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第4話
料理なんてできないだろうという俺の予想に反して雪うさぎは見事な和食の朝ごはんを作り上げ、どれもとてもうまい。
しかし、そんなことでほだされてはいけない。
「……雪うさぎ。俺はおまえと結婚した覚えも夫婦になった覚えもないぞ」
俺好みの甘さに出来上がっている卵焼きをつまみながら、苦言を呈するも、
「えー? 俺のことお嫁さんにしてくれるって言ったじゃん」
雪うさぎの中ではいつの間にか事実が置き換えられている。
「俺はそんなこと言ってないし。だいいち男同士じゃ結婚はできない」
至極まっとうなことを言ってやるも、
「そんなことは本人同士が認め合ってたらいいことだと思う」
雪うさぎはキリッと言い返して来る。
俺が頭を抱えていると、雪うさぎは急にワントーン低い声で聞いて来た。
「それより律。俺が寝ている間に誰か女の人、来た?」
「え?」
「香水の匂いが残ってる」
「…………」
彼女(今はもう元カノ)が来たことを後ろめたく思ういわれはないはずで。
だって俺たちはこいつが言うような関係になんて全くないのだから。なのに、落ち着かない気持ちになってしまうのはなんでだろう。
「律、俺、絶対に浮気は許さないから」
縛られるのは嫌いなはずなのに、雪うさぎのやきもち顔は可愛いと不覚にも思ってしまった。
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