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番外編 うなじ3*
「お前は毎回慎重になりすぎだ。いい加減焦れったいんだよ」
不服そうに洩らされた内容にぽかんと口を開く。まさかの告白だ。呆然としながら、こちらに覆い被さっているホムラの顔を凝視する。
「なんだ」
そうしていると何か文句があるのかとばかりに軽く睨まれて、俺は唇を引き結ぶ。それから顔を隠すようにホムラの肩に額を擦りつけた。
やばい。やばい、顔がにやける。
俺を受け入れるためにそこまでしてくれていたことに感激してしまう。
「チアキ?」
「うんごめん。ちょっと心臓への負担が半端なくて」
「はあ? なんだって?」
意味がわからないとばかりに聞き返されたけど、俺は緩みきった顔面を整えることと平常心を取り戻すことに必死で、答える余裕がない。
―――ああけど、平常心なんてとても無理だった。
「ホムラ」
「なんだよ」
「確かめてもいい?」
思わず真顔で尋ねると、ホムラが目を瞠る。
少しばかり食いぎみに変態くさいことを尋ねてしまい、引かれたかもしれないと内心冷や汗をかいたけど、ホムラは一呼吸後にぎこちなく頷いてくれた。
自分で慣らしているなんて大胆なことを言うわりに、こういう反応をするところがかわいいと思う。
「じゃあ立って、そこの壁に向かい合うように手をついてもらってもいい?」
「……これで、いいのか?」
「うん」
椅子代わりにしていた階段から下りると、ホムラは素直に両手を壁につく。そして後ろに立つ俺を振り返った。
そんなホムラの様子に口許を緩めると、引き締まった腹の前へ腕を回す。それから手を滑らせて、すでに寛げられていたスラックスをボクサーと一緒に下へと落とした。
「っ」
露になったのは、程よく筋肉のついた惚れ惚れするくらい長い脚で。芸術品のようなそれに思わず見蕩れてしまう。
「……チアキ?」
目を奪われていると、どこか心許ない表情をしたホムラに名前を呼ばれる。
いつもの自信満々のホムラも好きだけど、こういう顔もとてもかわいくてそそられてしまう。
頬に手を添えると、自分よりも少しだけ高いところにある唇に口づけた。
「ん……」
感触を楽しむように何度も啄んでいると、焦れったそうに唇を甘噛みされる。目を開けば余裕なくこちらを求めてくるホムラの顔が飛びこんできて、口づけを深くした。
「……、っは……」
息が上がるほど幾度となくお互いのものを絡めあって、唾液の交換をして。口から蕩けそうなほど触れあった。
呼吸を乱しながら酸素を取りこむホムラの唇の端から互いの混じりあったものが溢れる。
俺がそれを舐めとると、目許を赤く染めたホムラの肩がぴくりと震えた。その色っぽい姿に、体の芯が熱くなる。
もっともっとかわいい姿が見たい。
先ほどからちらちらとカッターシャツの下から覗く、引き締まった臀部。その間にそっとぬめりを帯びさせた指を指しこむと、辿り着いた場所を指の腹でやんわりと押す。
「……っ……」
ひくり、とかわいらしい反応をくれるそこに柔らかい笑みを浮かべると、息を詰めるホムラの頬に宥めるようなキスをしてから中指をゆっくりと中へ埋めこんだ。
「……う」
ぎゅうっと形のいい眉が寄せられて、熱のこもった吐息が血色のいい唇から溢れる。そんなホムラの表情を観察しながら、根本まで指を収めきる。
「本当だ。前のときよりも少し、やわらかくなってる」
言いながら中を確かめるように動かして、ゆったりと出し入れを繰り返す。
「ふ……、く」
「苦しくない?」
「っ」
言葉にならないのか恥ずかしいのか、ホムラは無言で壁に拳を押しあてながら肯定する。
「指、増やすね」
ホムラの返答に、一度抜いてから本数を増やし、再度中へと指を埋めこむ。ホムラの中は指二本も難なく収めることができた。
「ん……くぅ」
内壁を擦りあげると、こちらの動きを押さえこむようにきゅうっと指が締めつけられる。
「ホムラ。そんなに締めつけたら解せないよ」
力を抜くように促せば、強ばったからだからそろそろと力が抜けていく。
「うん――上手」
「ンっ」
後頭部に口づけて、褒めるようにホムラの弱い場所を刺激する。途端、僅かにだけど声に甘さが帯びた。喉をのけぞらせるホムラをもっと乱れさせたくなって、そこばかりを集中的に狙う。
「くっ……あ、チア……キ、待てっ」
「ごめん待てない」
「!?」
「俺のことを煽って止まれなくさせたのはホムラだよ。ちゃんと責任とって」
「っ」
「ここ。好きじゃない? 中、ひくひくして気持ちよさそうにしてる」
熱を帯びたホムラの耳を食みながら、指二本を使って執拗にそこを擦りあげる。蕩けてやわらかくなった場所は、三本めの指も無理なく咥えこんだ。
このままどろどろに溶かしてしまいたいと考えていたら、真っ白になるほど強く拳を握りしめたホムラが口を開いた。
「う……、あっ、だめだ……っ」
「ん?」
「ゆ、びじゃ……嫌だ。……いきたくない」
「……」
お前のがいい。と続けられて、この一言で俺に僅かにあった余裕は全部吹っとんだ。
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