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第11話

ホレイショは安堵の息を吐くと、「そうだ。開けるぞ」と言ってゆっくりクローゼットの扉を開く。 ディーンはクローゼットの中で、自分を抱きしめるようにして肩に腕を回して座っていた。 「ディーン…おいで」 ホレイショがしゃがんで手を差し伸べる。 「ホレイショ…」 ディーンの泣き腫らした顔。 ホレイショの胸がズキンと痛む。 それでもホレイショは微笑み、手を差し伸べる。 「おいで。さあ」 ディーンの震える手がホレイショの手のひらに乗せられる。 ホレイショはそのまま手を握りぐっとディーンを引っ張り抱きしめる。 「どうした? 階段から落ちた時、何があった?」 ホレイショのやさしい囁き。 「…あ、あいつが…」 ディーンが必死に言葉を紡ぐ。 「あいつが…べ、ベッドに歩けって言って…ベッドは3段くらいの階段の上にあって…それで…それで…」 ディーンの涙がホレイショの首筋を濡らす。 「ディーン…」 「俺はつまづいて…あいつが…怒った…! でもっ…でもっ…お、思い出せない…! 凄く嫌なことをされた…! 泣いても叫んでも誰も助けてくれなくて…お、俺も自力で逃げ出せなくて…自分が情けなくて…!」 「ディーン…もういい。 無理に思い出さなくていい。 終わった事だ」 「…は、犯人は…まだ…つ、捕まってないんだろ…?」 「俺が捕まえる。 だから終わった。 ディーンにはもう指一本触れさせない」 「ホレイショ…!」 ディーンがぎゅっとホレイショに抱きつく。 「ジニーが心配してる。 ディーンが心配で帰れなかったそうだ。 顔を見せてやろう」 「ジニーが?」 「そうだ。 行くぞ」 「ホレイショ、待てよ…! 俺、足が…」 ディーンがふわりと持ち上がる。 「足が何だって? 泣き虫王子様」 ホレイショはディーンをお姫様抱っこすると、ディーンの頭の天辺にキスをする。 ディーンがカーッと赤くなる。 ホレイショはディーンを抱いたままスタスタと部屋を出ると、「ジニー、俺の寝室のドアを開けておいてくれ!」と大声で言った。 「分かった!」と、直ぐにジニーの返事が二人に届く。 そしてトントンと小気味良く音を立てながらホレイショはディーンを抱いて階段を降りると、自分の寝室に向かう。 寝室の扉の前にジニーが立っている。 「ディーン! 大丈夫!?」 心配そうなジニーにディーンが照れ臭そうに笑いかける。 「ジニー、心配かけてごめん」 そしてホレイショに抱かれていたディーンは、ホレイショのベッドにそっと降ろされる。 ジニーが扉の前でモジモジしているとホレイショが「ジニー、入って構わない」と声をかける。 ジニーは飛ぶように走ってきて、ディーンの枕元にしゃがむ。 「ディーン…! 大変だ! 泣いてたの!? ディーンのむき卵みたいな綺麗な肌が、赤くてカサカサになってる! 治療しなきゃ!」 「これくらい平気だよ、ジニー」 ディーンが笑って言う。 だがジニーはすっくと立ち上がり、「僕が治してあげる!」と言うと走ってホレイショの寝室を出て行く。 ホレイショがベッドに座り、クスッと笑うとディーンの髪をくしゃっと撫でる。 「ジニーはディーンが大好きなんだな」 「ジニーは良い奴だから…」 ディーンの瞳からポロリと零れた涙を、ホレイショの指が掬う。 「ディーン。 今夜から俺の寝室で過ごさないか?」 ディーンの顔がパッと明るくなる。 「いいの?」 「ああ。 それに薬の注入が終わるまで、ジニーに毎日来てもらおうと思う。 ディーンはどうだ?」 「来てくれるならすげぇ嬉しい! でもジニーに悪く無いかな?」 「ジニーが断るか賭けようか?」 「俺、文無しだもん」 「キスでいいさ」 「ホレイショ…」 ディーンが瞳を閉じ、ホレイショの顔がディーンに近付く。 その時、「ホレイショ!ディーンの治療の邪魔!どいて!」とジニーの声がして、ホレイショとディーンは顔を見合わせて笑った。 ホレイショとディーンとジニーの三人は夕食を共にした。 ジニーは施設長に電話を掛けた時に、ホレイショが何時に戻るか分からないから今夜の施設の夕食は要りませんと言っておいたのだ。 食事の途中でさり気なくホレイショが、ディーンの薬の服用が終わるまでうちに通ってくれないか?とジニー訊くと、「僕はとっても来たいよ!でもメアリー先生の許可がいるよ?」と言った。 「メアリー先生には俺から頼むから、ジニーは明日、何時でもうちに来れるように用意しておいてくれ」とホレイショが言うと、ジニーは笑顔で「分かった!」と答えた。 食事が終わるとホレイショはジニーに送って行くと言ったが、ジニーは後片付けは自分の仕事だからと、後片付けを済ませてからホレイショが施設までハマーで送って行った。 そしてメアリー施設長に今日の事を詫びた時に、ホレイショは明日から4日間連続でジニーに来て欲しいと願い出た。 今病人を預かっている、自宅治療をしていて病人が精神的に参っている、今日1日でジニーにとても懐いた、治療にジニーは一切関係無いと簡潔に説明した。 施設長はジニーに確認をとると言ってジニーの部屋に向かい5分も経たずに戻って来て、「ジニーも彼をとても心配して傍に居てあげたいと言っています。本人の意思を尊重しますからよろしいですよ。但し途中でジニーが行きたくないと言い出したら終わりにしてください」と言った。 ホレイショは礼を言って急いで自宅に戻った。 ホレイショは一応ノックをして自分の寝室に入った。 ディーンはベッドには居ないが、ホレイショは焦らなかった。 薬を入れる前にシャワーを浴びているだろうと予想していたからだ。 その予想は当たった。 ホレイショも裸になり、「ディーン、入るぞ」と声を掛ける。 ディーンがバスタブから「ホレイショ!お帰り!」と言って、嬉しそうにお湯から立ち上がる。 ディーンの上気した肌は、まるで桃のようだとホレイショは見蕩れる。 ディーンはヘイゼルグリーンの瞳を潤ませてホレイショの腕を掴む。 「…ホレイショ…キス…」 ホレイショがディーンの肩を掴むとそっと押して「危ないからお湯に入るんだ」と言うと、ディーンは静かバスタブに浸かる。 ホレイショがディーンを後ろから抱き抱えてバスタブに入る。 お湯がザーッと流れ出てゆく。 「ディーン」とホレイショが呼ぶと、ディーンはホレイショに顔を向けてホレイショの唇にキスをする。 ホレイショがキスを返す。 そうして啄むようなキスを繰り返していると、ディーンが舌でホレイショの唇をなぞった。 ホレイショがその舌を絡め取り、舌ごとディーンの口にねじ込む。 ホレイショはディーンが犯人に口を使わされていた確信があったのでディープキスは避けていたが、ディーンから誘って来たのでして欲しいのだと思い誘いに乗った。 ディーンの口内を余す所無く舌で舐め回す。 ディーンは瞳を閉じて、気持ち良さそうに長い睫毛を震わせている。 そして舌と舌が激しく絡まる。 「…ふっ…んっ…んん…っ…」 ディーンが苦しそうに息を漏らすが、ホレイショはキスを続ける。 そしてそっとディーンの胸の突起にホレイショの指が触れる。 ディーンの既に固くなっている胸の突起をホレイショの指が押し潰す。 「…んっ…んんーっ…!」 ディーンの身体がビクっと震えるが、嫌がっている素振りは無い。 ホレイショが唇を離し、ディーンの胸の突起を捻る。 「…ああっ…!」 ディーンが仰け反る。 ホレイショがディーンの白い喉に吸い付く。 「…あっ…ああん…ホレイショ…気持ちい…」 「ディーンはどこもかしこも感じやすいんだな。 かわいいよ…」 「…か、かわいくねぇよっ…」 「そうか?」 ホレイショがディーンの腰を掴み、ディーンをバスタブの縁に座らせる。 そして胸の突起に舌を這わす。 「…あぁ…は、ああっ…ホレイショ…!」 「気持ち良いんだろ?」 「…う、ん…気持ちい…い…」 「やっぱりかわいい」 そしてホレイショが軽く胸の突起に歯を立てる。 「…ひゃ…アアッ…!」 ディーンの勃っている雄がホレイショの身体に触れるが、ホレイショはそれを無視してディーンの胸の突起を吸ったり舌で転がしたり、時には甘噛みをし爪を立てる。 ディーンが喘ぎながら焦れたように腰を揺らし、ホレイショの身体に蜜を垂らした自身を擦り付ける。 それでも無視するホレイショに、ディーンが涙声で「…ホレイショの馬鹿ぁっ…意地悪すんなよっ…!」と言って自分で自分の雄を掴もうとするのをホレイショが止める。 「…やだぁ…ホレイショ…!」 「自分でイく気か? 俺がいるのに?」 「…ホレイショが悪いんじゃんっ…!」 ホレイショがクスッと笑う。 「ディーン、イかしてやるからバスタブから出て壁に手を付けろ」 「…ん…」 ホレイショもバスタブを出ると、ディーンの尻を両手でぐっと掴む。 「ディーンの尻はマシュマロみたいだな。 柔らかい」 「…ホレイショ…」 ディーンが次の刺激を待ちきれないように尻を揺らす。 「ディーン、太腿を締めろ」 そうホレイショが言った次の瞬間、ディーンの太腿の間を硬い肉棒が貫く。 そしてディーン自身をホレイショの手がぐっと掴む。 ディーンは「ハァ…ッ…!」と声を漏らし背中を反らす。 ディーンの鈴口からは蜜がプクリプクリと絶えず零れ落ちて、床を濡らす。 ホレイショがディーン自身をゆるゆると扱く。 「ディーン…こんなに漏らして…気持ち良いのか?」 ディーンは自身へのホレイショの手の愛撫と、太腿の間を貫抜くホレイショの雄が双囊を突く感覚に前後へと腰を振り出す。 「…ああんっ…気持ちいいっ…ホレイショ…もっと強くぅ…扱いて…突いてぇ…」 甘ったるく、それでいて切羽詰まったディーンの声に、ホレイショが「わがまま王子様。しっかり壁に捕まってろ」と言うと激しく腰を前後し、ディーン自身をキツく扱く。 ディーンの身体が小刻みに震えて「…も、ダメッ…出るっ…!」と一際大きな声を上げる。 ホレイショが「…俺もだ…ディーン、出せ」と言うと、ホレイショのほとばしりがディーンの双囊と雄を濡らす。 ディーンは身体をビクビクさせ、「…ホレイショ…熱いっ…!アアッ…!」と言いながら爆ぜた。 それからホレイショがディーンの身体をサッと洗ってやり風呂から出て直ぐに、前と後ろに薬を注入してやると、ディーンは風呂で焦らされたせいもあって直ぐに眠りに落ちた。 翌日の朝もディーンが軽くシャワーを浴びると、ホレイショは直ぐに薬を注入した。 そしてディーンが横になっている間に、ホレイショもシャワーを済ませた。 昨日の朝のように、毎朝のシャワー中に乱入されては堪らない。 朝食は前日ジニーが今日の朝食用にと、作り置きしておいてくれた物を温めて二人で食べた。 そして8時30分にホレイショは自宅を出た。 ディーンも30分経てばジニーが来ると言うので落ち着いていた。 但し、玄関でホレイショはディーンに「行ってらっしゃい」と言われて頬にキスされてしまったが。 ディーンは自分でも恥ずかしかったのか、ホレイショが「じゃあ昼に」と言っても後ろを向いたままだった。 ホレイショはそんなディーンが愛おしくて堪らなくなる。 これがどんな感情かまだ分からないが、ディーンがかわいくて仕方無いのは確かだ。 そしてホレイショがマイアミデイド署に着き、CSIのメンバーと証拠をもう一度見直す手筈を確認している時にスマホが鳴った。 画面を見るとトリップだ。 「どうした?」 トリップはぜいぜいと息をしながら言った。 『ホレイショ…! やられた! あの大男に…!』 「トリップ、落ち着け! 何をされた!?」 CSIのメンバーが一斉にホレイショを見る。 ホレイショが通話をスピーカーにする。 『爆弾だ! 病室と廊下で…!』 「直ぐに行く! 病院は全員退避だ!」 『分かってる! それと奴には仲間がいる!』 トリップが咳き込みながら必死に言う。 「トリップ、もう良い。 俺が行くから救護班に見てもらえ」 『ホレイショ…! 頼んだぞ!』 そこでトリップの電話が切れた。 ホレイショが全員を見渡す。 「聞いた通りだ。 出動する」 「はい!」 そしてホレイショを先頭に、CSIのメンバー全員が足早に部屋を出て行った。

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