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第6話

   予定外の失敗に項垂れていると、ふいに秋吉先輩に脇の下に手を入れられ抱えあげられた。  その拍子に僕の中のものがずるりと抜き去られて、勢いよく中を擦られる感覚にびくりとからだが震える。 「っひぅ……」  秋吉先輩は僕をソファーへと移動させたあと、煩わしそうにシャツを放り、スラックスと下着をまとめて脱ぎさった。そのままどかりとソファーに腰をおろし、僕に鋭い視線を向ける。  え? 秋吉先輩もしかして怒ってる?  突然剣呑な雰囲気になった秋吉先輩にドキリとする。それが粗相をしてしまったからなのか、それとも秋吉先輩をすっきりさせると言っておきながら自分だけさっさとすっきりしてしまったからなのかはわからないけど、どちらにしても僕が悪いのだろう。  一人反省していると秋吉先輩がくいっと顎をしゃくる。 「篠岡」 「? は、はい」 「乗れ」  のれ?  意味がわからずきょとりと首を傾げると秋吉先輩は苛立ったようすで舌打ちする。 「さっきやったように俺に跨がって自分で動けと言っている」  そこまで言われてようやく状況を理解した僕は戸惑いながら秋吉先輩の膝を跨ぐように膝を立て、ついさっきまで彼を受け入れていた場所にハンドクリームで濡れた先端をあてがった。 「ふぅ……、う」  さっきよりも大きくなったそれを慎重に埋めこんでいく。一度入っていたとはいえこの太さは無理すると裂けそうである。 「う、……ん、ん……」  熱の塊をふたたび根本まで迎えいれると内壁がひくりと痙攣して秋吉先輩のものにまとわりつくのがわかった。 「っンぅ……」  伝わる熱と質量に思わず中が疼いてきゅうっと締めつけてしまう。  秋吉先輩の肩に両手をおいて快感をやり過ごしていると、突然腰を掴まれ押さえつけられ、猛ったものを最奥まで突きこまれる。なんの心の準備もできていなかった僕は衝撃に声にならない悲鳴をあげた。 「ーーっ!」  下半身に広がる強烈なしびれに、はくはくと空気を食む。そのまま一度大きく揺さぶられて喉を反らして喘いだ。 「ぁ、っあ……」 「やけに手慣れているんだな。俺にしたように、こうやって、頻繁に男をくわえこんでいるのか?」  唸るような低音に僕が答えるまえに、下から激しい突きあげが開始される。 「やぁ……っあ、あ、あ、あ!」  きつく掴まれた腰に痛みを覚えていたけど中を力強く抉られると、それさえも気にならなくなるくらいの快感に飲みこまれた。  突き上げに合わせて跳ねるからだを、秋吉先輩の首にしがみつくことで必死に堪える。  秋吉先輩は規則正しい速度で中に打ちこみながら、筋肉の浮いた太い腕をもぞもぞと蠢かせて僕の羽織っていたカッターシャツを片手で剥いだ。  その太い指が僕の素肌に触れて肩から、背中、腰、脇腹に、臍と確かめるように撫でていく。  指は最後に僕の薄い胸の上で小さく主張する粒にたどり着き、やんわりと押しつぶしてくる。指の腹で確かめるように弄られて僕は戸惑いながら秋吉先輩を見上げた。 「あ……ぼくの、おっぱい……つまんないですから」  素敵すぎるおっぱいの持ち主である秋吉先輩に自分の貧相なものを見られるのが恥ずかしくて、ぼそぼそとそう訴えれば、秋吉先輩はちらりと僕に視線を向ける。 「そうでもない」 「ていうか先輩。ぼくが、貸すっていったの……お尻だけだから……他のとこは……さわらないでください。おっぱいも、だめです……っん」  そう言って、あまり力の入らない手で彼の指を胸からはずす。 「なぜだ? 尻はよくて他を触れない意味がわからない」 「やっ、だめなものは、だめです」  言いながら揺さぶられてびくびくとからだが跳ねる。そんな僕を冷めた目で見下ろしながら秋吉先輩がぽつりとつぶやいた。 「……他のやつには触らせているのか」 「んぅっ……他っ、て……?」 「俺以外のやつともこうやって、してるんだろう」  何度も擦りあげられて敏感になっているそこへバチリッ、と太いものを打ちつけられて、脳天を突き抜けるような快感に視界が潤む。 「ンぁ……っ!」  目の奥がチカチカと点滅する。  くらくらする頭を押さえながらうまく回らない思考で言われた言葉を反芻した僕は、秋吉先輩がなにか勘違いをしていることに気づいた。どうやら誰にでもお尻の貸し出しをするような人間だと思われているらしい。  えっちは好きだけど、秋吉先輩以外では昔つきあってた彼氏のみだ。さすがの僕だって誰彼構わず貸し出すほど開放的じゃない。 「あ……やってな……、秋吉先輩以外には……貸してません」 「へえ……それにしてはやけに楽に入ったようだけどな?」  行為に慣れていること以外に理由があるのかと秋吉先輩に尋ねられて、僕はひやりと冷や汗をかいた。  断じて他の人にお尻の貸し出しはしていない。……してないけど挿入時にたいして抵抗がなかった原因には心当たりがないこともない、というか大いにある。ちょっとどころかとても秋吉先輩に言えない内容が。  青くなってからだを硬直させていると秋吉先輩はなにを想像したのか、腰を掴む手に力をこめて乱暴に腰を打ちつけてきた。 「ひゃっ……あ、あ……っぁ!」 「喘いでないで質問にちゃんと答えろ」  そのまま僕の弱いところを責めてくる秋吉先輩に思考がふっとびそうになる。 「くぅん……っ、ん、んン!」 「篠岡」  耳許で責めるように名前を呼ばれて、いろいろな意味で我慢の限界だった僕は解放されたい一心で口を開いた。 「……う……じ、……じぶんで……」 「…………」 「あきよし先輩の、おっぱい……思い出しながら、してるから……」  告白して、両手で顔を覆う。いくら僕でもおかずにしてることを本人に平気で告げられるほど図太くない。案の定というか秋吉先輩はポカン顔だ。 「……自分で? 後ろを広げている?」 「っは……い」 「俺の胸を、想像しながら?」  こくりと頷く。  いちいち区切りながら確認されてあまりの恥ずかしさに僕の顔面は熱で破裂寸前だ。どんな羞恥プレイだよ。  僕の告白に秋吉先輩は感心したようすでこちらを見下ろす。 「すごいな……変態だとは思っていたがそこまでとは思わなかった」  皮肉な笑みを浮かべた秋吉先輩に、とろとろに蕩けた内部を数回かき混ぜられる。さっきまでの乱暴さこそなくなったけれど、ねちっこさが増した動きに信じられないくらい感じてしまった。 「んうぅ、ふぁあ……っ、あ!」  放り出していた両足を逞しい腕で抱えあげられて、ぬくぬくと出し入れを繰り返される。これにはもう気持ちよすぎてどうにかなりそうだと思った。 「そんなに好きか?」 「あっ……あっ……ン、んっ」  秋吉先輩の問いに僕ははふはふと息を吐きながら首を縦に振る。快感で埋め尽くされた頭では何に対しての好きかすらよく理解できないまま何度も頷いてみせた。  ただ、今僕の中を埋め尽くしてる存在と、僕の腰を痛いくらいに掴んでいる手の熱さと、目の前にいる秋吉先輩がすべてだった。 「……っき……、すき……!」  うわ言のようにつぶやいてから数秒後。僕の中で秋吉先輩のものが震えて、はぜた。 「!?」  ゴム越しにびゅくびゅくと熱いものが吐き出されるのが伝わってきて、眉根を寄せる。 「あ……」  少し遅れてから秋吉先輩が達したのだと気づいた。それまでそんなに切羽詰まったようすではなかったので突然のことに理解するのが遅れてしまった。  それは僕だけではなかったのかもしれない。不自然にぴたりと止まった秋吉先輩を訝しく思い顔を上げると、ひどく驚いたようすで固まっていた。 「秋吉……先輩?」  どうしたのだろうと心配になったけど、僅かに動いた拍子に燻ったままの熱の存在を思い出して、からだを震わせる。僕はもじもじと膝を擦りあわせて俯いた。  秋吉先輩のものは一度解放したことで柔らかさを取り戻しはじめている。僕の目的は秋吉先輩にすっきりしてもらうことなので本来ならこれですませないといけないんだけど……。  もう少しで上り詰めそうだったところを中途半端に放置されて、正直かなりつらい。 「あ……秋吉、先輩」  いまだ繋がったままのこの体勢に我慢できなくなって、ついにはしたなくも自ら腰を揺らして中の敏感な部分を秋吉先輩のものに擦りつけてしまった。 「……ん、っん……」 「…………」 「あっ……ん、くぅ……ん」  次第に硬さを増していくそれにくらくらしながらも感じる部分に何度も擦りつけていると、硬直状態から復活したらしい秋吉先輩と目があう。 「……ああ、悪い。中途半端にしたな」 「っひぇ!」  言って、秋吉先輩は僕の腹で主張しているものをそっと握りこむと上下に擦りあげた。そして中の硬さを取り戻しはじめたものをゆっくりと動かしはじめる。  この展開に僕はひどく動揺した。だって秋吉先輩の手が握ってるのって僕の……。いやいやいや。 「……や、まって。先輩、まっ……あぅ……っ」  秋吉先輩にしてもらう理由がなくて静止の言葉をかけたけれど、動きが止められる前に僕が先に根をあげてしまった。上と下からって反則だと思う。 「篠岡……」  息も絶え絶えになっていると、秋吉先輩に名前を呼ばれた。 「は。……んむ」  返事をしかけたところで唇に小さく弾力のあるものが押しつけられる。薄い皮膚ごしに感じる尖った粒。きれいな薄いピンクのそれは、僕が愛してやまない秋吉先輩の……! 「好きにしていい」 「! せ……」  理由を聞く前に視界がぐるりと回転し、背中に衝撃を感じた。僕の体重を受けとめたソファーがぎしりと悲鳴をあげる。 「?? ……え? え」 「俺も好きにする」 「へ?」  どうして自分が秋吉先輩にマウントをとられているのか、好きにするってなんなのか、考えるよりも早く野獣のようになった秋吉先輩にこのあと僕はぐちゃぐちゃにされてしまった。  

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