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第4話 お誕生日デート

 病院から駅まではシャトルバスが出ていた。駅から目的地の名古屋までは三十分くらいかかる。  ぼくはどうやら耳もおかしくなってしまったみたいで、周りの音がいつもよりもうるさく聴こえてしまって、電車の中は落ち着かなかった。 「雪成、これ使って」  通路側に座ってくれた優輔から手渡されたのはウォークマン。見覚えがないから優輔のものなんだろうな。  イヤホンを耳に挿して再生ボタンを押すと、ぼくの好きなロックバンドの曲が流れてきて、ぼくは思わず優輔を二度見してしまった。 「どうしてぼくの好きなバンド知ってるの?」 「よく一緒にカラオケ行っただろ? 雪成はこのバンドの曲しか歌わなかったからな」 「そうだっけ? 忘れちゃった。でもありがとう!」  音楽を聴いていたら周りのうるさいおしゃべりは聞こえなくなったし、さりげなく優輔が恋人繋ぎをしていてくれたから、ぼくは安心して名古屋駅まで行けた。 「今日はぼくに任せてもらえるかな?」 「優輔に?」 「うん。美味しいイタリアンカフェのランチ予約したんだ。雪成も気に入ってくれると思うよ」  イタリアン! 病院食ではめったに食べられないから、ぼくはずっとパスタやピザが恋しかったんだ。 「行きたい! 連れてって!」 「すぐ近くだからね。着くまで音楽も聴いていたままでいいよ」  優輔は優しすぎる。ぼくへの気遣い百点満点だ。駅の近くは平日だけど人が多くて、ぼくは不安でドキドキしたけど、看護師の鈴木さんが飲ませてくれたお薬が効いているから、大丈夫だ。  お店は本当に近かった。駅から五分もかからない。ランチの時間だからお客さんが多かったけど、優輔は予約をしていてくれたから、ぼくらはすぐにオシャレなソファー席へ案内された。  ランチメニューはメインを一皿と前菜が三品、ソフトドリンク飲み放題も付いていた。ぼくはペペロンチーノを選んで、優輔はトマトソースとナスのパスタを食べた。 「本当に美味しい! このお店よく見つけたね」 「あ、あれだよ。ネットで駅近ランチで調べたら、すぐにヒットして。評判通りの味だな」  優輔のリサーチ能力の高さに驚きつつ、ぼくは食後の紅茶を飲もうとしたそのとき。店内の照明が暗くなり、どこからか馴染みのある音楽が聴こえてきた。  これって……これって……! 「お誕生日おめでとうございまーす!」  ハッピーバースデーの曲と共に店員さんが現れ、ぼくの為のスペシャルデザートプレートを持って来てくれた。  音楽につられるように周りのお客さんも拍手してくれたけど、ぼくらが男同士だとわかると、少しずつ冷めていく気配を感じた。  でも、いいんだ。ぼくには優輔がいるから。 「改めて。二十一歳の誕生日おめでとう、雪成」  プレートに飾られた花火よりも輝く笑顔で、優輔は祝ってくれた。  ぼくはまた嬉しくて泣いちゃいそうになったけど、お店だから我慢して、お返しにとびきりの笑顔で応えた。 「ありがとう、優輔! 最高の誕生日プレゼントだよ」

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