20 / 22
第20話
そこにいたのは、ヒトデだった。図鑑や水族館でしか見たことのないものが、海にいる。そのことは一葉にとって有名人を直接見たのと同じくらいの感動だった。
手で触ろうと一歩近づいた瞬間、今まで腰くらいまであった水が急に鼻まで上がり、更には波がタイミング悪く来たことで全身が水の中に浸かってしまった。身長も体格も良くない一葉は耐えきれず、海に入ったのも初めてだったのでパニックになり呼吸をしてむせてしまう。
海の中は目が染みる。当たり前のことを一葉は知らない。海の中は綺麗だ。溺れながらも何故か海の青さに見惚れてしまう。自分が掻いた手の隙間から出る泡が幻想的だった。ずっと見ていたいが、息が続かない。
もしかしたら死ぬのかもしれないと思った瞬間、誰かに肩と腰を掴まれ、気づいたら水面の上に顔を出していた。…何故か理玖と奏矢が両側に居たが。
2人は焦った顔をしていたが、一葉に意識があることが分かると、理玖が
「このバカ!!!」
と大声で怒鳴った。奏矢も珍しく怒っているのか、一葉を冷たい目で見ている。
ともだちにシェアしよう!