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Love Memories:伝わるぬくもり4

*** (つ、辛すぎる。この微妙な体勢……) 「ノリト、そんな照れた顔してないで、もっと吉川に寄りかかって。そのまま右手を重ねてねー」  劇の宣伝をすべく城の背景をバックに、主演である僕らがバッチリとポーズをとって、監督兼シナリオライターである淳くんに写真を撮ってもらおうと、一生懸命にセッティングしている最中である。 「ノリーナ姫、すっごく可愛いっ!」 「イケメン2人に囲まれて、羨ましいな」  女子の声援をきゃーきゃー受ける中、片足を跪いた小林くんが僕のことを見上げた。 「本当にキレイですよ、ノリーナ姫」 「あ、ありがと……」  次の瞬間、これでもかと吉川の方に肩を引き寄せられる。 「ちょっ、わわっ!?」  スカートの中の足、すっごく大股開きになってるんだけど。  だって片手は吉川に乗せて、もう片方は小林くんの肩に乗せているんだよ。上半身と下半身のバランスがバラバラで、非常に辛いです! 「俺のノリに、馴れ馴れしく話しかけんなよ」 「リアルに親交を深めておかないと、劇で支障をきたしたら困るから。何たって俺とノリトくんは、恋人同士の設定だしね」  僕の肩に置いてある吉川の指先が、食い込む勢いで力が入るのが分かった。 「はっ、親が決めた許婚設定だろ。恋人同士を気取んな」 「勝手に熱くなるのは構わないけど、一応外部活と内部活の対決でもあるんだ。マジメに演技してくれよ」  釘を刺す小林くんに、吉川が押し黙る。 「はいはい、小林くん視線こっち向いてねー。顎をちょっと引き気味に……。吉川、顔が怖いよー。でも視線はそのままにしてね、何か分からないけど3人の関係が、どことなく雰囲気に出てる」  淳くんは何も言わずに勝手に、シャッターを押していった。  あの……僕の指示はないのですか?  それまでのやり取りのせいで笑顔が保持できず、しかもどこを見ていいのかも分からなくて、引きつったままの僕と、ちょっと怒った感じの吉川、不敵な笑みを浮かべる小林くんのポスターができあがってしまったのであった。 「よし、いいのが撮れた。これから台本読みするから、椅子を円の形で置いていってー!」  大きな声の指示のもと、淳くんを囲むように椅子で円を描いていく。  そして適当に着席したんだけど、ちゃっかり隣に座った小林くんと吉川に挟まれてしまい、顔を引きつらせるしかない。 「まずはノリーナ姫の父である、キャプテン立ち上がって。心を込めて読んでよー。一生懸命に、カッコよくなるように書いたんだからさ」  本当に和やかにいい感じの雰囲気に包まれ、それはそれは平穏に台本読みが進んでいった。僕たち以外は――。 「ちょっ、ノリトってば、ちゃんと集中してよー。小林くんの方を見て、愛の言葉を受けなきゃダメだから」  冒頭部分はコスティス王子と一緒の場面が多く、向かい合わせになってセリフ読みをしていく。  読んでる最中、吉川の視線が背中にビシバシと感じてしまった。僕を突き通して、小林くんを見ているのか!? 「もっと、優しく笑ってあげないとダメだよー。コスティス王子の寵愛を受けて、私は幸せなのーって感じを醸し出して」  淳くん、それはもう少しあとじゃないと落ち着いて笑えない。写真撮影のときから、バチバチやり合った後だからこそ、泣きたい気分なんだ。  ポスターの笑顔同様に引きつり笑いする僕を、メガネの奥の瞳を細めて、愛おしそうに見つめてくる小林くん。 (――この寵愛を、右から左に受け流したい!)  ちゃんと練習しなきゃいけないのが分かってるけど、吉川が……吉川が気になってしまって、それどころじゃなかった。    かくて棒読み状態で、台本読みをしてしまった僕。  きちんと練習するように淳くんに叱られ、吉川には『アイツとイチャイチャするな』と叱られ(配役の関係でしょうがないのに(ノД`)シクシク)  終始、小林くんから熱い視線を注がれ――自分の周囲の言葉や行動に、頭を抱えるしか出来なかった。

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