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第30話

今、ホレイショのオフィスには、フロリダ支局のFBI特別捜査員五名がホレイショのデスクの前にいる。 座っているのはその内の一人、シュレー特別捜査官だ。 「どんなご用件ですか?」 ホレイショの青い瞳がシュレーを射る。 シュレーは淡々と言った。 「君にも分かっている筈だ。 明日の記者会見とその後の捜査についてだ。 これからはFBIがこの事件を引き継ぐ」 「何故? これはうちの事件だ」 「いや、違う」 シュレーはキッパリと言った。 「『サム・ゴードン』一味と思われる手口の未解決事件が他の州でも連続して起きている。 彼らはフロリダどころかマイアミだけじゃない。 他の州でも『活動』しているんだよ。 州を跨いだ犯罪はFBIに捜査権がある」 ホレイショがフフッと笑う。 背筋が凍るような冷たい笑いだ。 「それで私にどうしろと?」 「まず明日の記者会見の打ち合わせをしたい。 奴らはテロを匂わせている。 君の一言で奴らが暴走しないとも限らないからな。 それと通称『ディーン』という正体不明の被害者に捜査協力をして貰いたい」 ホレイショが目を細める。 「記者会見については異存は有りません。 但し『ディーン』は無理だ」 「理由は?」 「彼は病気で唯一の目撃証人です。 ご存知の筈だ。 特別捜査官」 シュレーがハッと息を吐く。 「彼が病気と言っても記憶障害ギリギリというところだ。 それに記憶喪失が治らなければ彼の証人としての価値は無い。 堂々巡りなんだよ、警部補。 捜査協力と言ってもただ犯人達をおびき寄せるだけだ。 突っ立っててくれるだけで良い。 彼の安全は我々FBIが保証する」 「断る」 シュレーが立ち上がる。 怒りのせいで頬に朱が走っている。 「何故だ!? それに君にそんな権限は無い! この事件はもうFBIの管轄なんだよ、警部補。 本来なら私達がわざわざ出向いて、君にこうして説明する必要だって無いんだ。 警部に電話を一本かけて君に伝えるだけでも良かったんだ! 君に敬意を払っているのを理解して欲しいね!」 ホレイショはじっと怒りで紅潮しているシュレーを顔を見つめている。 そして1分も過ぎると低音の凄味のある声で、「記者会見について話し合いましょう。奴らを捕まえたければ捕まえれば良い。だがディーンは使わせない」とだけ言うと応接セットを指さした。 レイアウト室にカリー、デルコ、ウルフ、ナタリアの四人とホレイショが揃っていて、大きなガラス張りのデスクの各自の前に一枚の紙が置かれている。 デルコがレイアウト室の張り詰めた空気を和ませる様にハハッと笑う。 「チーフ、FBIの奴らをどうやって追い返したんですか? 1時間もしないで奴らを帰すなんて驚きだ」 ホレイショが紙を掴むとつまらなそうに答える。 「奴らはこの明日の記者会見のシナリオを練って捜査権を奪って帰って行っただけだからな。 時間はかからない」 ナタリアが目を見張る。 「捜査権を奪った!? まさか『サム・ゴードン』達は他の州でも同じような犯罪をしていたと確認されたの!?」 「そうらしい。 州を跨いだある連続殺人事件の最有力候補の犯人達だとFBIは言っているが、FBIらしく詳しい説明は無い。 多分スティーブンかティモシーの殺害方法に共通点があるのだろう。 それにディーンに捜査協力をして欲しいと言っている。 囮だな」 「無理よ!」 カリーが即口を開く。 「ディーンは記憶喪失という繊細な病気なのよ? 悪化したらどうするの!? それに『サム・ゴードン』達はマヌケだけど技術力も結団力もあるし、パトロンらしき組織も動き出してる。 何よりディーンに対する執着はストーカーどころじゃ無いわ! もし執着が暴力に変わったら? 『サム・ゴードン』だったらディーンを道連れにして死をもって満足するかもしれない。 いくらFBIでも守れるとは思えないわ!」 「僕も同感です」とウルフ。 ホレイショが四人を見渡す。 そして言った。 「大丈夫だ。 ディーンの件はキッパリ断っておいた。 警部にも確認したがディーン抜きでFBIは作戦を実行するそうだ」 全員がホッと安堵の息を吐く。 カリーがにっこり笑いながら、自分のデスクの前の紙を手に取る。 「それにこのチーフの声明文なら『サム・ゴードン』一味も納得すると思うわ」 デルコも笑って「これくらいなら奴らも予想の範囲内だろうしね」と言った。 ウルフとナタリアも笑って頷いて、ホレイショも小さく微笑んだ。 ホレイショが自宅に帰るとジニーが飛ぶように玄関にやって来た。 「ホレイショ、お帰り! 丁度ディーンと一緒に夕食を食べてたんだ! ホレイショはどうする?」 「頂こう。 良い話がある。 ジニーにも聞いて欲しい。 ちょっと手を洗って来る」 「分かった!」 ジニーが「ホレイショも一緒に食べるってー!」と大声で言いながらドタドタと走ってダイニングに向かう。 その後ろ姿を見ながら、ホレイショは幸福感に包まれていた。 「なあなあ、ホレイショ! 良い話ってなに!?」 ディーンがわくわくした様子でホレイショが椅子に座った途端に訊いた。 ホレイショは赤ワインで口を湿らせると話し出した。 「今日、ディーンを検査した医師から検査結果を聞いた。 ディーンの脳や体内にやはり異常は無い。 だが酷い頭痛や失神してしまう事や、記憶を喪失してしまう事があるのは事実だ」 ディーンが萎れた花のようにシュンとする。 「…うん」 そんなディーンの顎にホレイショが手をかけ上を向かせる。 「…ホレイショ?」 「そんな顔をするな、ディーン。 良い話だと言っただろう? その医師によると身体に異常が無いのなら、精神的なものかもしれないという話だった。 なんと言ってもディーンは被害者だからな。 だからゆっくり休養を取ってカウンセリングを受けたらどうかと言うんだ。 安心出来る場所に住んで、安心出来る人達と暮らしながら。 何か法律上問題があれば診断書を検事に提出して進言してくれるとも言ってくれた。 それにディーンを拉致した二人組の犯人は死亡したし、ディーンを追っているグループも今後はFBIが捜査をする事になった。 マイアミデイド署に捜査権は無い」 ジニーが目を真ん丸くしてホレイショを見る。 「ホレイショ! それって…!」 「そうだ、ジニー。 ディーン、病気が治るまでうちで暮らさないか? 勿論、元気になってからも」 ディーンが途端に花の咲いたような笑顔になる。 その美しい笑顔がホレイショを照らす。 ホレイショは思わず眩しいと言いかけた。 だが次の瞬間ディーンのヘイゼルグリーンの瞳が潤んだかと思うと、子供の様にポロポロと涙を零し出した。 そしてディーンは自分の顎に添えられていたホレイショの手をぎゅっと掴んだ。 ディーンの手は震えていた。 ジニーがすっくと立ってディーンの肩を抱く。 「ディーン、どうして泣くの? 僕達これからもずっと一緒に居られるんだよ! ホレイショは『良い話がある』って玄関で言った。 本当に良い話だよ!」 ディーンがコクコクと頷く。 ホレイショが静かに「ジニー。人は嬉しくても泣くんだ」と言う。 けれど口調に『愛』が溢れてしまうのは、ホレイショにも止められなかった。 その時、ディーンの手の震えが止まった。 楽しい食事が終わり、ホレイショがジニーを施設に送って行って家に戻ると、ホレイショとディーンの二人は目が合った瞬間、なだれ込む様にシャワールームに入った。 シャワーヘッドから出るお湯が、まるで雨のように二人を濡らす。 キスをしながらお互いの服を脱がせ合う。 その内ディーンはキスに夢中になってホレイショがその役目の殆どを負ったが、伏せた長い睫毛一本一本にお湯を湛えてキラキラと光らせホレイショの唇を追っているディーンの美しさにそんなことはどうでも良くなる。 ホレイショは二人が裸になると手にボディーソープを取り、ディーンの身体に泡を広げてやった。 ディーンはホレイショの手の平が身体を滑る度、ピクピクと身体が震えるのを我慢出来なかった。 自分自身が勃ち上がっているのが分かる。 それなのにホレイショはまるでわざとの様に、その場所には触れてくれない。 太腿の内側をサラリと撫でられ、ディーンは今度こそと思ったが、ホレイショの手はディーンの尻に向かって流れる様に動く。 ディーンはゆっくりと瞳を開けた。 ホレイショがシャワーに打たれて微笑んでいるのが見える。 ディーンは「ホレイショの馬鹿っ…!」と言うと、ホレイショに抱き着いた。 ディーンは気付かなかったがホレイショの身体も泡にまみれていた。 それが気持ち良くて思わず身体を擦り付ける。 ホレイショがフフッと笑う。 「こら、我慢のきかない王子様。 まだ洗い残しがある」 ディーンが「分かってる癖に!」と言って腰を揺らした時だった。 ホレイショがディーンの茂みから茎に向かって手を滑らせた。 突然の刺激にディーンが「アアッ…!」と声を上げて仰け反る。 ホレイショがチュッと音を立ててディーンのぷっくりした唇にキスをする。 「かわいいディーン…もっとして欲しいのか?」 ディーンが潤んだ瞳でホレイショを見つめる。 「…して…ホレイショ…して…」 ホレイショは「ああ、勿論」と言うと、ディーンの雄をぐっと掴んだ。 ディーンはホレイショに扱かれると、泡だらけで硬く勃ち上がった自身をホレイショの雄に擦り付けた。 ホレイショの太く大きな雄も硬く育っていて、浮き出た血管の感触にディーンはそれだけでイきそうになった。 それでも何とか我慢してディーンが腰をくねらせると、ホレイショが息を呑んだ。 そしてホレイショが「ディーン、俺に捕まってろ」と言うと、二本同時に扱き出した。 ディーンはホレイショの肩に捕まり、喘ぐことしか出来ない。 そして絶頂は直ぐにやって来た。 ディーンが「…あぁっ…出るッ…ホレイショ…キス…キスして…ッ…!」と強請るとホレイショがディーンの唇を塞ぐ。 「……!」 ディーンの叫びはホレイショと絡まった舌と舌に飲み込まれる。 次の瞬間、お互いの身体に熱い白濁が散った。 ホレイショの寝室にちゅぱちゅぱと湿った音がする。 ホレイショがベッドに座って広げた足の間にディーンが跪き、ホレイショ自身を舐めては吸ってを繰り返しているのだ。 ディーンはシャワーを浴びながら呆気なく達してしまったのが恥ずかしくて、あの後自分とホレイショをパパッとシャワーで流すとバスタオルをホレイショの肩に掛け、ホレイショの手を引いてベッドに向かった。 前髪からポタポタと雫が垂れて、せめて身体だけでも拭けば良かったかと後悔したが、ホレイショは全く気にする風もなく、ディーンに引っ張られるままに付いてきてくれた。 そしてディーンはホレイショをベッドに座らせ、その足の間に跪いてホレイショの雄をペロリと舐めた。 シャワーで達していたホレイショの雄はみるみる大きくなる。 ディーンは口に入り切らないそれを必死に、そして丁寧に、双嚢から茎に舌を這わせ、カリから鈴口をチュウチュウと吸っては輪っか状にした指で雄を扱いた。 ホレイショの息遣いが荒くなっていく。 そして「…ディーン…かわいいよ…」と言って頬や髪を撫でられる。 ディーンは気分が良かった。 何分そうしていただろう。 ホレイショが「…ディーン、離せ」と切羽詰まった声で言った。 だがディーンは止めなかった。 ディーンは自分の口でホレイショにイって欲しかったからだ。 ホレイショの茎に波打つように舌を這わせ、口いっぱい頬張って顔を上下させながら指を忙しなく動かす。 ホレイショが「…くっ…」と呻いたかと思うと、ホレイショの雄がぐっと大きくなってディーンはむせそうになった。 そしてディーンが吸う口を緩めた途端、雄が口から引き抜かれ、何か熱い液体が顔にかかった。 ディーンはぼんやりした顔で、唇まで滴るそれを舌でペロリと舐める。 ホレイショはその色香に釘付けになる。 しかし何とか理性を総動員して「ディーン、目を開けるなよ」と言うと、ディーンの顔をタオルでやさしく拭いてやる。 ディーンは閉じた瞳の端を赤くして「…うん…」と言ってまた舌でゆっくりと自分の唇を舐め回した。 ホレイショは総動員した理性が焼き切れるのを感じた。 ディーンを抱き上げベッドに寝かせる。 ホレイショが上ずった声で「ディーン、足を開いて手で掴め」と言うと、ディーンはふらふらと足を開き太腿を掴む。 ホレイショが素早くディーンの腰に枕を差し入れると、ベッドサイドの引き出しからジェルを取り出し指に擦り込む。 そして何の前触れもなくディーンの蕾に指を一本突き刺す。 「ああっ…!ホレイショ!」 ディーンは仰け反るが足は開いたままだ。 ホレイショは片手でディーンの雄を扱きながら指を奥へと進める。 うにうにと動く指にディーンの口から熱い吐息が漏れる。 そうしてホレイショの指は膨らんだ場所へと辿り着いた。 そこを指先でゴリッと擦る。 「ヒッ…やっ…あぁっ…!」 ディーンの太腿の内側がピクピクと震える。 ホレイショは「すまない」と一言言うと指を二本足して蕾に指す。 ホレイショは先程辿り着いた場所…前立腺を三本の指で擦り、蕾を開くようにバラバラに動かす。 ディーンはもう太腿を掴んではいない。 足をM字に開きシーツを掴み、「…は、あ…いいっ…あ、ああん…」と喘ぐだけだ。 その内ディーンの雄の先からぷくりと蜜が溢れ出しホレイショの手を濡らす。 ホレイショは指を一気に抜くとディーンの蕾に猛った雄をピタリと付けた。 そしてまた「すまない」と一言言うと、太くガチガチに硬くなった肉棒でディーンの身体を貫いた。

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