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番外編 うなじ4*
ホムラの片足を持ち上げ、唇を塞ぎながら熱く滾ったものを中へと打ちこむ。
「っンう!」
ぱちんっと肉同士がぶつかる音がして、壁に背中を預けていたホムラの体が大きく仰け反った。同時に、柔らかな内壁が俺のものに絡みつき、きゅんと締めつけてくる。
腰を引いてもう一度突き入れると、そのまま激しく中を揺さぶった。余裕がなくてどうしても荒っぽくなってしまう。
「んっ、む、んん……っ」
結合部から断続的に響く濡れた音。
唇を離して目を開くと、きつく瞼を閉ざしたホムラが色っぽく頬を上気させていて、突き上げにあわせて吐息を短く溢していた。
赤く染まった唇は俺のものでてらりと濡れていて、いやらしい。
「ホムラ、ホムラ……」
どうしよう。次から次に煽られる。
こうやって繋がるのはまだ数えられるほどだけど、初めはあんなに拒んでいたところが、回数を重ねるごとにだんだんと俺を受け入れてくれているのが感じとれた。
めいいっぱいに広がって、俺のものを頬ばっている。
健気で、愛おしい。
もっともっとホムラを俺のものにしたくて、己の形を覚えこませるよう、丹念に丹念に注挿を繰り返す。
「うあっ、ぁ……っ」
中を擦りあげる度に、甘さを帯びた声がホムラの唇から溢れる。
かわいい声をたくさん聴きたくて、俺は抱えあげていたホムラの片足を持ち直すと、下からねっとりと腰を使った。
「んん……っ」
「ホムラが欲しがっていたの。いっぱいあげるね……」
はっ、はっと息を乱しながら、耳元で囁く。
突き上げる度に中がうねって、きゅうきゅうに締めつけてくる。熱くて、蕩けそうなほど気持ちがいい。
「ホムラ……ホムラも気持ちいい?」
「ふう……、ンっ」
問いかけると、羞恥に堪えるかのように眉根を寄せたホムラが、何度も小さく頷いた。そうして、こちらの動きにあわせて腰を前後に揺らめかせる。
「……っは、ん。チアキ……」
もどかしそうに俺のものを食みながら求めてくるホムラに、頬が緩む。
普段はαらしく、堂々とした姿をみせているというのに、今は想像もつかないほどかわいらしく蕩けた姿を晒している。そのギャップが俺の心を酷く揺さぶった。
ホムラのこんなかわいい姿を見られるのは俺だけだ。そう思うと堪らない。
「もっと?」
「く……っ、ンッ」
腰を打ちつけて、これまでのなかで一番深くホムラ中を暴く。
勢いをつけて下から何度も激しく突き上げる。ぱちんぱちんと奥を叩く度に、ホムラのものが揺れて、先端から蜜が滴った。
「チ、アキ……っ、んぅ、っあ!」
奥を突かれるのが堪らないのか、ホムラがびくびくと体を痙攣させる。それから張りつめていた前が弾けて白い飛沫が散った。
達したことで、ホムラの中が脈動を繰り返す。俺のものを搾り取るような動きをする内壁に、俺も限界が近くなる。
絡みついてくる中を前後しながら、ホムラの首筋を甘噛みした。
「ホムラ……このまま、ホムラの中でイってもいい?」
「ふ……っ」
こんな場所だし、本当は外に出した方がいいことはわかっていた。だけどどうしてもホムラの中に出したくて、尋ねる。
するとホムラが俺を引き留めるように肩に両手を回してきた。
「……だ、せよ」
掠れるような声で、欲しいとねだられたら、もう理性なんて意味のないものになる。
痙攣している中を味わうように行き来したあと、最奥へと突き入れる。
「っは、あっ、あ……っ!」
そのままホムラの中に熱を解放した。
奥に最後までたっぷりと注ぎこんだあと、柔らかな内壁に包まれた俺のものはすぐに硬さを取り戻す。
ホムラとこういうことになって、一度で治まらないことは初めからわかっていた。歯止めがきかないことも。だから、我慢していたんだけど。
腰を前後させると濡れきった中からくちゅくちゅと音がして、うっとりと溜め息をつく。
「やらしい音してる」
「く……っん」
腰を回して中を掻き混ぜると、感じるのかホムラの腰がぴくんぴくんと跳ねる。
かわいい。
ちゅ、と唇に触れるだけの口づけをすると、中のものをゆっくりと引き抜く。
「……っぁ」
それだけの行為にも敏感に反応をするホムラに、ふたたび口づける。
今度は触れあうだけじゃなく、唇を割り開いて舌を絡めとった。戸惑うような素振りをみせながらも応えてくれるホムラに、きゅんと胸が高鳴る。
名残り惜しく思いながらも唇を離すと、どこか戸惑ったようなホムラの切れ長な瞳と視線が合った。
「……もう、しない、のか」
「足りない?」
「っ!」
ちょっとした意地悪心で問い返すと、ホムラが唇を噛み締める。
「ごめん。意地悪した」
宥めるように頬を撫でると、恨めしそうな表情で睨まれる。そのあと、拗ねたように顔を逸らされてしまう。
「あんなに煽られたのに、俺だって一度じゃ全然足りない。何度だってホムラの中に入って、中を俺でいっぱいにして、たくさん突いて、気持ちよくさせたい」
「……ッば、」
俺の言葉に顔を真っ赤にして言葉を失うホムラ。それに口元を緩める。
「嫌?」
「お前はもう……黙れ」
ホムラはどこか怒ったようにそれだけ言うと、唇を合わせてくる。しばらくお互いの唇を吸い合い、唇を離す。
「後ろ、向ける?」
問いかけると、ホムラが躊躇いがちにこちらに背を向けて壁に手をついた。俺はホムラの腰を引き寄せて、とろとろに解けた場所に高ぶったものをそっと押しあてる。
「っふ……ぅ、く……」
柔らかな内部が、濡れた音をたてながら根元まで飲みこんでいく。まるで引きこむような動きをするその場所に、早く欲しいとねだられているような気分になる。
「ホムラ……」
腰を掴んだまま、緩やかに中を擦りあげる。同時にホムラのうなじに唇を寄せて軽く歯を立てた。
少しずつ中を穿つ速度を上げながら、ちゅくちゅくと皮膚を吸いあげる。そうすると弱いのか、ホムラの体が快感に堪えるようにぴくぴくと震えた。
反応がかわいくて堪らない。
ホムラとこうしていると心が満たされて、いつまでもこうやっていたいと思う。
「チア、キ……っ」
ひときわ強くうなじを吸いあげたのとほぼ同時に、ホムラの前が放たれる。甘く蠢く内部に、俺も引っぱられるようにして二度目の精を吐き出した。
後始末を終えて衣服を調えると、階段に腰をおろして後ろからホムラを抱き締める。
「体、痛くない?」
無理をさせてしまった自覚はあった。やりすぎたことを反省しながら尋ねると、ホムラは前を向いたまま素っ気なく「なんともない」と答える。
「……それよりも暑いな」
動いて体温があがったのか、ホムラの頬と耳はうっすらと赤くなっていた。前髪のあたりもほんのりと汗をかいている。確かに少し暑そうだ。
「離れようか?」
俺としてはもう少しこうやってくっついていたいんだけど、ホムラが嫌なら仕方がない。
名残り惜しく思いながらもぴったりとくっつけていた体を離すと、追いかけるように背中が倒れてきて、体重を預けられる。
「いい。そうやってろ」
「いいの?」
「……構わないと言っているだろ」
「うん、わかった。そしたらこのままでいる」
立ち上がりかけていた体勢を元に戻して、俺よりも少しばかり体格のよいホムラの体を腕に抱きなおす。
そういえば、最近新しく学園の自販機にホムラの好きなジュースが入ってたな。あれ俺も飲んでみたけど、果肉がぷちぷちしておいしかった。
「じゃああとで冷たいみかんジュース買ってこう。粒々のやつ」
そう提案すると、俺にぴったりと背中を預けていたホムラから、かすかに笑う気配が伝わってきた。
「ああ。そうだな……もう少ししたらな」
――――予鈴の鳴る音を聴きながら、まだ離れたくないなあと思った。
おわり
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