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Love Memories:仕組まれたミッション3

「悪いねー、今回は裏方に徹するからー。俺はたったひとりの人の、王子様でありたいと思ってるんでー」  言いながら隣にいる大隅さんに、流し目をした淳くん。  その大胆発言にリンゴのように頬が赤くなっていく大隅さんを、羨ましい気持ちで見つめてしまった。  吉川がそれを言ってしまったらどこの誰だって、大騒ぎになるだけだからね(現在、彼女の捜索をされてる身なのだ) 「じゃあ誰が、ライバル役をするんだ?」 「あー、それ決めるのと台本執筆を含めて、諸々3日間くらい欲しいなー。ちなみにキャプテンは、姫の父親役だから。その体格を生かした、バッチリな配役でしょー」  淳くんの言葉に、室内にいたみんなが大爆笑した。 「短時間で仕上げなきゃいけない作業が山積みだけど、今年こそは絶対に勝つべく、みんなで頑張ろうねー」  いい雰囲気の中、皆の心がひとつになって会議が終了した。他の人が出て行って、残ったのは僕たち4人だけ――。 「淳くん、僕まったく話が見えてないんだけど。劇をやるのかい?」 「そーだよ。ノリトをめぐって、火花を散らす王子の物語」 「……悪いけどうまいこと演技ができる、自信がないよ。しかも、この格好でしょう?」  うんざりしながら、苦情を言ってみた。 「何を言ってるんですか。ノリトさん、すっごく可愛いですよ。自信を持って、演技をしてください!」  ニコニコした大隅さんに、肩を叩かれながら励まされてしまった。 「急な思いつきだったから、そんな衣装しか用意できなかったけど、劇は西洋物だからドレス仕様だよ」 「うっ、ドレスを着るなんて……」  頭を抱えながら吉川の方を見ると、ちゃっかりスマホを構えて、僕を写そうと狙っているではないか! 「何、勝手に撮ろうとしてるんだ、吉川っ」 「なぁノリ、どうしてスラックス履いたままなんだよ。チャイナドレスのスリットからすらりと覗く、生足が見たかったぞ」 (あーもぅ、この男ときたら……) 「ばっかじゃないのっ! すね毛の生えてる生足なんか、誰も見たくないってばっ!!」 「そんなの俺、関係ないし。それよか、ふくれた顔してないで、俺に向かって笑ってみせろよノリ」 「可笑しくないのに、笑えないってっ」  ツインテールから角が出てきちゃう勢いで、ものすごくイライラしてるぞ。 「しょうがないねー。吉川、それ貸してごらん」  淳くんが手にしてたスマホを取り上げ、僕のほうに吉川を寄越す。 「劇のイメージ、掴みたいからさー。んーと……ノリトの背後に回って、抱きしめてみてよー」 「こんな感じか?」  躊躇なく、僕をぎゅっと抱きしめた吉川。一気に距離が縮まって、胸がドキドキする。いくら淳くんに指示されたからって、大っぴらにこんなことするなんて。  どうしよう、ムダに近すぎだよ――。 「ノリトー、いい表情だねー。はい、撮るよ! チーズ!」  次の瞬間フラッシュが焚かれ、シャッター音がした。 「どんなの写せました?」  弾むように淳くんの傍に行き、画面を見る大隅さん。 「これは……」 (――もしかして絶句してしまうほど、いいモノが撮れてしまったのか) 「ノリトさん、受け取ってください!」  突然僕に向かって、何かを投げつける。ナイスキャッチしてみると、それはポケットティッシュだった。それですべてを悟って、背後にいた吉川の鼻にティッシュを押し付ける。 「……吉川、両鼻から鼻血が出てる――」  呆れ果てながら、デレデレしてる吉川の鼻に詰め物をしてやる羽目に……何やってんだ、ホント。 「キレイなノリに、治療されてしまった。幸せだなぁ」  誰か僕の代わりに、吉川の治療してくれませんか? このまま傍にいたらずっと鼻血が出続けて、いつか失血死しちゃうよ。 「今回はコメディ仕立てでいかない方向なのに、この写真を見ていたら、いろいろネタが浮かんでしまうー!」  お腹を押さえてゲラゲラ笑う淳くんが、スマホの画面をこっちに向けてくれた。  そこには吉川に後ろから抱きしめられて、すごくテレまくる赤ら顔の僕の姿と、デレっとした、だらしない表情を浮かべながら、両鼻から鼻血を出した吉川が写されていて。 「こんな僕たちが、主役を張っていいのだろうか……」  不安感だけが胸の中に、ぐるぐると渦巻いていったのだった。

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