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十一、桜雨 三

「ひゃっ ふぁっ」  刺激に腰が浮く。それがまるで自分から筆に擦りつけているように見えて死にたくなった。  破裂しそうな刺激に、何度も腰を浮かす。すると喜一くんが両手で隠していた俺の手を退けて、真っ赤な林檎の様な俺の顔を見る。  そのまま唇を指先がぷにぷに刺激したあと、指が入ってきた。 「ふんんぐっ」 「俺の指、噛んでも良いから。だから、我慢しないでね」  その言葉の意味が分からずに戸惑っていたけれど、濡れた筆の先が奥へと入っていくのを感じで目を見開いた。 「尻尾みたいで可愛い」 「んんー!んんー!」  腰を下ろそうとすれば更に奥に入る刺激に、髪を揺らして逃げた。頭がぽわんと熱くなって、苦しいのに下半身にどんどん熱が溜まっていって、嫌じゃなかった。  荒くなる息と流れる涙を、髪を撫で額に口づけを落としながら、優しく気使ってくれた。 「んんん! んんん!」  いってしまいそうだと目で喜一くんに訴えるのに、喜一くんは嬉しそうに俺の前を握った。  その刺激で、はだけた胸まではじけ飛んだ俺の蜜が、とろとろと体中に張り付く。  ……信じられない。 「どう? これぐらいの太さならば」  俺は容赦なく、グーで喜一くんの頬を殴った。  へにゃりと力のない俺の拳は、自分にダメージもある。手の甲が痛い。 「え? え?」  ポカンとする彼をえいっと突き飛ばし、まだ震えている太腿を押さえながら睨みつけた。 「し、信じられない! 俺があげた筆でそんな、そ、そんな下品なことをするなんて! 俺の贈り物が……酷い」  じわりと涙が浮かんでしまい、慌てて払いのけると、喜一くんの顔が真っ青になっていた。 「ご、ごめんなさい。さっきから太腿が可愛くて」 「最低……」  高級だと伝えた。俺だってそうそう使えるような筆じゃない。  しかもお礼だって言った。お礼のつもりがこんな雑に扱われるなんてひどい。 「だ、だって、人参で練習しようとしてて可愛かったし」 「……」 「ゴメンナサイ。上目づかいで泣かないでください」  土下座する喜一くんの頭のつむじを睨みつけながらも、身体はまだ震えていた。 「筆下ろしは、こんなエッチなものではありません!」 「でも、気持ち良かったでしょ?」  顔を上げた喜一くんからは反省の色は見えなかったけれど、代わりに俺の顔が真っ赤に染まった。  でもってなんだ。痴漢を正当化する犯人みたいで下劣で最低だ。 「……喜一くんは、俺じゃなくて俺の身体目当てですか?」 「ちがっ好きなら触りたいし、突っ込みたいし、喘がせたいだけです!」 「か、帰れー!!」  座布団が庭に舞う。まるで手裏剣のように。  裸足のままで逃げ出した癖に、喜一くんは筆は離さなかった。

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