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第5話

 なんだかんだ言い合ってるうちに時間はどんどん過ぎてしまう。 「じゃ行って来るよ」  慌ただしく靴を履いていると、雪うさぎがトコトコと傍に来てお願いして来た。 「俺も一緒に行っていい?」 「…………いいけど。大人しくしてろよ」 「してるよ。律のお嫁さんとして律の生活を知っておきたいだけだもん」 「おまえな……」  反論しかけたが、無駄だとあきらめる。 「それより雪うさぎ」 「雪でいいよ。いちいち雪うさぎって言うの、めんどくさいでしょ?」  にっこり笑う。こいつの顔、本当に好みだから始末が悪い。 「雪、おまえそんな恰好で出かける気か? 今日は寒いぞ」  雪は薄い長袖のTシャツとジーンズ姿だ。 「寒さには強いから平気」 「そりゃそうだろうけど。見ているこっちが寒い」  俺はクローゼットの中からダウンコートをとって来るように言い、それを雪に羽織らせる。 華奢な体に俺の服は大きすぎるけど、仕方ない。 「まだ首元が寒そうだな」  俺は自分が巻いている黒のマフラーを外すと雪に巻いてやった。 「ありがと。律って本当に優しい……大好き」  満面の笑みとともにそんな言葉を紡がれて、胸の奥がトクンと鳴った。

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