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第2話
「いつまでそこにいるつもりだ。さっさと出ていけ」
いまだダメージから回復せず、痛みに悶えていると、腕を掴まれてロッカーの外へ引きずりだされる。般若のような恐ろしい形相でピシャリと命令する秋吉先輩に僕は涙目で首を振った。
「やだやだっ。こんな、すぐそばに秋吉先輩の生おっぱいがあるのに!」
今もボタンのとめられていないカッターシャツの隙間から僕の大好きな乳首がちらちらと色っぽく姿を覗かせている。こんなチャンス次はいつ訪れるかわからない。
今日はたまたま秋吉先輩がここを使うって情報をつかんでどうにかこうにか忍びこめたけど、いつもこんな順調にはいかない。
それに今回覗きがバレてしまったことで、秋吉先輩はさらに僕を警戒するだろう。そしたら今まで以上に秋吉先輩のおっぱいが遠ざかるに決まってる。
どうにかして居座ろうとしたけど、秋吉先輩に問答無用とばかりに首根っこをひっつかまれて出入口へ連れられた。
「一生のお願い! 一生のお願いだからもうちょっとだけおっぱい見せてくださいぃい!」
三十分、この際二十分でも構わない。秋吉先輩のおっぱいをじっくり堪能する時間がほしい。ほしいよぉ。
「覗きをするようなやつの頼みなんか聞くわけないだろう! 大人しく帰れ」
「なんでですか! 少しぐらいいいじゃないですか! 秋吉先輩のけち。鬼、悪魔、乳首ピンクのくせにいいー!」
「な……! 黙れっ」
動揺して声を張る秋吉先輩に対し、僕も負けじと大きく声を張りあげながら暴れた。
「やです! 秋吉先輩の乳首はかわいいピン……もがもがっ」
「いい加減にその口を閉じないと痛い目みるぞ?」
怒りと羞恥からか顔を真っ赤に染めた秋吉先輩が僕の口を押さえつけ、凶悪な形相で見下ろしてくる。
「ふぐぅ」
容赦なく掴まれる痛みにジタバタと暴れると、顔が握り潰されるんじゃないかと思うくらい握力をこめられた。
さらに秋吉先輩の逞しい体格に見あった大きな手で鼻と口を同時に塞がれて息ができない。なんてこった。
「ひぃーん……」
いくらもがいても剥がれないそれに力なく泣き声をあげると幾分か圧力は軽くなったけど、依然口と鼻は塞がれたまま。
「ふぐふぐふごぉ……っ!」
こんなに危険な状態だというのに秋吉先輩が気づくようすはこれっぽっちもなく、息苦しさのあまり視界が生理的な涙で滲む。
呼吸を妨げる手から逃れるために再度秋吉先輩の腕を掴んで引き離そうとするも、力の差が歴然としすぎていてびくともしない。
終わった。
僕の人生はここで終わる。
本気でそう悟った僕は、せめてもの慰めにと最後の力をふりしぼって秋吉先輩の美しすぎる乳首を目に焼きつけた。
未練は多いけど秋吉先輩のおっぱいを見ながら一生を終えられるのなら、これも本望かもしれない。
贅沢をいえば、憧れのおっぱいを思う存分触って舐めまわしてみたかった……。がくり。
「? 篠岡、おい!」
力尽きてぐったりとした僕に秋吉先輩がようやく気づいて解放される。
「ぶはっ」
僕は必死で新鮮な空気を吸いこみながら、泣いた。
「す……すまない」
ぜいぜいと呼吸を調える僕のまえで秋吉先輩が申し訳なさそうに頭を下げる。
しかし謝られたからといって死にかけた恐怖は消えない。若い身そらで三途の川を渡りかけた僕は秋吉先輩の前で号泣した。
「ぅ、わあああん」
「そ、そこまで泣くことじゃないだろう……だいたい元を辿ればおまえが変態なのが問題なんだ」
「あぁぁあん。死ぬかと思ったよぉぉ」
狼狽えている秋吉先輩の前で泣きわめいていると罪悪感を覚えたのか、秋吉先輩は困惑した様子でがりがりと頭を掻き、ちっと舌を打った。
「っわかった見せる! 見せるからそんなに泣き喚くな」
「うっ、うっ……舐めてもいいですか?」
秋吉先輩の立場が弱い今がチャンスとばかりにさらにお願いをすると、彼の目が吊りあがる。
「つけあがるなよ? 変態」
悪態まじりで却下されたあげく拳でこめかみを挟むようにぐりぐりと痛めつけられて、僕はまた涙を溢れさせた。
「いた、痛い痛い!」
ちょっと舐めるくらいなんだってんだ。だいたい秋吉先輩は男なんだし減るものでもないのに、そんなに怒らなくてもいいと思う。
「うっ、あ……あっ……」
痛みとおっぱいが惜しいのとでしつこく泣いていると、髪をぐしゃぐしゃに掻き乱した秋吉先輩が観念したように声を張りあげた。
「ああもうおまえは……はあ。もう許す、許すからいつまでもしつこくべそべそと泣くな」
「本当ですかっ?」
「呆れるほど変わり身の早いやつだな」
まさかの許可をもらいころりと泣きやむと、うんざりした視線が投げられる。しかし浮かれている僕は気にしない。
「秋吉先輩のおっぱい、秋吉先輩のおっぱい」
満面の笑みでうきうきと小躍りする僕に汚物でも見るような視線を向けながら、秋吉先輩は腕を組んでロッカーに背中を預ける。
「少しだけだからな。余計なことは絶対にするな」
「はい!」
少しで終わらせる気は毛頭なく、余計なことをするつもりも満々で力強く返事を返した僕は、秋吉先輩の胸板に手を添えて小さな胸の尖りに唇をよせた。
つんと尖った色素の薄いそれをぱくりとくわえる。
ふぁー! 夢にまでみた秋吉先輩のおっぱい!
幸せいっぱいでちゅうちゅうとおっぱいを吸う僕を、秋吉先輩が困惑した表情で見下ろしている。
「……」
「んう」
ずっと憧れていた乳首をころころと舌の上で転がして、音をたてて吸いあげる。小さいながらも舌に感じるしっとりとした確かな感触に感動を覚えた。
念願のおっぱいをこんなに早く味わえる日がくるなんて思わなかった僕は夢心地だ。
「ん。……んく」
「おい舐めるだけにしろ」
唇で挟んで吸いあげながらもう片方を指先で弄っていると秋吉先輩に上から睨まれる。しかし僕は秋吉先輩のものを口に含んだまま、えへらと笑ってごまかした。
そんな僕に秋吉先輩はちっと舌打ちすると視線を逸らす。どうやら先輩は意外と流されやすいタイプらしい。
秋吉先輩のおっぱいは色や形、乳輪の大きさから立ったときの乳頭の角度まで、まさに理想そのもので、はじめて見た瞬間から僕はすっかり虜になってしまっていた。
邪魔されて邪魔されて見ることもままならなかったそのおっぱいが、今僕の手のなかにある。こんなに感慨深いことはない。
粒を押し潰すと舌にほどよい弾力が返ってくる。触れたことで、このおっぱいの新しい魅力をまたひとつ知ってしまった。うっとりとしながら舌の先で乳頭をつつく。
それから五分くらいちゅっちゅっと秋吉先輩のものを吸っていると秋吉先輩が居心地悪そうに身じろぎする。
「もういい加減終われ」
「ん……もう、ちょっとだけ」
「だめだ、ふやける」
「へへ。これくらいじゃふやけないですよお」
たった五分程度じゃまったく満足できなくて嫌がる秋吉先輩を宥めながら乳首を舐めまわす。
さらに五分ほどそうしたのち一旦口を離すと、唾液で濡れた秋吉先輩のそこと僕の唇を透明の糸が繋いでとぎれた。なんだかすごくいやらしい。
「く……もう終わりだ退け」
「あっ……や、やだ」
まだ味わっていたかったのに秋吉先輩は無慈悲にも僕を押しやってしまった。
「まったく、野郎の胸なんか吸ってなにが楽しいんだ」
理解できないとぼやきながら、僕の唾液で濡れたそこをロッカーから取り出したウェットティッシュで拭う。ああ、僕のおっぱい……。
「なに言ってるんですか! おっぱいには夢がつまってるんですよ。その中でも秋吉先輩のおっぱいは僕の理想そのものです。特別です。憧れのおっぱいです。また舐めたいです」
「断る」
「がーん! そんなこと言わないでくださいよおおっ」
まさかこれきりなんて考えたくなくてなりふり構わず秋吉先輩に泣きついた。僕はぜったいにまた秋吉先輩のおっぱいを堪能するんだ。
「しつこいな。こっちはこのあと生徒会の仕事が詰まっているんだ、おまえみたいな変態に構ってる余裕はない。わかったらもう俺に纏わりつくな」
すげなく断られてがくりと肩を落とす。秋吉先輩が忙しいことは知ってるし、生徒会の仕事の邪魔をするつもりはない。でも秋吉先輩のおっぱいは易々とは諦められない。
どうしたものか。
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