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Love Memories:仕組まれたミッション6
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「あー……。ノリの膝枕で昼寝してぇ」
昼休みに急いで弁当を食べ終え、約束どおりノリのクラスに迎えに行った。ちゃっかり手を繋いで登場した俺たちを、淳はやれやれといった感じの冷たい視線で出迎える。
10月中旬だというのに真夏に近い日差しを受けて、目を細めながら仰ぎ見ると、俺の手を振り解いたノリは弾んだ足取りで淳の傍に行き、その肩に手を乗せた。
「ついに台本ができたんでしょ? すごいね、期間内に書き上げちゃうなんて」
「しかもこのクソ暑い屋上には誰もいないだろうと見越して、俺たちを呼びつけるとは、ホント策士だよな」
ウインクしながら言ってやると、口元に笑みを湛える。
「あったり前でしょー、重要秘密事項なんだからさ。ナイショ話をしようというのに、わざわざ人のいるところでするかって」
台本の内容を書いたノートをパラパラめくりながら、呆れた声で言い放った。
背後から淳を囲むように中身を拝見したら、事細かにいろいろ書かれているだけじゃなく、ちゃんとした劇の内容に、意外な才能を見た気がした。
「とりあえず配役について、ノリトはノリーン姫ということでヨロシク」
唐突に告げられた名前を聞いて、ノリはゲッという表情をあからさまに浮かべる。
「さぁノリーン姫、俺の胸の中に飛び込んでおいで」
ふざけながら両手を万歳して、ノリがやってくるのを待ち受けたのに、顔を真っ赤にしながら首を横に振った。
「いきなり何を言い出すんだよ、もう!」
「そうだー、拒否りなよノリト。ふたりきりならいざ知らず、一応俺がいるんだからねー」
「違うって! 俺はマジメに、劇のことを考えてだな」
慌てて弁解しようと口を開きかけたら、淳の大きな右手が容赦なく俺の頭頂部をチョップした。
「とにかくっ! ふたりは俺をはさんで、ここに座りなさいって。よく聞いてほしいからさー」
渋々淳のいうことを聞いて、それぞれ横に座る。
「ノリトはノリーン姫、吉川はコウ王子。ウチのキャプテンはノリーン姫の父親役で王様、コウ王子の宿敵はテニス部元部長の小林翔太。う~ん、コスティス王子って感じかー」
「どこからその、コスティスって名前が出てきた?」
「えー? 何となくだけど。こばやすぃいをモジってみたら、上手いこと出てきたー」
その言葉に顔を引きつらせると、ノリも微妙な表情になった。まさに以心伝心って感じだ。
「淳くん、いつも一緒にいる、大隅さんはどうしたの?」
あとから来るのかなぁと言いながら、周囲をキョロキョロしたノリに俺も首を傾げる。
「大隅ちゃんはキャプテンと一緒に、出し物のくじ引きに行ってもらってるのー。彼女は幸運の女神様だからね、引きが強いんだ。ついでに敵情視察も兼ねてもらってる」
パタンと開いていたノートを閉じて、俺の顔を見やる。
「宿敵役の小林から、何かしらアプローチはあった?」
「俺にあるわけねぇだろ。朝っぱらからノリを口説いてたけどよ」
イライラしながら教えると、やっぱりねーとクスクス笑い出した。
「実は配役を決める前に、大隅ちゃんの腐女子レーダを使って、いろいろ調べたんだよー。その裏を決定的にするのに、ノリトにはあの格好をしてもらったワケなんだけど」
「……僕をエサにした結果、見事に小林くんが引っかかったっていうことなんだ。大隅さんすごいね」
はーっと大きなため息をついて淳を見上げるノリと視線を合わせながら、思わず笑みを交し合う。
「俺の書いた台本はね、ラストが2種類あるんだ」
「何で、2つも書いたんだ?」
「ノリトをめぐって、吉川が小林と真剣に戦うシーンがある。勝者によってラストを変えてるから」
「ちょっと待って、淳くん。劇の中で真剣に戦うって、一体……」
ノリがビックリした顔で、淳に掴みかかった。
「真剣っていっても、剣道部から竹刀を借りるし。お互い本気で戦い合えば、観客の心をぎゅっと鷲掴みできるでしょー」
「……悪いけど僕はそんな危ないこと、絶対に反対だよ。吉川が怪我をしたら、どうするんだい?」
大きな瞳を潤ませて心配だといわんばかりに、俺を見つめる。
「ノリをめぐっての争いに、俺がおめおめ負けると思ってるのか?」
「でも――」
「ノリト俺はね、吉川が簡単にやられる男じゃないのが分かって、このシナリオを書いたんだよー。甘いハッピーエンド、用意してるから」
宥めるようにノリの頭を、グチャグチャと撫でる淳。
「だから吉川、負けるんじゃないよー。小林のヤツ小学生のとき、剣道の県大会で優勝してるけど、愛のパワーがあれば大丈夫だよねー」
( ゚ ▽ ゚ ;)エッ!!
(ちょっ、ちょっと待て! それはかなりマズイ展開なのでは!?)
「ノリーン姫を取り合うべく、真剣に競い合う男の戦い――しかもそれが吉川なんだから、サッカー以外で戦ってる姿に、女子はウットリすると思うんだよねー。確実に票は取れるって、算段してるんだー」
淳のしっかりしまくりの計算に、開いた口が塞がらなかったのは、いうまでもない。
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