8 / 22

第8話

「一葉」 その昼食以降、一葉は奏矢に会うたびに声をかけられるようになった。彼が声をかけると、周囲の人が何事かと注目してくる。そして一葉の顔を見てまた興味なさげに顔を逸らすのだ。一葉はそれが嫌で、奏矢を見かけたら避けるようになった。 しかしそれも長くは続かなかった。その日、一葉はなんとなく身体が痛く、怠いように感じた。 それも続けばさらに悪くなっていき、授業中なのに全く内容が頭に入ってこない。見かねた理玖が、一葉を保健室まで連れてきてくれた。 「熱測れよ」 渡された体温計で熱を測ると、38.1。思ったより熱があったようだ。 理玖は早退することを勧めたが、家に今誰もいないと告げると、 「俺が看る」 とだけ言って帰る支度をし始めた。 「悪いからいいよ」 と言っても聞かなかった。こうして、一葉の家に理玖が来て看病することになった。

ともだちにシェアしよう!