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第6話
大学まで向かう途中、昨日雪うさぎを見つけた公園を通る。
鬱蒼と茂った樹木の奥に雪うさぎがちょこんと置かれている。
そして俺の隣には雪がいる。
「どっちが本当のおまえの姿なんだ?」
「どっちも俺だよ」
「この雪うさぎが溶けちゃうと、おまえも消えちゃうんだ?」
「うん」
雪が目を伏せる。
流石に胸が痛んだ。
雪は今、確かな存在として俺の傍にいるのに、消えてしまうなんて悲しい。
「……そうだ! 冷蔵庫の冷凍室に入れるっていう手はどうかな?」
自分でも名案だと思ったのだが、雪は苦笑して首を横に振った。
「確かに溶けはしないけど、人工的な冷たさでは俺が消えるのを止めるのは無理」
「…………」
「……消えなくても済む方法、実は一つだけあるんだけどね」
「え? どうすればいいんだ?」
「律が答えを見つけて」
「俺が?」
「そう。じゃないと意味がないから」
雪は、今度は少し寂し気に笑ってから、
「律、早く大学行かなきゃ、遅刻しちゃうよ」
戸惑う俺を急かした。
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