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第12話(帝国ホテル編)

 学校や夜会で聞いていたものとは全く別の甘美な声。 「あ、だ…め…だっ。もうっ…死に…」 「何度でも…極めて…くれれば嬉しい」  先端だけが進入を果たしただけだが、あまりの快感に身体中から汗が噴出すのを感じる。寝台が二人の動作を受け止めかねて音を立てていた。  彼の身体の痙攣が酷くなるにつれて、内部も同調する。 「あ…も…うっ」  湿った甘い声でそう言うと片桐は頂点を極めた。それと同時に、内部では伸縮が激しくなり、自分も天国へと連れて行かれる。  このまま、彼の魂の近くに居たい…そう思っていると、片桐が息を整えてから、耳元で囁いた。 「今晩は、ずっと晃彦をオレの身体の中で感じたい」  切なく、愛しくそしてこちらの魂ごと取り込むような声だった。  もちろんこちらも望むところだった。  限られたこのホテルの時間が許す限りの中で、魂を感じたいと思っていた。                                  帝国ホテル編 完

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