!?」 「帰ってからでもいいよ」  そんなに我慢してたなら早い方がいいかと思ったんだけど、唐突すぎたか。ちらりとホムラの方を振り返ると、じんわりと頬を染めたホムラが俺の項を見つめていた。 「い、今がいい……」 「どうぞ」  素直なホムラに顔を緩めながら項を差しだすと、ホムラの両手が後ろから腹に回される。それから項に吐息を感じたかと思うと、そっと歯を立てられた。 「ん……」  擽ったさに思わず小さく笑ってしまう。  じわじわと力をこめられて皮膚に歯が食いこむ。ちょっと痛いかもしれない、というくらいで止まって、そのままやわやわと噛まれた。  そうやってホムラが満足するまでしばらく好きなようにさせたあと、交替する。 「次は俺の番ね」  目の前にさらけだされた項は緊張しているのかほんのり赤くて、色っぽかった。  舌を伸ばして、うっとりするほど綺麗なその場所をそっと下から上に辿る。  ぴくりとホムラの肩が跳ねてどこか恨めしそうな視線を向けられたけど、腹に回した腕に力をこめてホムラの皮膚に歯を立てた。 「っふ……」  ふるりと震える体を抱き締めながら、そこを何度も甘噛みする。  あ、これ結構楽しいかもしれない。  

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