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第6話(帝国ホテル編)
聞きかじりの知識で得た男性の内部の急所だ。此処を触られると男は嫌でも、とめど無く感じてしまうらしい。
現に片桐は必死で声を殺しているらしい。顔を覆った指から小指を噛んでいる様子だ。
彼が受け入れやすい様に成るべく解す積りだった。
「そんなに小指を噛むと後々辛い。噛むなら俺の指を噛んでくれ」
優しく彼の口から小指を抜き出し、紅くなっている箇所に恭しく口付け、そっと唇で挟む。そして自分の人差し指を変わりにした。
そうしてから、彼の弱い場所を執拗に弄った。
彼の身体が網に掛かった鮎の様に跳ねて居る。流石に自分の身体では無い指を噛み締めるのは心理的差しさわりがあったのだろう。片桐は震える指で人差し指を外し、掌を導くと口を押さえて呉れるように無言で促す。「その」時の声を聞かれるのを恥ずかしがって居る様だった。
鼻をふさがない様に慎重に掌を片桐の口に当てる。彼の濡れた吐息はたちまち自分の掌に感じられた。
意を決した瞳の片桐がバスロウブの紐を解いて呉れた。彼ははだけたバスロウブ姿だったが、全裸よりも官能的な気分が呼び起こされる。
彼が待っていると分かっていたので、その下には何も付けていなかった。
「もう……大丈夫なのか」
待ちきれなかったが確認をした。
片桐は顔に手を戻した、何度も頷く。
そっと身体を進めると彼の内部が待ち構えていたかの様に花弁を開く。彼の内部は綺麗な紅色をしていた。その花弁が、食虫植物で有るかのように奥へと誘った。
彼も協力する様子を見せて、腰を幾分高めに浮かしていった。
久しぶりの情交なので片桐の身体が無意識に強張る。以前は「今、受け入れないともう機会が無いかもしれない」と言った不安が有ったせいかもう少し滑らかに彼の内部――彼の魂に一番近い場所――に到達出来たのだが。
片桐は熱い吐息を零して唇を覆っていた手を外させ、両手をしっかりと握り締めた。そして、彼の方から口付けをして来た。
部屋には湿度が増した様な感じがする。自分の吐息と片桐の押し殺した喘ぎ声で。
片桐はこれしか縋る物が無いかの様に自分の手を握り締め、唇を開けて濃厚な接吻をして呉れた。
「……もう……大丈夫……」
熱い呼吸の下片桐が言った。そういえば彼の身体は大分弛緩して居る。
彼の内壁の奥へとゆっくりと侵入した。
彼の中は熱くそして雄弁だった。自分の侵入を寿ぐかの様にしっとりと絡み付き、薄く温度の有る絹で出来た反物のようにひたりと自分を捕らえて離さない。
全部収まった事はお互いの腰骨が当った事で分かったのだろう。不意に片桐の身体が今まで以上に痙攣した。
片桐が右手を――当然手を繋いでいるので自分の手も一緒に――唇に寄せた自分の手の甲で口を押さえた瞬間、彼の前が弾けた。
これだけ感じてくれているだという誇らしさと愛おしさが心の底から湧き上がった。自分は未だ埒を明けて居なかったが、そのような事は些細な問題に思える。
息を乱す片桐の呼吸の邪魔をしない様にと、繋いだ手はそのままに口から手を除けた。
繋がったまま、片桐の息が回復するのを待つ事にした。今までずっと待っていたのだからこれからの短い時間を待てない筈は無い。忍耐はかなり必要だが。
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