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第10話 2月4日(火) ソース味は俺のせい

 昼休み。それは胃と心を満たす素敵な時間。  いつもであれば俺の教室で犬谷と高木がやって来て一緒に食べるのだが、昨日の犬谷のやらかしと、自分がやらかしのせいで教室では食べ辛い。  仕方がなく高木を連れて屋上へ来ている。昨日のべちゃべちゃな雪が嘘みたいに晴れていて気持ちがいい。 「あれ? そういや彼氏は?」 「彼氏言うな。犬谷は委員会だってよ」  今日のお昼は学食のおばちゃん特製、揚げたてコロッケパンとメロンパンにクリームパンだ。メロンパンとクリームパンはコンビニにあるパンとそう変わらないが、このコロッケパンは違う。  ふんわりとしたパンにたっぷりと甘辛いソースがかけられたサクサクのコロッケがサンドされた、学食のパンの中でも一番美味しいパン。これと特濃牛乳が俺の昼飯だ。  さっさとメロンパンとクリームパンを胃に中に入れ、 「そいうやさ、俺のクラスの女子が話してたんだけど、お前らもうヤったん?」 「何を?」 「健全な男子高校生が何をは無いだろ? アレだよ、アレ。セックス」  口入れた瞬間の牛乳を思いきり噴き出す。あ、俺こんなにきれいに毒霧できるんだ。と現実逃避した脳が考える。 「汚ぇな!」 「てめぇが変なこと言うからだろ?! し、してねぇし……」 「へー、まだなんだ。教えてやろ~」 「はぁ? やめろよ誰にだよ」 「いや~お前らのネタ、結構女子に喜ばれるんだよ」 「知るか!」  俺は残りのコロッケパンを口に詰め込み、高木を残して屋上から降りた。  予鈴までまだ時間がある。慌てて食べたせいで妙に腹が膨れてしまった。午後の授業を起きていられる自信がない。  少し腹を落ち着かせるため、俺はバスケ部のコートへ向かった。  重たい扉を開くとそこには犬谷がいた。 「鳶坂……」 「よ、よお自主練? 俺は腹ごなししたくてさ……っと」  パスされたボールを受け取る。  コートに戻る犬谷は練習中の真剣な顔だった。  ドリブルをしてコートへ進む。犬谷と対峙すると威圧感がすごい。あっという間に手元のボールは犬谷に抜かれ、そのボールはリングの中へ落ちていく。 「会いたいって思ったら、鳶坂が来た」 「そっすか……」 「鳶坂、好きだ……本当に、好きなんだ」  練習中の犬谷の顔は消えていた。余裕のない犬谷の顔が近付いて、俺にキスをする。 「ソースの味がする」 「コロッケパン、食ったから……って、ここ学校! バカ谷!」 「ごめん。じゃあまた帰り」  犬谷が笑ってコートを出た。  その後ろ姿を見ていると予鈴が鳴った。

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