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第3話
「これ、お前のだろ」
そう声を掛けてきたのは、クラスメイトの一人。永峰理玖という男だった。
この男は、クラス、いや、この学校内でもちょっとした有名人だった。彫りの深い整った顔立ちは、目が合うと同性にも関わらず心臓が落ち着かなくなる。何より、その目が、捕食者のように鋭く真っ直ぐに対象を見てくる。それだけでなく、彼は校則違反のピアスを耳にいくつか開け、髪もホワイトアッシュに染めて他とは一線を画していた。
彼は個性をーーー自分を持っていた。高校2年生にして。
一葉は、そんな理玖が密かに苦手であった。
しかし、今一葉に声を掛けてきた理玖は、相変わらず真っ直ぐに一葉を見据え、その手にはSHで配られたプリントがあった。
心臓をうるさく鳴らしながら、一葉は目線を理玖と合わせた。
「あ、あの、ありがと」
理玖は、男前の顔に綺麗な微笑みを乗せて去っていった。一葉の机にはプリントだけが残った。
ーーーこの人と友達になりたい。
一葉がそう思ったのは、そのすぐ後のことである。
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