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Love Memories:仕組まれたミッション4
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「鼻血落ち着いたかい、吉川?」
ヒーローだっていうのに、毎回毎回鼻血ネタでいい加減ウンザリしてる俺を、心配そうな顔して見上げてくれる愛しいノリ。
肩を並べて、一緒に下校していた。
ノリのあの姿になかなか鼻血が止まらず、今も片鼻だけ詰め物をされたままの状態。格好悪いったら、ありゃしねぇ……。
「本番のときに吉川が鼻血を噴き出したら、どうしたらいいだろう」
なぁんて、しなくていい苦悩をわざわざしてくれるあたり、ノリらしいと言える。
「……多分、大丈夫なんじゃね? それまでにノリのドレス姿を見慣れれば、いいだけのことだし」
「よく言うよ。そのたびに鼻血を、両鼻から出しちゃうんでしょ」
「かもな! んもぅキレイさが倍増されて、ノックダウン寸前なんだぜ」
ぼんやりと今日の姿を、脳裏に思い浮かべた。
すらっとした体型に、チャイナドレスがかなり似合っているだけじゃなく、可愛らしさを強調するようにツインテールがふわりと揺れていた女装姿のノリ。
大隅さんのメイクの腕もあるだろうけど元が良くなくちゃ、あそこまで決まらないだろう。
さっすが俺のノリ、どんな格好でもこなしてしまうとは。
――いかんっ。あの格好であんなことやこんなことを、ちょっとだけ妄想してしまった!
(ちょっとってトコがミソ。それ以上してしまうと、また鼻血モノだからな……)
でもやっぱりスリットから見え隠れする、生足が見たかったかも。刺激が強すぎて、吐血してしまうかもな。
(ΦωΦ)フフフ・・
「ちょっ吉川、何、考えてるの。顔が変だよ」
じと目をして俺を見上げるノリに、詰め物を外して深呼吸をしてみせた。
「なぁんも考えてないぜ。ああ、外の空気、さいこー!」
上手いこと誤魔化して、もう一度深呼吸したとき、カラッとした風が俺たちを包んだ。
ふわりと舞い上がる前髪を押さえながら、横にいるノリを見ると、嬉しそうな顔して口を開いた。
「週末のサッカーの合同練習、調子はどうなの?」
( ̄_ ̄|||) どよ~ん
さっきまでのウキウキした気分が一転、複雑な心境が俺を包む。
「どうしたの吉川、急に浮かない顔しちゃってさ。らしくないよ?」
「あ……いや、その、な――」
いろいろありすぎて、どこから話をしたらいいのやら。
「ノリ、俺さ、サッカー始めてまだ3年になるか、ならないかだろ」
「うん、そうだね」
「そんな俺が、たまたま全国大会で目立った活躍ができたのは、チームのみんなのお蔭なのにさ。俺ひとりだけ強化選手になったのが、どうにも気まずくてな」
ぽつりぽつり話していくと、隣でノリは相槌を打ちながら、そっと俺を見上げる。優しい眼差しを受け止めているだけで、自然と癒されてしまった。
「チームのみんなが、どうして吉川に大事なボールを託してくれたと思う?」
「それは俺が、ナイスポジションにいたから」
「違うよ、そうじゃない」
ふわりと笑いながら、首を横に振る。
「吉川にボールを渡したら、必ずゴールを決めてくれるって信じてるからだよ。普段の練習で信頼関係を築いているのを、僕も見てるしね」
「ノリ……」
そんな風に言われたら、嬉しくて涙が出そうだ。
「みんなが吉川のことを、キャプテンとしてすっごく信頼してるし、プレイでも頑張ってる姿を見てるんだから、誰もひがんだりなんてしないと思う」
「……そうか、そうだといいんだけど。他にも、いろいろあってさ。サッカーの経験が浅い俺が、ひょっこり強化選手になって分かったんだけど、中にいるヤツラとの差がすげぇんだ、実際」
苦笑いしながら思いきって告げると、心配そうな表情を浮かべる。
「そりゃあ、各地から選ばれてきたすごい人ばかりなんだから、当たり前じゃないの? 吉川だって、ホントにすごいんだよ」
恋人贔屓してるのか、しっかり褒めてくれるノリ。
「やってることは違うけど、僕だって全国大会に出て、嫌というほどその差を思い知らされたよ。あのすごい会場によく立っていられたなって今、考えたら信じられない体験だった」
「それでもノリは頑張って、準優勝したじゃないか」
「それは、その。吉川が前日、心を込めて、おまじないしてくれたから――」
そのときのことを思い出したのか、ちょっとだけ頬を染めて、恥ずかしそうに言った。
「それだけじゃないだろ。ノリの実力もあったんだって。俺の実力は何ていうか、その場しのぎみたいな感じがしてさ」
「その場しのぎ?」
「ん……。強化選手になってるヤツラって、小学生のときからなっててさ。積み上げてきたテクニックが、全然違うんだ。それに追いつこうと、必死に食らいつくのが、やっとの状態なんだ」
経験値の差を嫌というほど思い知らされて、練習が終わると凹むしかない自分。
「それでも諦めないで、頑張ってるんでしょ?」
「そりゃ、そうだろ。選ばれた以上はみんなの分も、やってやろうって思ってるし」
そう言うと、いきなりぐるっと周りを見渡してから、ぎゅっと抱きついてきた。
相変わらずしっかりしてんなぁと、こっそりほくそ笑んで、その身体に腕を回す。
「煌(こう)は偉いね、ちゃんと努力してる。きっと、まだまだいけるよ」
「そうか? 追いつけるだろうか?」
「ん……大丈夫。何なら僕がおまじない、してあげようか?」
ノリが俺に、おまじない――それならやっぱ、アレがいい。
「じゃあさ、今日の恰好してやってみてくれないか? 絶対にすっげぇ、頑張れる気がするから」
ヘ(。-ェ-)」☆)゚3゚)ガコッ!!
言うや否や持っていたカバンで、俺の横っ面を手加減なく殴った。
「吉川のバカっ! もう知らない!!」
激怒と背中に書いたノリが、俺を置き去りにして、ひとり歩いて帰って行く。
殴られた頬を撫でながら、慌てて謝るために駆け寄った俺。超絶カッコ悪いこと、この上なかった。
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