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Love Memories:伝わるぬくもり5
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次の日、淳くんとお昼を食べていたら、隣のクラスの小林くんがやって来た。
「あれ、珍しいね。どうしたのコスティス王子」
淳くんが気さくに話しかけると、メガネを押し上げて僕を見る。
「昨日の練習だけじゃ、ちょっと心許なかったから昼休みの貴重な時間を使って、ノリトくんと本読みしようと思ったんだ」
「確かにねー。ノリトってば、半端なくヘタクソだったし。ここは張り切って、コスティス王子と練習しておいでよ。吉川には俺から言っておくし」
(そんなぁ……吉川と一緒に過ごせるお昼休みを、小林くんと過ごすなんて)
行きたくないビームを目から放っていたのにぷいっと華麗に無視するなり、小林くんに向かって体を押し出した淳くん。
「ノリトがきちんとノリーナ姫を演じることができたら、吉川と過ごすことができるんだからねー。一生懸命に頑張りな!」
とどめの一言で、僕の文句を見事に封じてくれる。
ため息をついて仕方なく小林くんと訪れた先は、中庭のベンチだった。お日様のお蔭と無風だったのもあり、ほんのりあったかく結構過ごしやすい感じに安堵する。
「昨日読んだところを中心に、セリフを読んでいこうか」
「うん、分かった」
気落ちしながら答えると、小林くんがまったく……と呟く。
「吉川もそうだが、ノリトくんもちょっと集中力が足りないんじゃないか? 私情を挟みたくなる気持ちは分からなくはないけど、何とかしてほしいものだね」
「……ごめんなさい」
「俺を吉川だと思えば、多少はセリフに気持ちがのったりするだろうか?」
俯いた僕の顎を掴み、小林くんの方に向かせられる。
「一応、恋人同士なんだから仲良くしたいんだけどね」
(それは劇の中だけで、ぜひとも終わらせたい!)
顎を掴んでる手を退けようと、右手をかけたとき――。
「ノリっ!!」
校舎側から、吉川の声が聞こえてきた。反射的に背後を振り向くと、膝でボールをリフティングさせながら、右手の親指を下に向けた。このポーズって一体……?
やがてボールが地面に落ちてワンバウンドすると、いつか見惚れてしまった例のアレが繰り出される、シュートポーズを見極めてしまった。
――吉川得意のボレーシュートが来る!――
ひぃっと思いながら頭を抱え、ベンチの背もたれに頭を隠した。親指を下に向けた合図って、もしかして2種類の意味が合ったりするのか?
頭を抱えて怯える僕を目の当たりにしてるのに、小林くんはびくとも動かない。ただじっと、吉川の動向を静かに見ていた。
やがて空を切るような音と一緒に、こちらに放たれたサッカーボール。小林くんはちょっとだけ体を仰け反らせて、それを回避する。
「あんなデカイものに、反応ができないと思われてるのか。テニス選手の動体視力を、舐めてもらっちゃ困る……」
言いながらチッと舌打ちして、ゆっくりと立ち上がる。
小林くんの動体視力もさることながら、吉川のボールの速さも威力も凄かった。当たったら即死だよ。
おそるおそる頭を上げたら後方ではすでに、戦闘モードに入っているふたりが、互いを睨みあって立ちつくしていた。
(――とにかく、僕が何とかしなきゃ!)
原因のもとは自分なのでさっさと解決し、劇の練習をマジメに進めなければならない。じゃないといつまで経っても、吉川と一緒にいられないから。まずは――。
「吉川っ! 何やってくれてるんだよ、もう!!」
勇気を振り絞りながら大きな声を出して、戦闘モードのふたりに無理やりに割って入った。このタイミングで邪魔した僕を排除するような視線がチクチクと突き刺さってきて、かなり痛い感じだった。
「だってよぅ、ノリ」
「だって明後日明々後日! 吉川は足に自信があるかもしれないけど、僕がトロくさしていて、ボールが当たったりしたらどうするんだい?」
反論しかけた吉川をじろりと睨んでやる。本当にアレは、危ないって思った。
「きちんと劇の練習をマジメにしなきゃならないって、小林くんがわざわざ誘って、自分の時間を割いてくれてるんだよ。僕の演技がマシになったら吉川を交えて、一緒に練習したいなって考えてるのに」
横目でチラリと小林くんを見たら頷いてはくれなかったけど、意味深な表情で吉川を見つめていた。
「……ノリトくんの言うとおりだ。こんな人目のつくところで、イチャイチャなんてできないからね。誰かさんと違って」
(あ~も~、吉川のキズにわざわざ、塩を塗ったくってくれて)
「あのね吉川、放課後――」
「悪かったな、練習の邪魔して!」
僕が口を開いた途端に遮るように怒った声で言い放つと、蹴飛ばしたボールに目がけて走り去ってしまった。
「君も苦労させられてるね。いいのかい、あんなのと付き合っていって」
呆れたような表情を浮かべて告げられたけれど、首を横に振って笑ってみせる。
「あんなのだから目が離せなくて、ずっと一緒にいたいって思わせてくれるんだよ。僕は吉川じゃないとダメなんだ」
小林くんのアプローチを断るべく、思い切って言ってみた。
「……そうか。残念だな」
小さい声で一言呟くと、練習始めようかとベンチに誘われる。ひとり分、間を空けて座り、お互いのセリフを読みあった。
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