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第9話

「部屋どこ?」 「……2階の1番奥」 一葉の家はごく普通の一軒家で、理玖は一葉をおぶったまま階段を上った。実は、一葉は具合が悪すぎて動くこともままならないので、タクシーを呼び、乗る前後は理玖がおぶることになったのだ。 部屋に着いた理玖は、一葉をベッドの上に静かに下ろす。一葉の顔は真っ赤で、目は潤んで泣いているかのように見えた。 「…ごめん。何から何まで迷惑かけて」 理玖の友人が悲しそうな顔をしてそう言う。理玖は「気にすんな。お互い様だろ」とだけ言って携帯を手に一葉の部屋を出て行ってしまう。 一葉は、何も考えられずに、意識を遠くへやる。すると、目が閉じてきて、眠くなる。最後に思ったことは、理玖に対する感謝だった。

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