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第530話 2.14 (6)
「今すぐおまえが用意できるもの。」
――エロ動画でも送れって?
「それでもいいけど。あ、どっかから拾って来たやつじゃなくて、おまえが自撮りしたやつだからな?」
――やだよ。
「じゃあ、どういうのならいいの?」
――前にやったようなことなら。
「前って……俺がオナったやつ? それは俺がやだよ、おまえ録音するもん。」
――しないから。
「あと、一方的なのもやだ。おまえもやるならいい。」
――それテレホンセックスだよね。普通に。
「普通かどうか知らねえけど、そうだな。それならいいの?」
――いいよ。
「前は嫌がってたのに。」
――だって、ご褒美が欲しいんだろ?
「言い方がやらしいな。」
――テレホンセックスしようってのに、いやらしくなくてどうするんだよ。で、両手空いてる?
「ちょっと待てよ、早えよ。」少しノイズが入る。「あいよ、ヘッドセットしたぞ。」
――あ、準備してあったんだ?
「最近、音楽聴くのに普通に使ってたから。元々使ってたスピーカーより音が良かった。」
――じゃあ、これからやっと本来の使い方ができるというわけだ。
「本来じゃねえだろ。」和樹は笑う。
――だって、そのために買ったんだから。
「もうちょっとムード出ること言えよ。」
――愛してるよ。
「唐突だな。」
――愛してるからパンツ脱いで。
「何それ。」笑いを噛み殺しながら、それでも和樹はベッドの上でスウェットのズボンとパンツをずらした。「はーい、脱ぎましたぁ。」わざとあっけらかんと言う。
――で、そのまま待機。
「へ。」
――目、つぶって。
「お、おう。」戸惑いながらもその通りにした。
――どこも触るなよ?
「触ってないよ。」
――俺はね、触ってる。つか、握ってる。しごいてる。
「……。」
――和樹のこと、考えてる。
「……。」
――すぐ勃つよ? 和樹の、口とか、舌とか、想像するだけで。
「……俺、何すりゃいいの。」
――想像してよ。俺の、舌とか、指とか。
「触っちゃだめなんだろ?」
――まだ、だめ。
「おまえ触ってんだろ。ずりぃ。」和樹はつい目を開けた。照明が眩しい。豆球だけにして、薄暗くなったところで、ベッドの上で、壁にもたれかかって座った。ひとりで自慰をする時のポーズだ。
――今、なんかした?
「電気消した。眩しくて。」
――目、つぶれって。
「うん。」
――何したい?
「え……キス。」
かすかにリップ音が聞こえた。
――それから?
「……触ってほしい。」
――どこを?
「どこでも。腕とか、足とか。」
――足、開いて。内股のとこ、舐めるから。
舐める、という単語を耳にしただけで、ぶるっと体が震えた。そして、足を開いた。その間に涼矢の顔があるような気がする。しばらくして、さっきとは違う水音がして、またピクリと体が反応する。
「触っていい?」
――どこを?
「自分の。チンコ。」
――いいよ。ローション、ある?
「ある。」
――使って。で、声、聞かせて。
和樹はローションを手に取り、ペニスに使った。「んっ。」と短く喘ぐ。
――最近、オナニー、した?
「……した、よ。」擦りながらしゃべるから、途切れがちになる。
――いつ?
「一昨日、かな。」
――どういうこと考えんの。
「おまえのこと。」
――俺の、どんな?
「だから、今してる、みたいな。」
――キスとか、チンコしごかれるのとか?
「うん。」
――それから?
「……分かんだろ、そんなの。」
――俺がどういうこと考えてオナニーしてるか、分かる?
「そりゃ、挿れるの、想像してんだろ。」
――何を、どこに?
「おまえのチンコを、俺の、ケツに、だよ。」
――当たり。でも、そんなすぐには挿れないよ。最初は、穴んとこ、押さえるみたいにして。
和樹は、無意識に涼矢の言葉をなぞりはじめた。中指をそっと後孔に添えて、押さえる。
――ゆっくりマッサージするみたいにして、リラックスさせて。それからローションいっぱい使って、中指、ちょっとだけ挿れて。そうすると、和樹のそこ、口ぱくぱくさせて、欲しがるから。
「や……。」思わず声が出た。涼矢の声とシンクロするように、中指の先だけ挿れた時だ。言われた通りに、そこがヒクついていたからだ。涼矢にからかわれるかと思ったけれど、そのことについては何も言われなかった。
――そしたら、人差し指も挿れてさ、もう少し奥にまで。だんだん柔らかくなってきて。ホント言うと、このへんでもう、すげえ挿れたくなってんだけどね。
和樹は2本目の指を自分の中に押し込んで、息を荒くした。けれど、涼矢の指ほど奥までは届かず、もどかしい。
――我慢して、薬指も挿れて。そうすると、和樹が、いい声出す……よね?
「ん、気持ちい、けど、指、届かな……から。」
――いっぱい、濡れてる?
「うん、もう、すげ……。」
――俺も。先走りの、すごくて。……で、指3本、奥に挿れたらさ、そのへんからは、ちょっと乱暴にしたほうが、和樹、好きだよね? 気持ち良さそうにして。腰も浮かせちゃって、すごく、可愛くなって。」
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