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第12話

「なんで避けてたの?俺……なんか悪いことした?」 気を悪くした風でもなく、奏矢は静かに聞いてきた。そのおかげか、一葉もすんなり自分の気持ちを伝えることができる。普段の一葉であったら気持ちを伝えるなど到底出来ないことだが、今なら許される気がしたのだ。 「奏矢が、悪いんじゃ、なくて、……僕が、臆病だ、から……奏矢が、綺麗、すぎて、一緒にいるの、つり合わない、って、思った」 「そんなこと、俺は思ったこと無いけど」 「奏矢は、やさしいから、みんな、僕を見て、がっかりして、た」 「………みんなって?」 「廊下で、会う人、みんな……もう、嫌になる……許して、奏矢」 「……もちろん、許すよ。だって一葉は俺の大切な友達だからね。ごめんね、無理に喋らせて。もう一回寝てて」 そう言って掌を一葉の目元に覆ってきた。掌の冷たさに心地よさを感じながら、一葉はゆっくりと眠りについた。

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