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Love Memories:最後の夏3
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大隅さんの提案で劇が始まる前に、キャストの紹介をすることになっていた。
「どの部活の誰が、その役をやっているのか――最初に披露したらインパクトあると思うんだ。キャストを見知った上で、その後に展開される話に入り込みやすいでしょー」
そういういきさつがあるので、インパクトのある挨拶をしなければならなくなり、猛練習をしたのだった。
「ノリトさん、恥ずかしがらないでください。ニッコリと微笑んで、観客を魅了しなきゃ! はい、ターンしてドレスを持ち上げながら、可愛らしく小首を傾げて!」
ニッコリ微笑んでターン……。そればっかり練習してたらその内、目が回ってしまったんだ。ふらつく体を支えてくれたのは、傍にいた小林くんだった。
「大丈夫か、ノリトくん。大隅さんは見かけによらず、スパルタなんだな」
その言葉に、大隅さんが腰に手を当てて応戦する。
「小林くん、ノリトさんはやればできる人なんです。甘えさせないで下さい」
小林くんに支えられてる状態を吉川に見られちゃマズイと思い、ふらつきながらもしっかり足を踏ん張った。
「健気だね、君は」
結構手荒に突き放したというのに、メガネの奥の瞳を細めて、じっと見つめてくる。
「あの大丈夫だから。心配かけてごめんね小林くん」
「ムダな練習するよりも、好きなヤツを想って披露することを考えたらどうだ。そんな作り笑いじゃ、誰も魅せられない」
分かりやすいアドバイスを小さな声で告げ、去って行く後ろ姿を切なく思いながら、胸の前で右手を握りしめた。
「さっすが小林くん、いいこと言うなぁ。さっそくチャレンジですよ、ノリトさん」
――そう、指摘された通りに吉川を想う――
本番の舞台上、僕の横には王様役の野球部キャプテンが大きなお腹をアピールすべく、叩きながら揺らしていた。観客からゲラゲラと笑い声が響く。
次は僕の番。目の前には、大好きな吉川がいると思わなきゃ。
『ノリーナ姫を演じるのは、元弓道部主将でインターハイ準優勝者のノリトさんです!』
大隅さんのナレーションが終わってから1歩前に出て微笑み、ドレスの裾を両手で持ち上げて、くるりとターン! 元に戻っても笑みを絶やさず、小首を傾げながら微笑み倒す!
僕の姿を見て観客が何かヒソヒソ話してる声が、あちこちから聞こえてきたせいで、いいようのない不安に駆られてしまった。
「大丈夫だ、みんながノリトくんの変貌に、とても驚いてるだけだから」
立っていた位置に戻ると、隣にいる小林くんが耳打ちしてくれる。その隣にいる吉川が、コッソリと親指を立てた。
不安いっぱいだった僕を支えてくれたふたりに向かって、感謝を込めて微笑みながら頷くと、揃って顔を赤らめる。
「破壊力満点だな、君の笑顔は」
「まったくだ。罪作りなヤツ」
ボソボソとそれぞれ言い放ち、何事もなかったかのように、自分たちの挨拶をしていった。
何もしてないのに心中複雑だなぁと思い、舞台袖に戻って行く。
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