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if番外編 ハーレムを築けなかったら3
3.きもちわるい
「最近のお前、なんか気持ち悪いんだけど」
いつものように授業のあいだの休み時間にβクラスを訪れていた俺は、突如幼馴染みから暴言を吐かれた。
「え、どのあたりが?」
気持ち悪いという言葉が心外で驚いて聞き返すと、元毅が嫌そうに顔を歪める。
「人が漫画読んでるところをにこにこしながら観察してくるとことか、なんか異様に距離詰めてくるとことか。全部だよ」
指摘されたのはまったく無意識のことだった。
「……そうだっけ?」
俺が遊びにきても元毅は基本的に漫画本を読んでいることが多い。そのことに特に不満はなくて、俺は俺で自由に過ごしている。
話しかけたいときは話しかけるし、一緒に漫画読むこともあるし、ダラダラしてるだけのときもある。
ただそういえば最近はそういったことよりも、元毅の様子に目がいっているような気がしなくもない。
言われてみれば、距離も近いのかもしれない。元毅の傍がなんとなく落ち着くのだ。
「あとβクラスに来る頻度増えてないか?」
「あーそう、かも……?」
それも、言われてみればと納得する。なんとなく顔が見たいなと思ったら自然と足がこちらに向いていた。
「なんか元毅に会いたくなるんだよね」
素直に思ったことを伝えると、元毅が持っていた漫画を取り落とした。
「は!?」
なぜか動揺している元毅をまばたきをしながら見つめていると、手のひらでぐいっと頬を押しやられあっちを向かされる。
「いた、痛い。首から変な音がした」
手首を掴んで顔から離すと、再度視界に入ってきた元毅は顔を真っ赤に染めていた。それに今度はこちらの手が伸びる。
「なに珍しい。照れてんの? かわいい」
珍しく照れた様子の幼馴染みに口元が緩む。
頬を撫でながらつぶやくと、虫でも叩くような勢いで手を打ち落とされた。乾いた音が教室中に響いて、周りにいたベータたちの視線が一瞬でこちらに集中する。
「かわ……って、ばっかじゃねーの!」
勢い余って立ちあがった元毅をぽかんと見上げる。腹をたてているらしいけど全然怖くはない。むしろ、あれ? こんなにかわいかったっけと首を捻る程度にかわいく見える。
けれどこれ以上興奮させるとやっかいなので、宥めることにした。
「うん、そうかもしれない。取り敢えず座ろっか?」
ちらと周りに視線をやると、注目されていることに気づいたらしい元毅が渋々腰をおろす。
「バカ。バカ千耀」
「はいはい。ごめんなさい」
その後もしばらく悪態をつかれたけど、軽く受け流した。
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