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番外編 うなじ2*

   俺が舐めたり歯を立てたりする度に反応するホムラがかわいくて、顔が緩んだまま戻らなくなる。  皮膚を食んで、舐めて、吸ってと繰り返していると、ホムラの腹に回していた腕に爪をたてられた。 「チ、アキ」 「ん?」 「……長い」 「ああごめん。予想以上にホムラの項が魅力的で、つい」  窘められて唇を離す。  傷つけたり痛みを与えることはあまり好きではないから、ホムラのように歯形をつけたいという欲求は芽生えなかったけど、痕を残すことには夢中になってしまった。  首筋に散らばる鬱血を視線で辿りながら密かに満足する。  ホムラはαなのに、俺を引き寄せるフェロモンか何かが出ているんじゃないかと思うほど、気がつけば吸い寄せられた。  鼻先をすり、とホムラの首筋に擦りつけてその肩に顎を乗せる。それから無駄な肉がいっさいついていない引き締まった腹に、円を描くように手のひらを滑らせた。 「……っ」  すぐ近くで息を飲む気配がして、首を傾げる。体を離してよくよく観察するとホムラの耳が赤く熱をもっていることに気がつく。  後ろから顔を覗きこむようにしながら、俺は下腹部から臍の上までを指先でつうっと撫であげた。すると、ホムラの体が大袈裟に揺れる。 「ホムラ」  名前を呼びながら彼の脚の間に手のひらを滑りこませると、ゆるく主張したものが指先に触れる。 「っ!」 「硬くなってるけど、吸われるの気持ちよかった?」 「なっ。ちょっと待、て」  熱くなっている手のなかのものをやんわりと揉みしだくと、先ほどよりも質量が増して、ホムラが慌てたような声をあげた。 「うん?」 「……っ、う」  小さく呻いたホムラがこちらを睨むようにして振り向く。瞳にはうっすらと涙の膜が張っていて、その色っぽさにときめいてしまう。ホムラは本当に、格好いいのに綺麗でかわいい。 「俺のせいでこうなったんだよね。責任とってちゃんと手伝うから、直接触ってもいい?」 「……ッ……」  尋ねると、眉間に皺をきざんだホムラが躊躇いがちに頷いて、俺は口の端を緩めるとホムラのスラックスの前を寛げた。  それから手のひらを中へ潜りこませて、立ち上がったものに触れる。 「……は、」 「ホムラ……」  なかなかの質量のあるホムラのものを手の中で丹念に愛撫して、さらに育てあげる。潤んで蜜を溢す先っぽを指で弄りながら、息を乱すホムラの頬に手を添えると、薄く開いた唇に口づけた。 「……ふ、う……っ」  唇を啄みながらも追い上げる手の動きは止めずにいると、ホムラの体が震えて感じ入ったように眉根が寄せられる。  同時に、温かなものが俺の手のひらを濡らした。  ホムラの強ばった体から力が抜けて、こちらに体重が預けられる。それを受けとめながら、熱のこもった吐息を洩らすホムラの項に口づける。  そうしていると突然ホムラが勢いよく振り返った。   「!」  驚いている間に、完全にこちらに向き直ったホムラに押し倒されてしまう。驚いているとホムラの手が俺のものの形を確かめるように触れてきた。 「これは、俺のせいで、勃っているんだよな?」  上から、とてもいい笑顔で尋ねられる。 「責任をとってやる」 「待って。俺のことはいいから」  俺のスラックスの前を寛げようとするホムラに慌てて制止の言葉を投げかけた。とてもありがたいというか嬉しい申し出ではあったけれど、だがそれを受け入れるわけにはいかない。 「は? なぜだ」  この返答が気に食わなかったらしいホムラが、若干イラついたように鋭い視線を向けてくる。  それに俺はなんと返そうかと悩んだあと、そのままの事実を伝えることにした。 「今ホムラに触られたら、我慢できなくなる」  こんないつ誰が来るかもわからない、しかも階段なんて場所で事に及ぶのは避けたかった。だけどホムラに触られたら間違いなく箍が外れて手を出す自信がある。だからだめだ。   「じゃあ我慢なんてしなきゃいい」  あっさりと返すホムラに、俺は首を左右に振る。 「ホムラの負担になるだろ」  元々受け入れるようにはできていない体を、無理な形で開かせることになる。必要以上の痛みは与えたくなかった。  本音を言ってしまうと、こんな魅力的な状況を我慢しなければならないのはとても残念なんだけど、致し方がない。己の欲よりホムラの体の方が大事だ。 「いい。負担になんかならない」 「なるよ。だめだって」  なぜかムキになって食い下がってくるホムラから、顔を背ける。やばい。かわいい。どうしよう。 「ならねえよ。最近は……」  それまではハッキリと話していたホムラが言い淀む。それにちらりと目を向けると、こちらとは別方向に視線を落としたホムラがぼそぼそと小さな声で何事かをつぶやく。 「え?」  よく聞きとれなくて聞き返すと、耳まで赤く染めたホムラが鋭い眼差しでこちらを見下して、どこかやけくそになったように口を開いた。 「慣らしてる」  想像もしていなかったことがホムラの口からとびだして、目を白黒させる。  慣ら……? え?  

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